見える化はなぜ必要?~見える化が進まない工場の7つの恐ろしさ~

見える化はなぜ必要?~見える化が進まない工場の7つの恐ろしさ~

しっかり管理ができているかどうかは、工場を見学すればすぐにわかります。やはり作業している人々に必要な情報が伝わる現場になっているかどうか。つまり「見える化」ができていなければ、しっかり管理ができないことを我々専門家は知っているからです。

でもいったいどんな情報を見える化すべきか?の優先順位は工場によって変わるものの、多くの項目では共通しています。そこで今回は、工場で見える化したい7つの問題点を紹介することで、あなたの工場を見える化するヒントを得ていただきたいと思います。

では今回も読み終えるまでのお時間、しばらくおつきあいください。

目次

見える化はなぜ必要?~見えないことの恐ろしさ~

ではそもそも、見える化はなぜ必要なのでしょうか?

もしあなたが今日、今をもって目が見えなくなったらどのような状況に陥るか考えてみましょう。外出することはもちろん、普段の生活でもいろいろと問題が起こってきます。まずモノがとれない、探せない、周囲の状況が把握できない。つまり普通の生活も安全も確保できているかどうかわからないまま、日々を過ごすことになります。このように、見える化が進んでいない工場では多くの状況が不明のまま仕事をするので、効率的なのか安全なのかもわからない状態だと言えます。

たとえば自動車は今、何キロで走っているか?燃料はまだあるか?エンジン温度に異常はないか?など多くの仕組みによって情報が見えるからこそ安心して運転できます。逆にいえばこれらが見えないまま運転を続ければ、いつか問題が発生するはずです。これは本当に恐ろしいことですよね。

見える化が進んでいない工場では、そんな自動車で運転しているようなものです。いつ何が起こるのか?事前にわかる工場とわからない工場。あなたはどちらの工場を信頼し、仕事を頼みたいでしょうか?同じ気持ちを取引先に持たせないよう、しっかり見える化を進めてください。

見える化が必要な7つの視点

まず一般的に見える化が必要になる7つの視点を紹介します。その視点は以下のとおりです。

見える化が必要な7つの視点

見える化視点①モノ
見える化視点②4M
見える化視点③QCD
見える化視点④情報
見える化視点⑤管理
見える化視点⑥方針
見える化視点⑦経営

では、これらの見える化視点について、装備されなければ、見える化が進まなければ、いったいどんな恐ろしい問題が起きるのか?について見ていきましょう。

見える化視点①:モノ

製造現場には、材料や製品、仕掛品、不良品、保留品、手直し品、工具、治具、ゲージなど、多種多様な物理的なモノのがあります。これらがどこにあって、どのような状態にあるのかが見えないと、まったく価値を生まない探すための作業が発生したり、見つからなければ作業が停止してしまったりすることがあります。

また、見えない状態だと製品をつくり過ぎたり、不良在庫を抱えたり、良品の中に不良品が混入したりしますが、これもまた見えなければわからないままです。正直むちゃくちゃですよね。でもあなたの工場は大丈夫ですか?今はそこまでひどくなくても、そんな工場が最終的にどんな末路にいたるのか?考えただけでも恐ろしいことです。

見える化視点②4M

4Mとは、以下のものを指します。

Man人のこと(人数、力量、意識)
Machine施設設備のこと(ハードソフト)
Method方法のこと(技術、手法、しくみ、システム)
Material原材料や必要部材等のこと(有形、無形、コンテンツ)

これら4Mが見えない状態下では、以下のような問題が発生します。

  • 人の動きが見えない状態では、人にムラ(ある基準に対する負荷のバラツキ)やムリ(心身に過度の負担がかかること)が生じます。
  • 設備の動きが見えない状態では、設備にムラ(生産計画や生産出が一定でなく一時的に増減変動すること)やムリ(保有能力に対して過度の負荷がかかること)が生じます。
  • 方法が見えない状態では、人によりやり方の違いやかかる時間が異なるためムラ(バラッキ)を誘発します。
  • 原材料や必要な部材が見えない状態では、材料待ちの手待ちになったり、問違った材料で生産し不良をつくったり、余分な重複した購入をしたりしてしまいます。

正直言って、ムダの宝庫ですよね。これでは4Mが見えている他社に比べて、見積り価格で負けるか、あるいは利益も出せずにみんなの給料も上げらない状態が続きます。

見える化視点③QCD

QCDとは、品質、コスト、納期の3つを指します。これらが見えないと、以下のような問題が起こります。

  • 品質が見えないと、不良が見つけにくくなり、対応が遅れるとコストがかかるだけでなく、お客さまからの信頼を裏切ることになります。
  • コストが見えないと、儲かっている仕事なのかどうか分からないまま、いろんな挑戦や努力を重ねたとしても、利益が出せず、給料も上がらず、疲弊することになります。
  • 納期が見えないと、納期が遅れて欠品や特急便などのムダなコストがかかり、生産計画にイレギュラー対応ばかりで、現場が混乱してムダだらけの毎日になります。

特にQCDは顧客に提供する価値としては大きいので、悪い評判が立つといつのまにか受注が減っていきます。でもこれってなかなか気づけないので本当に怖いことです。ただ、QCDはものづくりの本分なので、ここをおろそかにするなら当たり前の結果と言えば当たり前ですよね。

見える化視点④情報

情報が見えないままだと、以下のような問題が発生します

  • 生産指示の優先順位が不明確になり、作業者は指示を仰ぐため管理職を探す時間が増える。
  • 人的情報が不明確だと、生産計画、出荷計画、引き取り情報、運搬情報などに影響を与え、つくり過ぎや欠品、誤配送、納期遅れなどが発生する。
  • 指示情報が最新でない場合、誤った図面で誤った製品を生産することがある。
  • 不良や顧客クレーム報告が隠れてしまうと、問題が起こっているかどうかさえ誰も知らない。
  • 見える化を進めることで、ムダを徹底的に排除し、人を育てることができ、長期的・継続的な成果を得ることができる。

見えないということは、あらゆる問題を引き起こす原因を量産します。

見える化視点⑤日頃の管理状態

製造現場における日常管理には、生産管理、購買管理、在庫管理、工程管理、品質管理、設備管理、原価管理、安全管理、労務管理などがあります。これらの日常管理が見えないと、以下のような問題が発生します。

  • 生産管理の見える化が進まないと、生産計画や調整で混乱し、人員や設備の調整ができなくなります。
  • 購買管理の見える化が進まないと、材料の過不足、過大な在庫、死蔵品の発生、材料費の増大などの問題が発生します。
  • 在庫管理の見える化が進まないと、入出荷管理が難しくなり、実地棚卸も時間がかかります。
  • 工程管理の見える化が進まないと、生産指示で手待ちが発生し、進捗管理で遅れが生じ、作業実績管理で結果を把握できなくなります。
  • 品質管理の見える化が進まないと、製造工程の不良が把握できず、ユーザーからのクレームが発生し、トラブルで忙殺されます。
  • 設備管理の見える化が進まないと、自主保全や計画保全ができず、突発的な故障でラインが停止することがあります。
  • 原価管理の見える化が進まないと、利益が生まれなくなることがあります。
  • 安全管理の見える化が進まないと、重大災害や環境破壊、従業員のワークライフバランスにも影響を及ぼすことがあります。
  • 労務管理の見える化が進まないと、工数や人員計画、組織編成が把握できなくなります。

日常管理は重要です。それが見えないことこそ、本当に恐ろしいことなのです。

見える化視点⑥会社方針

会社の中には、様々な背景を持った人がおり、自然にまかせれば方向性や思いが違うはずです。一方で、近年ではコミュニケーションの機会が減っており、方向性や思いが見えない状態が続いてしまい勝ちです。そんな状況が続くと、以下の問題が発生します。

  • 目的が見えないと、仕事の価値を見出せずやらされ感に陥る。
  • 会社方針が見えないと、進むべき方向が定まらない。
  • 目標が見えないと、方向性を見失ってしまう。
  • あるべき姿が見えないと、バラバラな動きになってしまう。
  • ありたい姿が見えないと、場当たり的な行動になってしまう。

それに加えて、自分の役割が見えないため、結果的に指示待ちの人が多くなってしまいます。それは全員にとって良い状態か?少し考えてみれば誰だってわかりますよね。

見える化視点⑦経営の方向性

経営の方向性が見えていないと、以下の問題が起こります。

  • 自分しか見えなくなり、自分の利益のことしか考えないようになる。
  • 自工程のつくり易さや都合を最優先に考え、全体を考えた自身の役割を考慮しなくなる。
  • 余裕があっても他者を助けなくなる。
  • 工程間の流れが悪くなり、在庫が発生し、リードタイムが長くなる。
  • 不必要な重点項目が増えて業務プロセスが複雑になり、事務作業が増える。
  • 部分最適化になり、全体最適化が見えなくなる。
  • 自分がつくったものが儲かっているのかわからなくなる。
  • 自分の努力が経営に反映されているのかわからなくなり、モチベーションが下がる。
  • 経営者の意思が伝わらなくなる。

これらの問題が会社、ひいては自分の将来に不安を抱かせることになります。

見える化の本当の狙い

いかがだったでしょうか?見える化が進まない工場がどれだけの問題の種を増やしているか、そのままいけばどんな恐ろしいことになるか、ご理解いただけたかと思います。では、見える化を進めればどんなメリットが生まれるのいか?その本当の狙いを考えていきましょう。

見える化が意図していること

ヒトって何も見えない状態では、何をしたら良いかわからなくなってしまいますよね。工場運営も同じです。しっかり見えるようになることで、実際に物事を確認して改善策を考え、問題を解決するための行動を起こすことができます。つまり見える化とは、行動を起こすきっかけづくりを意図していると言えます。そのきっかけを活用して行動を起こせば、以下の効果を得ることができるようになります。

ムダを徹底的に排除する

製造現場には、下記のような7つのムダがあります。これらのムダが見える化により顕在化し、改善ニーズとなり、改善行動につながり、ムダが排除されます。同時にムリムラも排除されます。

7つのムダ

つくり過ぎのムダ
手待ちのムダ
運搬のムダ
加工そのもののムダ
在庫のムダ
動作のムダ
不良をつくるムダ

ムダが見つかった場合、改善のためのアイデアを募集することも大切です。どんな小さなアイデアでも構いませんので、改善に向けて取り組みましょう。

人をつくっていく

見える化を通じての日々の改善プロセスは、人々に変化を促します。これまでのように何も見えなかった問題がどうしても目に入ってくるわけです。そりゃ、何とかしなければいけないという思うようにもなります。そこから当事者意識が芽生えさえすれば、自律的に何かしようという考え方に変わるわけです。意識が変われば、行動も変わっていくもの。このような実行力・改善力を持った人材を育てることで、実践的な取り組みが可能となり、徐々に組織や文化が変わっていき、徐々に会社全体が生まれ変わっていきます。そうなれば本当に素晴らしいことですよね。

見える化の本質的な役割

見える化が本質的に担うべきなのは、改善を進める、あるいは管理を徹底するための、最初のきかっけとしての役割です。その理解を深めるためには、以下の2つの考え方が重要です。

①経営の氷山モデルについて

企業は色々なマネジメント上の課題(経営課題)を抱えています。戦略実現、品質向上、売上向上、リードタイムの短縮、コストダウンなど、氷山モデルで言えば水面上に出ている目立つ課題です。それらを解決するために、企業は仕組み(システム)を構築し、課題解決に向けた取り組みを行います。 また一方で、氷山には目に見えない水面下の部分がありこちらの方が大部分を占めます。仕組みを上手に動かし、課題解決を図るには、この水面下に目を向けることが必要です。ここが管理改善の基盤(マネジメント基盤)と言われるものです。基盤ができてはじめて、仕組みがまわり、マネジメント課題が達成できるのです。

つまり見える化を進めるにあたり、目立つ水面上の課題だけでなく、そこに大きく食い込んでいる水面下の状況を無視するわけにはいきません。基盤ができているか、ちゃんと機能しているか?を見える化することが、とても大切な考え方になるわけです。

②改善・管理の基盤をつくる

改善・管理の基盤は、環境の変化に常に対応するための卓越したシステムです。この水面下に収まる基盤が弱ければ、上に乗るシステムやマネジメント課題を解決することが難しくなると思って下さい。この基盤は一般的に「5S + 見える化 + 人づくり」という3つの柱からなります。

  • 5S活動:ムリ ムラ ムダを排除するための環境づくり
  • 見える化:改善の必要性を見えるようにすること。これが見えれば善行動につながる
  • 人づくり:改善行動を通じて人を育てること。人が変われば、組織も変わる

この3つの柱を使って、自社流にシステムをアレンジすることで、様々なマネジメント課題が解決されていきます。

見える化はなぜ必要?まとめ

モノづくりにおいては、仕掛品を減らしたり、生産性を上げたり、原価を下げたりすることが求められますが、これらは結果であり、本当の目的は一人ひとりの能力を引き出す仕組みづくりにあります。短期的な成果を目指すと、一時的には成果が上がったとしても、またすぐに方向転換して続かなくなります。

やはり工場運営で大切なことは長期視点です。長期的・継続的な成果を求めるのであれば、人づくりと、それを成しえる仕組みづくりが欠かせません。一人ひとりの能力を最大限に引き出せば、確実に生産性も上がり、原価も下がるはずだからです。

「モノづくりは人づくり」だとはよく言ったもです。改善をどんどん進めることができる組織づくりを進めたいならば、まずはぜひ見える化からご検討いただくことが有効です。

それでは今日はここまでです。今後とも宜しくお付き合い下さい☆
長文乱文を最後まで読んでくださりいつもありがとうございます♪

すべては御社の発展のために、すべてはあなたの笑顔のために

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この記事を書いた人

 大手総合電機メーカーで20年間経験を積んで平成22年に独立。10年間で600社を超える中小企業支援、そして自らも小売業を立ち上げて業績を安定させた実績を持つ超現場主義者。小さなチームで短期的な経営課題を解決しながら、中長期的な人材育成を進める「プロジェクト型課題解決(小集団活動)」の推進支援が支持を集めている。

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