制約条件理論のPQ演習問題を解説~TOCスループット会計をわかりやすく~

制約条件理論のPQ演習問題を解説~スループット会計をわかりやすく~

前回はトヨタ生産方式の考え方を
再構築してさらにシンプル化した
制約条件の理論=TOCについて
簡単に紹介しました

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けれど概念ばかりでいまいち
何がすごいのかわかりにくいとの
経営者からご意見もありましたので
もう少し具体的に数字で説明を
してみたいと思います

実はこの制約条件理論 TOCを考えた
ゴールドラットの著書
ゴールドラット博士の
コストに縛られるな!
』の中で
通称:PQ演習問題と呼ばれる問題が
掲載されています

100人に1人しか正解しなかった
と言われるこの問題の類題を用意し
これを解説してみることで
皆さまの理解が深めればと思います

今回も読み終えるまでのお時間
しばらくお付き合いくださいませ

 

目次

TOCスループット会計について

制約条件理論に準じた会計方式を
スループット会計と呼んでいます

逆にスループット会計とは
何なのかがわからないと
制約条件理論も理解しづらいとも
言い換えることができます

ではこのスループット会計とは
どのような会計と言うのでしょうか

まずは標準的な会計方式と比べて
その本質を説明していきましょう

 

標準的な会計方式

通常の会計方式は製品毎に
売上高から経費を差し引いて
最終的な利益を計算します

つまりたとえば製品Aの利益は
価格:3万円
経費:2万円 だとすると
利益は1万円ということになります

そしてこの経費には実は
変動費もあれば固定費も含まれます

変動費は材料や部品代、梱包費など
製造すればするほど増える経費

固定費は人件費や家賃、光熱費など
製造してもしなくても固定的な経費

標準的な会計方式の場合
この固定費を製品1個分に細かく
割り振って計算していくことで
正確な標準原価を算定していきます

固定費は作業時間
あるいは設備使用時間など
なにかの基準で按分することが多く
製品毎に平等に割り当てることが
その目的となっています

製品毎の標準原価が計算できたら
販売額から標準原価を差し引いて
製品毎の利益を計算

そして販売数量を掛け算して合計し
工場全体の利益を算出します

 

スループット会計とは

では一方でスループット会計とは
どのような会計方式なのでしょうか

 

そもそもスループットとは
時間あたりの生産量を指す言葉です

けれどこのスループット会計では
売上から資材費や外注費といった
製品を作るためにかけた費用」を
差し引たものをスループットと呼び
それを基準に利益を計算します

つまり製品毎に計算するのは
利益ではなくてスループット

スループット= 売上-真の変動費

この真の変動費というのは
原材料や梱包資材などの資材費と
外注加工費を加えたもの

この製品毎のスループットを合算し
後からその他の業務費用全体を
差し引いて工場の利益を計算します

 

標準会計とスループット会計の違い

製品毎の利益を細かく計算して
その利益の合算で全体利益を見る

これが標準的な会計方式

その一方、スループット会計では
製品毎はスループットだけを計算し
後からその他業務費用を差し引いて
全体利益を見る

一見、計算するプロセスが
違うだけに見えるかもしれませんが
大きな違いは計算にかかる負荷です

標準的な会計方式の場合は
スループット会計でいう
その他業務費用を細かく計算して
製品毎に落とし込む必要があります

細かく計算してスッキリはしますが
実はそんなに正確でもありません

按分ルールに則って計算する
平等さはあるかもしれませんが
実際にかかっている作業時間が
標準通りだと限らないため
実績ベースでは正確になりません

一方でスループット会計では
その他業務費用はごっそり後から
差し引くことでよいとの割り切りが
製品毎の管理を簡素化させています

つまり製品毎に見ていくのは
スループットだけで十分であり
それよりも工場全体の増減を示す
工場スループットの最大化こそが
我々のテーマだ!
というわけです

 

制約条件理論のPQ演習問題とは何か

そんなスループット会計を解説した
ゴールドラット博士の
コストに縛られるな!
』の中で
通称:PQ演習問題と呼ばれる例題が
掲載されています
(本文95ページ~117ページ)

これはP製品とQ製品の2製品を
どのような割合で生産すれば
もっとも最大の利益が得られるか?

そんな内容が解説されています

このPQ演習問題が実はTOCの
集中の5段階』を理解するうえで
かなり参考になる例題となってます

そのため今回はその考え方を基本に
類似した事例を紹介します

ぜひ参考にしてみてください

 

事例:タブレット工場の最大利益を考えよう

制約条件理論のPQ演習問題を解説~スループット会計を理解する~

制約条件理論のPQ演習問題の類似事例~スループット会計を理解する~

 
たとえばあなたがタブレットを
生産する工場を任されたとします

その工場で生産しているのは
Wi-Fiタブレット と
Cellularタブレット の2種類

Cellularタブレットは
Wi-FiタブレットにSIM通信部品を
付け加えた製品設計となっていて
工場の前提条件は上図のとおりです

それではこの工場で得られる
月間最大利益はいくらでしょうか

制約条件理論の考え方を応用して
考えてみてください

 

タブレット工場のスループットを計算する

月間20日稼働で1日8時間として
160時間で生産しているとします

まずは各製品のスループットを
計算してみると以下のとおり

 

タイプ 販売価格 原材料費 スループット
Wi-Fi 29,000円 10,000円 19,000円
Cellular  30,000円 12,000円 18,000円

 

また、この工場で働くヒトは
Aさん、Bさん、Cさんの3名で
熟練工であるAさんとBさんは
2箇所の工程を担当しています

それぞれの能力は上図に示すとおり

 

条件を整理して制約条件を見つけよう

条件をよく確認してみると
各製品には需要数が設定してあり
つまりそれ以上は生産しても
売れないことを意味しています

Wi-Fiは35台、Cellularは70台

それぞれスループットを掛けると
Wi-Fiは665千円
Cellularは1,260千円なので
工場の最大利益は1,925千円と
なるように考えるかもしれません

しかし工場の条件をよく見てみると
作業するのは3名しかいないようで
すべて生産できるか確認が必要です

それぞれの作業時間は以下のとおり

 

担当者 Wi-Fi Cellular
Aさん 2時間 1時間
Bさん 2時間 4時間
Cさん 2時間 2時間

 

上記によればWi-Fiタイプの生産は
全員が2時間で均等です

しかしCellularタイプを生産は
Bさんが4時間と多くかかっていて
あきらかに制約条件となります

そこでBさんの月間の作業時間が
Wi-Fi35台は70時間
Cellular70台は280時間となり
すべての需要に対応するには
350時間が必要となって
160時間ではまったく足りません

そこで生産製品をうまく組み合わせ
利益を最大できる製品ミックスを
探すことになります

 

案1:Wi-Fiタイプ中心で生産

スループットの比較だけすれば
Wi-Fiタイプの方がよいですよね

なのでまず市場需要である35台を
全数供給=生産することを考えます

Wi-Fi35台は70時間なので
Bさんの作業時間はあと90時間

これでCellularを22台作れる

結果、月間のスループットは合計で

タイプ 生産台数 製品スループット 月間スループット
Wi-Fi 35台 19千円 665千円
Cellular 22台 18千円 396千円
(計) 47台 1,061千円

ここから業務経費100万円差引くと
かろうじて61千円の黒字となります

 

案2:Cellularタイプ中心で生産

同様に市場需要である70台を
全数供給=生産することを考えます

Cellular70台は250時間なので
これだけで160時間をオーバー

逆算するとCellular40台で
もうBさんの作業時間はいっぱい

結果、月間のスループットは合計で

タイプ 生産台数 製品スループット 月間スループット
Wi-Fi 0台 19千円 0千円
Cellular 40台 18千円 720千円
(計) 40台 720千円

 

ここから業務経費100万円差引くと
280千円の赤字となってしまいます

結果的に案1がもっとも
工場の全体利益が最大になるため
61千円が答えだということになります

 

集中の5段階で継続的な改善を進める

タブレット工場の月間最大利益は
さきほどの計算でわかります

これは集中の5段階で表現すれば
最適な製品ミックスの生産の計画で
STEP2:制約条件を徹底活用する
を実施したことになります

つまり次なるステップ
STEP3:その他を制約条件に合る
ために、Wi-Fiタイプを主体とした
製品ミックスで工場全体を最適化し

さらに
STEP4:制約条件の能力を高める
ためにBさん以外のリソース活用の
検討を進めることができれば
さらにCellularタイプの生産を
増やすことができるでしょう

 

制約条件理論のPQ演習問題を解説まとめ

さて、今回はTOC理論で代表的な
PQ演習問題の類似事例を読んで
皆さまの理解は深まったでしょうか

通常の原価管理に慣れている方は
こう説明しても混乱される方は多く
製品毎をおおざっぱに把握・調整し
全体で辻褄を合わせるスタイルには
違和感を持たれます

 

ですが実際にこの考え方で
最適な製品ミックスを検討するのと
製品毎に詳細を計算して決めて
最適な製品ミックスを検討するのと
結果は大きく変わらないのも事実

なのであれば複雑な管理をするより
能力がもっとも低い制約条件に合せ
全体を調整する割り切った考え方で
やってみるのもひとつの選択肢です

ぜひいちど前向きに検討ください

 

 

それでは今日はここまでです

今後とも宜しくお付き合い下さい☆

長文乱文を最後まで読んでくださり

いつもありがとうございます♪

すべては御社の発展のために
すべてはあなたの笑顔のために

 

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この記事を書いた人

 大手総合電機メーカーで20年間経験を積んで平成22年に独立。10年間で600社を超える中小企業支援、そして自らも小売業を立ち上げて業績を安定させた実績を持つ超現場主義者。小さなチームで短期的な経営課題を解決しながら、中長期的な人材育成を進める「プロジェクト型課題解決(小集団活動)」の推進支援が支持を集めている。

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