DXに挑む中小製造業が直面している5つの現実について

製造業DXに挑む中小製造業が直面している5つの現実について

 製造業DXを実現させるために必要なことについて、これまでいくつかの調査を行ってきました。それについて現在、兵庫県中小企業診断士協会において調査研究報告書を作成中ではありますが、当ブログをお読みになっているあなたにだけに、先行してその内容の一部を紹介させていただきます。これらを読むことによって御社のデジタル化=製造業DXを進めるきっかけになれば幸いです。

目次

中小製造業にとってデジタル化の進展は必須課題

製造業DXに挑む中小製造業が直面している5つの現実

我が国の製造業の業績動向(出典:2021ものづくり白書)


 
 中小企業白書2021年版によれば、製造業の売上高、営業利益はコロナ禍の影響を受けて減少傾向であり、今後も明るくない状態が継続する見通しであるとのこと。この状況を打破する有効な手段として、デジタル技術を生かした業務プロセスの変革=デジタルトランスフォーメーション(DX)に大きな期待が寄せられています。その一方で、デジタル化の状況は人事関係、生産管理、経理方面は進んでいるものの、業務自動化への導入が進んでいない。兵庫県下へのアンケート回答企業も同様だが、その格差がより高い結果となっています。特にIoT/AIの導入はまだ1割以下であり、今後デジタル化支援においてこの方面の導入を目指す企業は益々増えるものと推測できます。

IT化に積極的である会社ほど業績が高いが、その推進は経営者が鍵

製造業DXに挑む中小製造業が直面している5つの現実

労働生産性の水準とデジタル化に対する社内の意識別(出典:2021年版 中小企業白書)


 
 デジタル化は経営者やIT人材が先導的な役割を務めた企業ほど成功しており、積極的な企業ほど労働生産性(=経営効率)が高く、抵抗感の強い企業の実に1.7倍の統計が発表されています。またデジタル化方針を事業方針に入れている、あるいは経営者が積極的である企業も同様に高い一方で、全従業員に対する意識改革が最重要視される見識を踏まえれば、経営トップに強いリーダーシップが求められていると言えます。しかし経営者が適正な判断と改革を推し進めるためには、相応のIT知識と経営変革ノウハウの両面が必要であり、これらを補填あるいは支援するための機会が有効な手段のうちのひとつです。

デジタル化のゴールは3つのスマートモデルにあり

中小製造業のDX化への道①ー2

出典:中小規模製造業者の製造分野におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)推進のためのガイド


 
 以前の記事ではデジタル化を進めることによって到達するDXの理想像=目指す姿として、「スマートプロダクト」「スマートサービス」「スマートファクトリー」の3つの最終到達点=スマートモデルが存在することを紹介しました。デジタル技術の活用により、前の2つは今までになかった付加価値提供を、後の1つは究極の効率性を実現する工場を指し、それぞれを目指して推進することが望ましいと言えます。ただし中小製造業の資源は潤沢でない場合が多いため、それぞれの最適な成長路線に応じたもっとも優先されるモデルを選択して、集中的に進めることが現実的でしょう。そのため各社独自に存在する経営戦略上の優先順位が明らかになっていることが、DX=デジタル変革の成否を決める鍵となります。

デジタル化の推進は内製で進めることが望ましい

製造業DXに挑む中小製造業が直面している5つの現実

デジタル技術を活用する上での課題等(出典:ものづくり白書2021)


 
 デジタル化を進めるためには自社の業務プロセスや工程に適したITツールが必要であり、外注でも内製でも、導入するシステムの良否を評価できるIT知識を持つ人材が社内に必要となります。現在では安価で簡単に扱えるノーコード/ローコードでカスタマイズ可能なITツールが増えてきています。そのためIT知識を段階的に蓄積する、加えて失敗しないデジタル化を進めるためには、外部組織に丸投げする方向でなく、一歩一歩進めることができる内製で取り組むことが、コスト的にも望ましい環境が整ってきたと言えます。

公的支援機関は専門知識と専門家とのつながりが不足している

 公的支援機関に対する製造業支援に関するアンケート調査によれば、業務の中での製造業支援の割合は10-20%程度と低く、主に職員あるいは専門家による個社支援、補助金申請サポートを実施しています。一方で、専門知識、専門家とのつながり、そして人手が不足しているなど、中小製造業を支援するための課題も多いことがわかりました。
 また約9割の回答者が、中小製造業のIT導入やDX支援に「取り組むべき」「どちらかというと取り組むべき」との意見を持っているが、実際に支援した実績は4割に満たなかったようです。また今後の支援の課題として「製造業に特化したIT・DXの専門家とのつながり」「IT・DXに関する情報発信」「職員そのものの知識習得」などが挙がったが、半数以上の回答者が未回答であったことも、この支援の難しさを表しています。

まとめ

 これら調査して明らかとなった現実を俯瞰してみれば、これからの事業戦略としてデジタル化を進める施策を選ばない製造業はほとんどいないと感じます。それはやはり、この情報化の進化速度が未だ高まっている社会の中で事業展開を図る必要があるなら、デジタル技術を活用しない成長ルートは描きにくい構図があるからです。逃げられないなら積極的に活用するべきだと個人的には思います。もちろん、その会社独自のあるべき姿に到達するために、です。

 
※ なお、本調査内容は、兵庫県中小企業診断士協会において報告会を開催します。ご興味のある方はぜひ以下からお申込みをどうぞ。

 
それでは今日はここまでです。今後とも宜しくお付き合い下さい☆

長文乱文を最後まで読んでくださりいつもありがとうございます♪

すべては御社の発展のために、すべてはあなたの笑顔のために

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この記事を書いた人

 大手総合電機メーカーで20年間経験を積んで平成22年に独立。10年間で600社を超える中小企業支援、そして自らも小売業を立ち上げて業績を安定させた実績を持つ超現場主義者。小さなチームで短期的な経営課題を解決しながら、中長期的な人材育成を進める「プロジェクト型課題解決(小集団活動)」の推進支援が支持を集めている。

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