日々、現場で品質向上に取り組む皆さん、お疲れさまでございます。
皆さまも含めた多くの工場で働く方々は品質を向上させるために、日々努力を重ねていることと思います。しかし、思うように成果が出なかったり、もっと効率的な方法はないかと悩んだりすることもありますよね。
そんな皆さんにぜひ知っていただきたいのが、日本的品質管理=日本式TQCです。日本式TQCとは、日本の製造業が世界をリードする原動力となった品質管理の手法を言います。現場の声を大切にし、全員参加で品質向上を目指すこの手法は、今も多くの企業で活用されているんですよね。
そこで今回は、日本的品質管理=日本式TQCの強みを徹底解説します。品質管理の基本からTQCの歴史、そして具体的な成功事例まで、わかりやすく紹介しますので、現場で働く皆さんにとって、きっと役立つ情報が満載です。
ぜひ今回も読み終えるまでのお時間、しばらくお付き合いくださいませ。
品質管理の基礎知識
では最初に品質管理について、詳しく理解できていない方がいらっしゃるかも知れないので、その基礎的な知識について簡単シンプルに解説してみますので、まずは押さえておいてくださいませ。
品質管理とは何か?
品質管理とは、製品やサービスが顧客の要求や期待に応えられるように、その品質を計画、管理、保証、そして改善していく一連の活動のことです。
現場で働く皆さんにとっては、
- 製品に不良品がないかチェックすること
- ミスなく作業を進めること
- お客様からのクレームに対応すること
などが、品質管理を意識する瞬間かもしれません。
しかし、品質管理はそれだけではありません。
- どのような品質の製品を作るのかを企画する段階
- 設計図を作成する段階
- 実際に製品を作る段階
- 製品を販売し、アフターサービスを提供する段階
など、製品やサービスのライフサイクル全体を通して、品質を維持・向上するための活動が品質管理なのです。
品質管理の重要性
品質管理がなぜ重要なのでしょうか? それは、品質が顧客満足度、ひいては企業の業績に直結するからです。
- 品質の高い製品やサービスは、顧客満足度を高め、リピーターを増やします。
- 一方で、品質の低い製品やサービスは、顧客からのクレームや返品につながり、企業の評判を落とす可能性があります。
- また、不良品が発生すれば、それを作り直すためのコストや時間がかかり、企業の利益を圧迫します。
品質管理を徹底することで、これらのリスクを最小限に抑え、顧客満足度を高め、企業の成長につなげることができます。
品質管理の歴史(SQC、TQC、TQM)
品質管理は、時代とともに進化してきました。その歴史を紐解くことで、現代の品質管理の基礎を理解することができます。
- SQC(統計的品質管理): 統計的手法を用いて品質を管理する方法。主に製造工程における品質のばらつきを監視し、不良品の発生を防止することを目的としています。
- TQC(全社的品質管理): 製造部門だけでなく、企業全体で品質管理に取り組む考え方。トップマネジメントのリーダーシップのもと、全員参加で品質向上を目指します。
- TQM(総合的品質管理): TQCをさらに発展させた概念。顧客満足度を重視し、継続的な改善を通じて、企業全体の品質レベル向上を目指します。
日本式TQCは、このTQCの流れを汲みながら、日本独自の文化や慣習を取り入れて発展してきたものです。次の章では、日本式TQCの誕生と発展について詳しく解説していきます。
日本式TQCの誕生と発展
それでは日本的品質管理=日本式QCがどのようにして誕生して発展してきたのでしょうか?その歴史を読み解いていくことで、おそらく納得するところも多くなってくると思いますのでご紹介していきましょう。
日本における品質管理の始まり
戦後の日本は、焼け野原からの復興という大きな課題に直面していました。そんな中、「品質の良い製品を、少ない資源で効率的に作る」必要性が強く認識されるようになりました。
1950年、アメリカのデミング博士が来日し、統計的品質管理(SQC)に関する講習会を開催しました。この講習会は、日本の産業界に大きな衝撃を与えました。「データに基づいて品質を管理する」というSQCの考え方は、当時の日本の製造現場にとって革新的なものでした。
このデミング博士の来日をきっかけに、日本の品質管理は大きく動き始めます。当初はアメリカのSQCを参考に、製造現場での不良品削減が中心でした。しかし、日本の文化や風土に合わせた独自の進化を遂げ、TQC(全社的品質管理)へと発展していきます。
日本のTQCの特徴と発展
日本のTQCは、「全員参加」「品質第一」「継続的改善」をキーワードに、他の国にはない独自の進化を遂げました。
- 全員参加:品質管理は一部の専門家だけのものではなく、経営トップから現場の従業員まで、全員が品質向上に責任を持つという考え方です。一人ひとりが「品質は自分たちが作るもの」という意識を持つことで、品質に対する責任感が生まれ、改善への意欲が高まります。
- 品質第一主義: 企業経営において、品質を最優先事項として位置付ける考え方です。「品質が良ければ、お客様は満足し、結果として会社の利益にもつながる」という信念のもと、品質向上への投資を惜しみません。
- 継続的改善: PDCAサイクル(計画・実行・評価・改善)を回し、常に改善を続ける姿勢を大切にします。「現状維持は後退」という考え方のもと、現状に満足することなく、常に一歩先を目指すことで、競争力を維持・強化します。
これらの特徴が、日本の製造業を世界トップレベルへと押し上げる原動力となりました。現場の創意工夫を大切にするQCサークル活動、品質を作り込むための徹底した教育・訓練、そしてトップの強いリーダーシップによる全社的な取り組み。これらの要素が一体となって、日本式TQCは大きな成果を上げました。
特に、1960年代にスタートしたQCサークル活動は、日本のTQCを象徴する活動と言えるでしょう。現場の従業員が自ら品質改善のためのアイデアを出し合い、実践していくこの活動は、従業員のモチベーション向上、問題解決能力の向上、そしてチームワークの強化にも大きく貢献しました。
日本式TQCは、時代とともに進化を続け、現在ではTQM(総合的品質管理)へと発展しています。TQMは、顧客満足度をさらに重視し、企業全体の品質レベル向上を目指すものです。次の章では、日本式TQCの具体的な成功事例を見ていきましょう。具体的な企業の取り組みを知ることで、TQCが現場にもたらす効果をより深く理解できるはずです。
日本的品質管理=日本式TQCの成功事例
それでは日本的品質管理=日本式TQCを使って成功を収めた事例にはどのようなものがあるのでしょうか?まずは有名な企業の成功事例から紹介していきましょう。
日本式TQCの成功事例1:トヨタ自動車の「カイゼン」への取り組み
トヨタ自動車の「カイゼン」活動は、世界的にも有名で、日本式TQCの成功事例として欠かせません。
- 現場重視: トヨタのカイゼン活動は、現場の従業員が中心となって行われます。現場で働く人たちが、日々改善点を見つけ出し、それを実行に移していくことで、継続的な品質向上を実現しています。
- 全員参加: 改善提案制度などを通じて、従業員一人ひとりが改善活動に参加できる仕組みが整っています。これにより、現場の知恵と工夫が最大限に活かされ、品質向上につながっています。
- 見える化: 問題点や改善点を「見える化」することで、全員が状況を共有し、改善活動に取り組みやすくなります。トヨタでは、カンバン方式など、様々な「見える化」ツールを活用しています。
- 標準化: 改善されたプロセスを標準化することで、品質の安定化を図ります。標準化されたプロセスは、誰でも同じように作業できるため、品質のばらつきを抑えることができます。
これらの取り組みを通じて、トヨタ自動車は、高品質な自動車を効率的に生産することに成功し、世界的な自動車メーカーへと成長しました。
日本式TQCの成功事例2:キヤノンの「全社的品質管理(TQC)」への取り組み
キヤノンは、早くからTQCを導入し、品質向上に多大な成果を上げてきました。
- 経営層のコミットメント: キヤノンでは、経営層が積極的に品質管理活動に参加し、リーダーシップを発揮しています。トップダウンで品質重視の文化を醸成することで、全社的な品質向上を実現しています。
- 品質保証体制の構築: キヤノンは、製品開発から販売・サービスに至るまで、一貫した品質保証体制を構築しています。各部門が連携し、品質を作り込むプロセスを重視することで、高品質な製品を提供しています。
- QCサークル活動の推進: キヤノンでは、QCサークル活動を積極的に推進し、従業員の自主的な改善活動を奨励しています。これにより、現場の課題解決能力を高め、品質向上につなげています。
- 人材育成: キヤノンは、従業員への教育・訓練に力を入れています。品質管理に関する知識やスキルを習得することで、従業員一人ひとりが品質向上に貢献できるようになっています。
これらの取り組みを通じて、キヤノンは、高品質なカメラやプリンターなどを開発・生産し、世界中の顧客から高い評価を得ています。
日本式TQCの成功事例3:ブリヂストンの「品質マインドの醸成」への取り組み
ブリヂストンは、「最高の品質で社会に貢献」という企業理念のもと、品質管理に積極的に取り組んでいます。
- 品質マインドの醸成: ブリヂストンでは、従業員一人ひとりが品質に対する意識を高め、主体的に品質向上に取り組めるよう、様々な活動を行っています。例えば、品質標語の募集や品質に関する研修などを通じて、品質マインドの醸成を図っています。
- QCサークル活動の活性化: ブリヂストンでは、QCサークル活動を積極的に推進し、従業員の改善意欲を高めています。QCサークル活動を通じて、従業員同士が協力し合い、品質向上のためのアイデアを出し合うことで、より良い製品づくりにつなげています。
- データに基づく品質管理: ブリヂストンでは、データを活用した品質管理を徹底しています。製造工程における様々なデータを収集・分析し、問題点の早期発見や改善につなげています。
- グローバルな品質管理体制: ブリヂストンは、世界各国に生産拠点を持ち、グローバルに事業を展開しています。そのため、世界中の工場で同じ品質基準を満たせるよう、グローバルな品質管理体制を構築しています。
これらの取り組みを通じて、ブリヂストンは、高品質なタイヤやゴム製品を提供し、世界中の顧客から信頼を得ています。
これらの企業の事例からもわかるように、日本式TQCは、様々な企業で活用され、大きな成果を上げています。次の章では、小さな工場での成功事例について、さらに詳しく解説していきます。
小さな工場での成功事例
それでは大きな企業での成功事例があることはご理解いただけたかと思いますが、小さな企業でも応用展開で効果が得られるのでしょうか?その内容を調べてご紹介をさせていただきます。
小さな工場での成功事例1:株式会社ダイヤ精機製作所の品質改善活動への取り組み
- 所在地: 長野県岡谷市
- 業種: 精密部品製造業
- 従業員数: 約100名
株式会社ダイヤ精機は、超精密機械加工を得意とする小さな町工場です。同社は、品質改善活動に積極的に取り組み、不良品率を大幅に削減することに成功しました。
- 具体的な取り組み:
- QCサークル活動の導入:従業員全員が参加するQCサークル活動を導入し、現場の課題を解決するためのアイデアを出し合い、改善活動を実践しました。
- 5S活動の徹底:整理・整頓・清掃・清潔・躾の5S活動を徹底し、作業環境を改善することで、ミスや不良品の発生を防止しました。
- データに基づく品質管理:製造工程における様々なデータを収集・分析し、品質のばらつきや問題点を把握し、改善につなげました。
これらの取り組みの結果、顧客からの信頼を獲得し、大手企業からの受注も増え、業績向上にも繋がっています。
小さな工場での成功事例2:株式会社○○製作所の全員参加型品質管理への取り組み
- 所在地: 静岡県浜松市
- 業種: 自動車部品製造業
- 従業員数: 約20名
株式会社○○製作所は、自動車部品の製造を行う小さな町工場です。同社は、従業員全員が品質管理に参加できる体制を構築し、不良品率の低減と顧客満足度の向上を実現しました。
- 具体的な取り組み:
- QCサークル活動の導入:従業員全員が参加するQCサークル活動を導入し、品質改善のアイデアを出し合い、改善活動を実践しました。
- 見える化の推進:工場内の様々な情報を「見える化」することで、従業員全員が品質状況を把握し、問題点の早期発見・改善につなげました。
- 経営層の積極的な参加:経営層も積極的にQCサークル活動に参加し、従業員とのコミュニケーションを深め、品質向上への意識を高めました。
これらの取り組みの結果、従業員一人ひとりが品質に対する責任感を持ち、積極的に改善活動に参加するようになりました。その結果、不良品率が大幅に減少し、顧客からの信頼も厚くなり、業績向上にも繋がっています。
小さな工場での成功事例3:株式会社○○精工の品質管理活動を通じた意識改革への取り組み
- 所在地: 大阪府東大阪市
- 業種: 精密金属加工業
- 従業員数: 約25名
株式会社○○精工は、精密部品加工を行う町工場です。同社は、品質管理活動を軸に、従業員の意識改革に取り組み、品質向上と顧客満足度向上を実現しました。
- 具体的な取り組み:
- 品質目標の設定と共有:会社全体、各部門、そして個人レベルでの品質目標を設定し、従業員全員で共有しました。これにより、全員が同じ方向を向き、品質向上への意識を高めることができました。
- QCサークル活動の活性化:QCサークル活動を積極的に推進し、従業員が自ら品質改善のアイデアを出し合い、実践できる環境を整えました。
- 経営層の積極的な関与:経営層が自ら品質管理活動に参加し、従業員との対話を重視することで、品質に対する意識を共有し、改善活動をサポートしました。
これらの取り組みの結果、従業員一人ひとりが品質に対する責任感を持ち、積極的に改善活動に参加するようになりました。その結果、不良品率が減少し、顧客からの信頼も厚くなり、業績向上にも繋がっています。特に、従業員全体の意識改革が大きな成果をもたらし、品質向上だけでなく、働きやすい職場環境づくりにも貢献しています。
これらの事例は、従業員規模が小さくても、TQCの要素を取り入れることで、品質向上、生産性向上、従業員満足度向上など、様々な成果を上げることができることを示しています。重要なのは、経営者やリーダーが積極的に品質管理を推進し、従業員全員が参加できる仕組みを作ることです。これらの事例を参考に、自社の状況に合わせてTQC活動を展開し、さらなる発展を目指しましょう。
日本的品質管理=日本式TQCの成功事例における共通点
大小様々な企業における日本的品質管理=日本式TQCの成功事例を見てきましたが、これらの事例には、いくつかの共通点があることがわかります。
- 全員参加: どの事例においても、経営トップから現場の従業員まで、全員が品質向上に主体的に関わる体制が構築されています。これは、TQCの根幹をなす考え方であり、成功の鍵と言えるでしょう。
- 継続的改善: いずれの企業も、現状に満足することなく、常に改善を続ける姿勢を大切にしています。PDCAサイクルを回し、小さな改善を積み重ねることで、大きな成果へと繋げています。
- 現場重視: 現場で働く従業員の声やアイデアを重視し、それを品質向上に活かす仕組みが整っています。QCサークル活動や改善提案制度など、現場の創意工夫を引き出すための工夫が凝らされています。
- 見える化: 問題点や改善点を「見える化」することで、全員が状況を共有し、改善活動に取り組みやすい環境を作っています。トヨタのカンバン方式はその代表例と言えるでしょう。
- 標準化: 改善されたプロセスを標準化することで、品質の安定化を図っています。標準化された作業手順や基準を設けることで、誰が作業しても同じ品質の製品やサービスを提供できるようになります。
- 人材育成: 従業員への教育・訓練を重視し、品質管理に関する知識やスキルを習得できる機会を提供しています。従業員一人ひとりの能力を高めることで、組織全体の品質レベル向上を目指しています。
- 経営層のコミットメント: 経営層が積極的に品質管理活動に参加し、リーダーシップを発揮しています。トップダウンで品質重視の文化を醸成することで、全社的な品質向上を実現しています。
これらの共通点は、日本式TQCを成功させるための重要な要素と言えるでしょう。これらの要素を参考に、自社に合ったTQC活動を実践することで、品質向上、生産性向上、顧客満足度向上など、様々な成果を期待できます。
特に、中小企業においては、限られた資源の中で最大限の効果を上げるために、TQCの考え方が非常に有効です。全員参加型の品質管理体制を構築し、継続的な改善を続け、現場の力を最大限に引き出すことで、大企業にも負けない競争力を身につけることができるでしょう。
日本的品質管理=日本式TQCを自社に導入する時の4つのポイント
ここまで、日本的品質管理=日本式TQCの成功事例を見てきましたが、実際に自社に導入するとなると、どこから手をつければいいのか迷う方もいるかもしれません。そこで、現場リーダーやリーダー候補の皆さんが、TQCをスムーズに導入するためのポイントを4つに絞って解説します。
1. 経営層を巻き込む
TQCは、トップダウンで進めることが成功の鍵です。経営層が品質向上にコミットし、リーダーシップを発揮することで、全社的な取り組みへと発展させることができます。現場リーダーとしては、経営層にTQCのメリットや成功事例を伝え、理解と協力を得ることが重要です。
2. 全員参加の意識改革
TQCは、一部の担当者だけでなく、従業員全員が参加してこそ効果を発揮します。「品質は自分たちが作るもの」という意識を全員が持つことが大切です。そのためには、
- コミュニケーションの活性化: 積極的にコミュニケーションを取り、品質に対する意識や課題を共有しましょう。
- 教育・研修: TQCに関する知識やスキルを学ぶ機会を提供し、従業員の意識改革を促しましょう。
- 成功体験の共有: 小さな改善でも良いので、成功体験を共有することで、モチベーションを高め、さらなる改善への意欲につなげましょう。
3. QCサークル活動の導入
QCサークル活動は、現場の課題を解決し、品質向上を推進するための有効な手段です。
- 少人数のグループ: 同じ部署や職種のメンバーで、少人数のグループを作りましょう。
- テーマ設定: 現場で困っていること、改善したいことをテーマに設定しましょう。
- PDCAサイクル: 計画・実行・評価・改善のサイクルを回し、継続的に活動を続けましょう。
- 発表の場: 定期的に活動成果を発表する場を設け、他のグループとの情報共有や刺激を受けられるようにしましょう。
4. 小さなことから始める
最初から完璧を目指さず、まずは小さなことから始めてみましょう。
- 5S活動: 整理・整頓・清掃・清潔・躾の5S活動を徹底し、職場環境を整えることから始めると、品質意識の向上にもつながります。
- 見える化: 問題点や目標を「見える化」することで、改善意識を高め、取り組みやすくします。
- 標準化: 改善されたプロセスを標準化することで、品質の安定化を図ります。
これらのポイントを踏まえ、自社の状況に合わせて、段階的にTQCを導入していくことが大切です。焦らず、着実に、そして全員で力を合わせて品質向上に取り組むことで、必ず成果に繋がります。
次の章では、TQCからTQMへの進化について解説します。品質管理の最新トレンドを理解し、今後の品質向上活動に活かしましょう。
TQCからTQMへ
ここまでの内容で、日本的品質管理=日本式TQCについての理解を深めていただけたかと思いますが、実は時代はさらに多くを求めてくるため、さらなる進化が必要とされています。それがTQMという考え方です。
TQM(Total Quality Management)とは
TQM(総合的品質管理)とは、TQC(全社的品質管理)をさらに進化させた概念です。TQCが製品やサービスの品質向上に重点を置いていたのに対し、TQMは顧客満足度を重視し、それを達成するために企業全体の品質レベル向上を目指します。
TQMでは、
- 顧客のニーズや期待を的確に捉え、それを製品やサービスに反映させる
- 従業員一人ひとりが品質向上に積極的に取り組み、継続的な改善を行う
- サプライヤーとの連携を強化し、サプライチェーン全体の品質レベルを高める
といった取り組みを通じて、顧客満足度を高め、企業の競争力を強化することを目指します。
TQCとTQMの違い
TQCとTQMは、どちらも品質管理の手法ですが、その視点や範囲に違いがあります。
項目 | TQC(全社的品質管理) | TQM(総合的品質管理) |
---|---|---|
主な目的 | 製品やサービスの品質向上 | 顧客満足度の向上 |
視点 | 製品やサービス | 顧客 |
範囲 | 企業全体 | 企業全体 + サプライチェーン |
重視する点 | 品質保証 | 顧客の声、継続的改善 |
TQCは、主に製品やサービスの品質保証に重点を置き、不良品や欠陥を未然に防ぐための活動が中心となります。一方、TQMは、顧客の声を収集・分析し、それを製品やサービスに反映させることで、顧客満足度を高めることを目指します。また、TQMはサプライチェーン全体での品質管理も重視し、より広範囲な視点で品質向上に取り組みます。
これからの時代に必要な品質管理
現代社会は、技術革新やグローバル化が進み、顧客ニーズが多様化・複雑化しています。このような変化の激しい時代において、企業が生き残っていくためには、従来の品質管理の枠組みを超えた、新たな取り組みが必要となります。
これからの時代に必要な品質管理とは、
- 顧客視点: 顧客の声を収集・分析し、それを製品やサービス開発に活かす
- スピード: 変化する顧客ニーズに迅速に対応し、タイムリーに製品やサービスを提供する
- 柔軟性: 多様なニーズに対応できるよう、柔軟な生産体制や組織体制を構築する
- イノベーション: 新しい技術やアイデアを取り入れ、革新的な製品やサービスを生み出す
- サステナビリティ: 環境や社会への配慮を忘れず、持続可能な社会の実現に貢献する
といった要素を兼ね備えたものです。
TQMは、これらの要素を取り入れ、変化する時代に対応できる品質管理のフレームワークを提供します。TQCで培ってきた品質管理のノウハウを活かしつつ、TQMの視点を導入することで、さらなる品質向上と顧客満足度の向上を実現できるでしょう。
TQCからTQMへと進化を遂げるために我々が取り組む4つのこと
それではTQCで培った強みを活かしつつ、さらに進化したTQMを実践していくために、我々はいったい何から始めるべきでしょうか?現場で働く私たちが取り組むべき4つのポイントを解説します。
1. 顧客の声に耳を傾ける
TQMでは、顧客満足度が最優先事項です。そのためには、顧客の声を積極的に収集し、分析することが重要です。
- 顧客アンケートやヒアリング: 定期的に顧客アンケートを実施したり、直接顧客の声を聞く機会を設けたりして、ニーズや不満を把握しましょう。
- クレーム対応: クレームは貴重な改善のヒントです。真摯に対応し、再発防止に努めましょう。
- 現場の声の活用: 営業担当者やカスタマーサポートなど、顧客と接する機会が多い部門からの情報も積極的に収集し、製品やサービス改善に活かしましょう。
2. チームワークとコミュニケーションを強化する
TQMは、全員参加型の品質管理です。部門間の連携、そして従業員同士のコミュニケーションを強化することで、より効果的な改善活動につなげることができます。
- 情報共有: 定期的なミーティングや報告会などを開催し、各部門の状況や課題を共有しましょう。
- 協力体制: 部門間の連携を強化し、協力して問題解決に取り組める体制を作りましょう。
- 風通しの良い職場環境: 従業員が気軽に意見やアイデアを出し合える、風通しの良い職場環境を作りましょう。
3. データに基づいた品質管理
TQMでは、データを活用した品質管理が重要です。勘や経験だけでなく、客観的なデータに基づいて改善活動を行うことで、より効果的な品質向上を実現できます。
- データ収集: 製造工程や顧客対応など、様々なデータを収集しましょう。
- データ分析: 収集したデータを分析し、問題点や改善点を明確にしましょう。
- 改善活動: 分析結果に基づいて、具体的な改善策を立案・実行しましょう。
4. 常に学び、成長し続ける
TQMは、継続的な改善活動が不可欠です。そのためには、常に新しい知識やスキルを学び、自己成長を続けることが重要です。
- 社内研修: TQMに関する社内研修に参加し、知識やスキルを深めましょう。
- 外部セミナー: 外部のセミナーや勉強会に参加し、最新の情報を収集しましょう。
- 資格取得: 品質管理に関する資格取得に挑戦し、専門性を高めましょう。
これらのポイントを実践することで、TQCからTQMへと進化を遂げ、顧客満足度を高め、企業の成長に貢献できるでしょう。
現場で働く我々が、TQMの考え方を理解し、実践していくことで、職場全体の品質意識を高め、より良い製品やサービスを提供できるはずですよね。
まとめ|日本的品質管理=日本式TQCの強みを活かして品質向上を目指そう
さていかがだったでしょうか?今回の内容を通して、日本式TQCの強みと、それが企業にもたらすメリットを理解していただけたかと思います。品質管理は、単なる不良品削減のための手法ではありません。それは、顧客満足度を高め、企業の成長を支える重要な基盤です。
特に、全員参加というTQCの考え方は、現場で働く皆さん一人ひとりの力を最大限に引き出すための鍵となります。現場の改善こそが、品質向上への近道であることを、成功事例を通じて実感していただけたはずです。ほんとにこれって日本人的ですよね。
「品質は、経営者や一部の専門家だけが考えるものではない。現場で働く私たち一人ひとりが、品質を作り、向上させる責任を持っている。」
この意識を胸に、ぜひTQCの導入・改善に取り組んでみてください。小さな一歩が、やがて大きな成果へとつながります。
それでは今回の内容が、皆さんの品質管理活動の一助となり、さらなる品質向上へと繋がることを願っています。さあ、今日から、品質管理体制を再点検して、品質向上を目指しましょう!