【日本品質神話】戦後から現在までの品質管理の歴史から紐解く重要ポイントを徹底解説!

【日本品質神話】戦後から現在までの品質管理の歴史から紐解く重要ポイントを徹底解説!

 日本の製品は世界的に高品質であると評価されていますが、その背景には長年にわたる品質管理の取り組みがあります。戦後の焼け野原から、わずか数十年で世界をリードする品質大国となったのが我が国、日本の誇るべき国民性ですよね。実は、その品質管理の歴史を紐解くことで、現代のものづくりに活かせる重要なポイントが見えてきます。

 そこで今回は、日本の品質管理の発展の歴史、日本独自のTQCの特徴、TQCからTQMへの進化、そしてQC的ものの見方・考え方について、わかりやすく解説していきます。日本の品質管理の神髄に迫るストーリーを理解して、品質向上への理解を深めていきましょう。

 では今回も読み終えるまでのお時間、しばらくお付き合いくださいませ。

目次

品質管理の発展の歴史 – 日本の品質革命の軌跡をたどる

 品質管理はいつ、どこで生まれたのでしょうか?そして、日本の品質管理はどのように発展してきたのでしょうか?ここでは、世界と日本の品質管理の歴史を振り返り、日本独自の品質管理手法がどのように進化してきたのかを見ていきましょう。

品質管理のルーツを探る – 世界の品質管理の始まり

 品質管理の始まりは、18世紀のイギリスでした。当時、工場で大量生産が始まり、品質のばらつきが問題になっていました。そこで、部品の寸法を統一したり、検査を行ったりする品質管理の基礎が生まれました。

 その後、アメリカでは1920年代に品質管理の研究が本格化し、統計的手法を用いた品質管理が発展しました。第二次世界大戦中には、軍需品の品質向上のために品質管理が重要視されるようになりました。そして戦後、品質管理はさらに発展し、現在につながる基礎が築かれた、という流れがありました。

日本品質管理の原点 – 戦後の品質革命のきっかけ

 そして日本の品質管理は、その第二次世界大戦後に大きく発展しました。戦後、日本の製品は「安かろう、悪かろう」と言われ、製品の品質改善が必要でした。そんな中、1950年に朝鮮戦争が勃発し、アメリカ軍から大量の注文が入りました。しかし、日本の製品の品質が悪く、大量の不良品が発生してしなう状況でした。

 しかしこのことがきっかけとなり、1950年代に、アメリカの品質管理の専門家であるW.E.デミング博士やJ.M.ジュラン博士が来日し、日本の企業に品質管理の指導を行いました。これを機に、日本の品質管理は飛躍的に発展していったというわけです。

日本的TQCの進化 – 独自の品質管理手法の発展

 日本では、アメリカの品質管理の手法を取り入れながら、独自の品質管理手法を開発していきました。1960年代には、全社的な品質管理活動であるTQC(Total Quality Control:総合的品質管理)が始まりました。

 TQCは、品質管理を製造部門だけでなく、営業、開発、管理など企業のすべての部門で行うものです。日本では、TQCを独自に発展させ、現場の従業員が主体となって品質改善を行うQCサークル活動や、問題解決のための統計的手法などが生み出されました。こうした日本独自の品質管理手法は、日本の製品の品質を大きく向上させ、「メイド・イン・ジャパン」と呼ばれる高品質な製品を生み出す原動力となっていったわけです。

日本独自のTQCの特徴 – 他国との違いを知る

 では日本のTQCは、他国の品質管理とはどのような違いがあるのでしょうか?ここでは、日本独自のTQCの特徴を10の視点から解説します。日本のTQCが世界から注目された理由を、具体的な事例とともに見ていきましょう。

特徴①全社一丸となったQC活動 – 経営者主導の全員参加型品質管理

 日本のTQCの大きな特徴は、経営者から現場の従業員まで、全社一丸となってQC活動に取り組むことです。経営者自らがQC活動の重要性を理解し、リーダーシップを発揮して全社的な品質管理を推進します。また、現場の従業員も自ら品質改善に取り組み、アイデアを出し合いながら品質向上に努めます。こうした全員参加型の品質管理は、日本独自のものと言えるでしょう。

特徴②品質第一主義の徹底 – 経営における品質優先の考え方

 日本の企業では、品質を最優先する考え方が徹底されています。品質は企業の存続に直結するという意識が強く、品質を犠牲にしてでも利益を追求するようなことはしません。「品質は企業の命」という考えのもと、品質第一主義が経営の根幹に据えられているのです。この品質優先の考え方は、日本のものづくりを支える重要な理念となっています。

特徴③方針管理の実践 – 方針の展開とその管理手法

 日本の品質管理では、方針管理が重要な役割を果たしています。経営者が品質方針を定め、それを全社に展開して実践していくのです。部門ごとに品質目標を設定し、その達成に向けて全員で取り組みます。方針管理では、PDCAサイクルを回しながら、継続的な品質改善を図っていきます。この方針管理の実践は、日本のTQCの特徴の一つと言えるでしょう。

特徴④QC診断の活用 – 品質管理の状態を把握し改善に役立てる

 QC診断は、企業の品質管理の状態を客観的に評価する手法です。日本科学技術連盟が提唱したもので、品質管理の専門家が企業を訪問し、品質管理の仕組みや活動状況をチェックします。診断結果をもとに、改善すべき点を明らかにし、具体的な改善策を提案します。日本の企業では、QC診断を積極的に活用することで、品質管理のレベルアップを図っています。

特徴⑤トータルな品質保証活動 – 企画・開発から販売・サービスまで一貫した品質管理

 日本の品質管理では、企画・開発から販売・サービスに至るまで、トータルな品質保証活動が行われています。製品の品質だけでなく、顧客の要求を的確に捉え、それを製品に反映させることを重視しています。さらに、販売後のアフターサービスにも力を入れ、顧客満足の向上に努めています。このようなトータルな品質保証活動は、日本のTQCならではのものと言えるでしょう。

特徴⑥現場主導のQC活動 – 従業員の自主的な品質改善活動

 QC活動は、現場の従業員が自主的に品質改善に取り組む活動です。小集団で品質問題を見つけ出し、その原因を分析して対策を立てます。そして、対策を実行し、その効果を確認するのです。QC活動は、現場の従業員の品質意識を高め、モチベーションを向上させる効果があります。日本では、QC活動が盛んに行われ、品質改善の原動力となっています。

特徴⑦充実したQC教育・訓練 – 全社的な品質管理の知識と技能の向上

 日本の企業では、全社的なQC教育・訓練が行われています。経営者から現場の従業員まで、品質管理の知識と技能を身につけることが重視されています。社内での教育・訓練だけでなく、外部の専門機関が実施する講習会などにも積極的に参加します。こうしたQC教育・訓練により、品質管理のレベルを高め、全社一丸となって品質改善に取り組む体制が整えられています。

特徴⑧QC手法の開発と活用 – 日本独自の品質管理手法の発展

 日本では、QC手法の開発と活用が盛んに行われています。QC七つ道具やQC的問題解決法など、日本独自の品質管理手法が数多く生み出されてきました。これらの手法は、現場での品質改善に役立つ実践的なものばかりです。日本の企業では、QC手法を駆使して品質問題の解決を図り、品質の向上に役立てています。こうしたQC手法の開発と活用は、日本のTQCの大きな特徴と言えます。

特徴⑨製造業以外への拡大 – サービス業など他業種への品質管理の応用

 日本では、TQCを製造業だけでなく、サービス業など他業種にも応用しています。サービスの品質向上や、業務改善などにTQCの考え方や手法が活用されているのです。例えば、ホテルや病院などのサービス業では、顧客満足度の向上を目指してTQCが導入されています。また、公共機関でも、業務の効率化や品質向上にTQCが役立てられています。このように、TQCの応用範囲が広いことも、日本独自の特徴と言えるでしょう。

特徴⑩全国的なQC推進活動 – 日本品質管理の普及と発展

 日本では、全国的なQC推進活動が展開されています。日本科学技術連盟が中心となって、QC大会やQCサークル大会などを開催し、優秀な取り組みを表彰しています。また、各地の産業界でも、品質管理の普及と発展を目指して、研究会や勉強会が盛んに行われています。こうした全国的なQC推進活動により、日本の品質管理のレベルが高められ、世界的に高い評価を得るようになったのです。

TQCからTQMへの進化 – 更なる品質経営への発展

 日本のTQCは、1980年代に入ると、TQM(Total Quality Management:総合的品質経営)へと進化していきました。TQMは、品質管理の考え方を経営全般に広げ、顧客満足を重視した経営を目指すものです。ここでは、TQCからTQMへの進化の背景、TQM活動の意義、そしてTQM活動の成果について詳しく解説します。

TQMへの呼称変更の背景 – 品質管理から品質経営への転換

 TQCからTQMへの呼称変更には、品質管理から品質経営への転換という背景がありました。1970年代後半から1980年代にかけて、日本企業は高品質な製品を次々と生み出し、世界市場で大きなシェアを獲得していきました。しかし、その一方で、品質管理だけでは対応できない新たな課題が浮上してきました。

 その課題とは、顧客ニーズの多様化、技術革新のスピードアップ、グローバル競争の激化などです。これらの課題に対応するためには、品質管理の考え方を経営全般に広げ、顧客満足を追求する品質経営が必要とされたのです。

 こうした背景から、1980年代半ばに、日本科学技術連盟はTQCからTQMへの呼称変更を提唱しました。品質管理から品質経営への転換を図り、より高い顧客満足を実現することが目的でした。この呼称変更は、日本企業の品質管理の在り方に大きな影響を与えることになります。

TQM活動の意義 – 総合的品質経営の実践

 TQM活動は、品質管理の考え方を経営全般に広げ、顧客満足を追求する総合的品質経営を実践するものです。具体的には、以下のような活動が含まれます。

・経営トップのリーダーシップによる品質経営の推進
・顧客ニーズの把握と製品・サービスへの反映
・全社的な品質目標の設定と達成に向けた活動
・従業員の教育・訓練による品質意識の向上
・部門間の連携による品質改善活動の推進
・サプライヤーとの協力関係の構築による品質の確保
・社会的責任の遂行による企業イメージの向上

 これらの活動を通じて、企業は顧客満足を高め、競争力を強化していく、というわけです。

経営管理手法の活用

 TQM活動では、品質管理の手法だけでなく、経営管理の手法も重視されます。例えば、方針管理、日常管理、クロスファンクショナルマネジメントなどです。これらの手法を活用することで、品質経営を効果的に推進することができます。

 また、TQM活動では、従業員の自主性と創造性を引き出すことも重要視されています。QCサークル活動などを通じて、従業員が自ら品質改善に取り組む風土を作り上げていくのです。

 このようなTQM活動は、日本企業の品質経営の発展に大きく貢献してきました。世界的に見ても、日本のTQMは高く評価されており、多くの国や企業がその手法を学んでいます。

TQM活動の成果 – 企業経営における品質向上の効果

 TQM活動は、企業経営に様々な成果をもたらしています。その代表的なものが、品質の向上です。TQM活動により、製品やサービスの品質が飛躍的に向上し、顧客満足度が高まります。その結果、企業のブランドイメージが向上し、売上や利益の増加につながっていきます。

トヨタ自動車の事例

 例えば、トヨタ自動車は、TQM活動の先駆者として知られています。同社は、「カイゼン」と呼ばれる継続的改善の手法を徹底的に実践し、高品質な車両を生み出してきました。その結果、トヨタ車は世界中で高い評価を獲得し、同社は自動車業界のリーディングカンパニーとなったのです。

経営効率の向上

 また、TQM活動は、企業の経営効率の向上にも役立っています。品質改善活動により、不良品の発生が減少し、手戻りや無駄が削減されます。その結果、生産性が向上し、コストダウンにつながります。さらに、部門間の連携が強化されることで、業務の効率化が図られ、スピーディーな経営が可能になります。

従業員の意識改革と能力開発

 加えて、TQM活動は、従業員の意識改革や能力開発にも大きな効果をもたらします。QCサークル活動などを通じて、従業員の品質意識が高まり、問題解決能力が向上します。また、教育・訓練により、従業員のスキルアップが図られ、人材の育成につながります。こうした従業員の成長は、企業の発展の原動力となるのです。

TQM活動の多面的な効果

 このように、TQM活動は、企業経営に多大な成果をもたらしています。品質の向上、経営効率の改善、人材育成など、様々な側面でその効果が現れているのです。今日、TQMは日本企業の経営手法の根幹をなすものとなっており、その重要性は益々高まっていると言えるでしょう。

QC的ものの見方・考え方 – 品質管理の基本的な考え方

 品質管理を進めていく上で、QC的ものの見方・考え方が重要になります。ここでは、品質管理の基本的な考え方を9つの視点から解説します。現場の皆さんにも理解しやすいよう、具体例を交えながら説明していきますので、ぜひ参考にしてください。

考え方①品質の本質を理解する – 品質とは何か?

 品質管理を行う上で、まず品質の本質を理解することが大切です。品質とは、単に製品の性能や機能だけでなく、顧客の要求や期待に応えられているかどうかが重要なポイントです。例えば、自動車の場合、速く走れるだけでなく、安全性や燃費、デザインなども品質の要素と言えます。つまり、品質とは顧客満足度そのものなのです。

考え方②管理の基本を知る – 管理の意味と重要性

 品質管理を進める上で、管理の基本を知ることが必要不可欠です。管理とは、目標を達成するために、計画を立て、実行し、結果を確認するプロセスのことです。品質管理においては、品質目標を設定し、その達成に向けて管理サイクルを回していくことが重要になります。管理を適切に行うことで、品質の安定化と向上が図られるのです。

考え方③管理サイクルを回す – PDCAサイクルの実践

 品質管理では、PDCAサイクルを回すことが欠かせません。PDCAとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)の頭文字を取ったもので、管理サイクルの基本となるものです。品質目標を設定し(Plan)、その達成に向けて実際に行動し(Do)、結果を確認し(Check)、改善につなげる(Act)のサイクルを繰り返すことで、品質の継続的な向上が可能になります。

考え方④品質保証の考え方 – 品質を確保するための仕組み

 品質保証とは、製品やサービスの品質を確保するための仕組みづくりのことです。具体的には、品質管理の体制を整備し、検査や試験を行い、品質基準への適合性を確認するなどの活動が含まれます。品質保証により、不良品の流出を防ぎ、顧客の信頼を得ることができます。品質保証は、品質管理の重要な要素の一つと言えるでしょう。

考え方⑤消費者重視の姿勢 – 顧客満足を追求する

 品質管理において、消費者重視の姿勢が何よりも大切です。顧客の要求や期待に応えられる製品やサービスを提供することが、品質管理の究極の目的と言えます。そのためには、顧客のニーズを的確に把握し、それを製品やサービスに反映させていく必要があります。また、アフターサービスなどを通じて、顧客満足度の向上に努めることも重要です。

考え方⑥重点指向の管理 – 重要な問題に集中する

 品質管理を進める上で、重点指向の管理が求められます。品質に関する問題は多岐にわたるため、すべてを同じように扱うのではなく、重要度の高い問題に集中して取り組むことが大切です。例えば、不良品の発生率が高い工程や、顧客クレームが多い製品などに重点的に対策を講じることで、効果的な品質改善が可能になります。

考え方⑦事実に基づく判断 – データに基づいた管理の実践

 品質管理では、事実に基づく判断が重要になります。思い込みや主観ではなく、データに基づいて品質の状態を把握し、対策を立てることが求められます。例えば、不良品の発生率や、顧客満足度などの数値データを収集・分析し、それをもとに改善策を検討するのです。事実に基づく判断により、より効果的な品質管理が可能になります。

考え方⑧プロセス管理の徹底 – 工程管理による品質の作り込み

 品質管理では、プロセス管理の徹底が欠かせません。製品の品質は、製造工程の一つ一つの積み重ねによって作り込まれていくものです。そのため、各工程での管理を徹底し、品質の作り込みを図ることが重要になります。具体的には、作業手順の標準化、工程能力の把握、不良品の早期発見などが求められます。プロセス管理の徹底により、品質の安定化と向上が可能になるのです。

考え方⑨次工程はお客様 – 社内外の顧客を意識する

 品質管理において、”次工程はお客様”という考え方が大切です。ここでいう”お客様”とは、社内の次工程だけでなく、最終的に製品やサービスを使う消費者のことも指します。自分の仕事の成果が、次工程や消費者にどのような影響を与えるかを常に意識することが求められます。そうすることで、一人一人が品質に対する責任感を持ち、高品質な製品やサービスの提供につなげることができるのです。

まとめ:品質管理の歴史から紐解く重要ポイント

 日本の品質管理の歴史は、私たちに多くの学びを与えてくれます。全社一丸となったQC活動、品質第一主義の徹底、現場主導のQCサークル活動など、日本独自のTQCの特徴は、今なお品質管理の基盤となっています。また、QC的ものの見方・考え方は、品質管理の基本であり、現場の一人一人が理解しておくべきものです。

 しかし、大切なのは、これらを実践に移すことです。QCサークル活動やPDCAサイクル、消費者重視の姿勢など、日本の品質管理の歴史から学んだ教訓を、自分たちの職場に当てはめ、具体的な行動に結びつけていくことが求められます。品質管理は、一朝一夕にできるものではありませんが、一歩一歩着実に取り組んでいけば、必ず成果は現れます。

 今こそ、品質管理の実践を始める時です。日本の先人たちが築き上げてきた品質管理の知恵を受け継ぎ、さらなる高みを目指して挑戦していきましょう。

 もし、確認したいことがあれば以下まで気軽にZOOMでの無料相談をお申込みいただければと思います。

 滋賀県よろず支援拠点> https://www.shigaplaza.or.jp/yorozu/contact

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 それでは今日はここまでです。今後とも宜しくお付き合い下さい☆
 長文乱文を最後まで読んでくださりいつもありがとうございます♪
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この記事を書いた人

 大手総合電機メーカーで20年間経験を積んで平成22年に独立。10年間で600社を超える中小企業支援、そして自らも小売業を立ち上げて業績を安定させた実績を持つ超現場主義者。小さなチームで短期的な経営課題を解決しながら、中長期的な人材育成を進める「プロジェクト型課題解決(小集団活動)」の推進支援が支持を集めている。

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