製造業DXの支援側に求められる6つの対策について

製造業DX支援側に求められる6つの対策について

 これまでの記事では、中小製造業にとって事業競争力を高めることが必須課題であり、スマートファクトリー化に取り組むことによって究極の効率性を持つ工場づくりに近づける可能性が大きいことがわかってきました。しかし人事や経理などの定型業務にITツール導入が進む中、大きく効率性向上が期待できる業務自動化を進められていない現状があります。
 また公的支援機関である支援者側の見解も、約9割がデジタル化を進めるべきとの意見がある一方で、兵庫県下でのIoT導入率は10.4%%、AI導入率にいたってはたった3.6%しかない。そのため、デジタル化に取り組む企業を増やすことを目的に、我々支援者側がいったい何を進めるべきなのか?その6つの対策について提言していきたいと思います。今回も読み終えるまでのお時間、しばらくお付き合いください。

目次

改善が進む組織づくりの支援

 以前の記事でデジタル化を進めて事業競争力を高めるための留意点1として「組織的な改善活動に慣れていること」を挙げました。
 


 

ただ、どれだけ効果的なデジタルツールの導入が進んだとしても、一部のリーダーが先導した瞬発的な改善ではどうしたってその効果は限定的となってしまいます。そのため5S活動や小集団活動など、各職場の成熟レベルに合わせて改善活動を継続できる能力を身につけ、DX実現スタンバイな組織へと進化させる支援を進めたいところですよね。例えば、各種改善活動のセミナーや推進リーダーを育成する幹部研修の実施、専門家派遣による助言支援などで、各企業の組織的成長を促進させることが有効です。

経営方針の再点検および事業計画の策定支援

 また留意点2として「デジタル化を進める目的が明らかになっていること」を挙げました。我が社はどのような経営方針を持ち、どのような企業になるべきで、その実現のためのシナリオの中でデジタル化推進がどのような機能を果たすのか。そういった事業計画が明らかになっていれば、従業員や周囲の協力の最大化を図ることができます。そのため支援者側は経営者と共に事業計画を再点検、あるいは策定を手伝うことからスタートした後、具体的なデジタル化プランの作成をサポートする2ステップ支援が、対象企業の事業競争力を高めるうえで有効となり得ます。

デジタル人材の確保・育成支援

 IT・DXを製造業に導入する時には、経営者が鍵である一方で、やはりそれらを実際に進めるデジタル人材の確保・育成が必要となります。デジタルでなくとも人材は新規採用で確保するか、社内で育てるかの2つの選択肢がある。前者は短期的に組織能力を高められる反面、費用も高額となり勝ちである。そのため中小製造業では費用を最小に抑えられる後者を選択すべきでですよね。しかしその場合育成に時間がかかることから、やはりデジタル化は内製で進めながらIT知識を補充していくことで、計画的にデジタル人材を育てていく戦略が確実だと考えます。つまり事業計画策定支援のデジタル化プランにおいては、IT人材の育成も施策に入れておく必要があるということです。

事業競争力を高めるITツール活用事例や導入ノウハウの情報発信

 アンケート結果では、ITツールを導入していない企業の理由として「必要ない」という回答が多くを占めていました。でもその原因は実は、役立つ先端ツールの情報を掴んでない可能性、つまり新たな便利で安価なITツールがどんどん開発されているのにそれを知らないだけの可能性を否定できないのです。そのため現在活用されているITツールにはどのようなものがあり、どんな活用事例が存在するのか?などの先端ツール情報を中小製造業向けに発信することはとても有効ですよね。具体的には地域でのセミナーの開催、製造業情報サイトやメールマガジンで実践知識を定期的に発信するなどデジタルツール活用に関する知見やノウハウを提供することで、県内中小製造業のデジタル化に貢献できるはずです。
 また、関連情報としてデジタルツールの解説、補助金サポート情報、導入企業の事例紹介など、デジタル化を進めるきっかけとなりそうな情報を提供することも有効ですよね。

製造業へのデジタル化支援が可能な専門家リスト作成と連携強化

 公的支援機関に対するアンケート結果によれば、約9割の回答者が、中小製造業のIT導入やDX支援に「取り組むべき」「どちらかというと取り組むべき」との意見を持っているものの、想定される課題として「製造業に特化したIT・DXの専門家とのつながり」「IT・DXに関する情報発信」「職員そのものの知識習得」などが明らかになっています。
 そのため製造業に特化したIT・DXの専門家リストを作成して、それらを公的支援機関に対して発信すること、加えて職員との相互連携を図れるよう情報交換会などで関係づくりを進めるなど、中小製造業が専門的なノウハウを導入・活用しやすい環境づくりを進めることが大切となります。

支援者側のIT技術やツールおよび製造業知識の学習

 また公的支援機関の職員などの支援者側は、支援者そのものの製造業に関する知識、およびデジタル化推進のノウハウが不足している実態が伺えます。特にIoT・AI等を活用した業務自動化については今後、支援ニーズは高まることが予想されるものの、それらを実際に指導・助言できる中小企業診断士も少ない状況ですよね。そのため中小製造業支援における高い専門知識や経験を持つ専門家、あるいはIoT・AI知識やツールに詳しい専門家などで構成する研究会を立ち上げるなどで、中小製造業に向けた支援ノウハウの最適化を図ると共に、公的支援機関の職員とも研究成果や検討した支援メニュー等を共有することが望まれています。

まとめ

 支援者側への提言をまとめる中で、自分自身の行動の足りなさを実感すると同時に、自分ができるこはなにか?もっとやれることはないか?と自問自答を繰り返しています。中小製造業がデジタル技術を味方につけて、そして将来に向けて事業を拡大していける。そんな地域を目指して今日も明日も挑戦していこうかと考えています。
 今回の製造業DXに関する調査研究のトピックスシリーズは今回は一旦終了としますが、これからも製造業DX情報は発信していきます。よければ引き続き、お付き合いいただければ幸いです。

 
※ なお、本調査内容の詳細は、兵庫県中小企業診断士協会において報告会を開催します。ご興味のある方はぜひ以下からお申込みをどうぞ。

 
それでは今日はここまでです。今後とも宜しくお付き合い下さい☆

長文乱文を最後まで読んでくださりいつもありがとうございます♪

すべては御社の発展のために、すべてはあなたの笑顔のために

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この記事を書いた人

 大手総合電機メーカーで20年間経験を積んで平成22年に独立。10年間で600社を超える中小企業支援、そして自らも小売業を立ち上げて業績を安定させた実績を持つ超現場主義者。小さなチームで短期的な経営課題を解決しながら、中長期的な人材育成を進める「プロジェクト型課題解決(小集団活動)」の推進支援が支持を集めている。

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