4.品質問題製造業が今やるべきこと ~改善があってこその管理の仕組み~

4.品質問題製造業が今やるべきこと ~改善があってこその管理の仕組み~

前回は、ものづくりはひとづくりとして、自律性あるものづくりを本気で進めることは人を育てることにつながることをお話をしてきました。今回は、管理のしくみづくりに着目して管理とはなにか、どのようなことが必要なのかを解説していきます。

目次

管理活動は投資です

私は、電子部品・コネクタ製造メーカーにいました。所属は、品質開発課という部門です。役割としては、製品が開発された段階から関わり市場要求に合うように開発部門とともに改良を加えて行きます。その後、市場に出た製品ついて問題が起きた場合は、品質問題として解決していくことを進めていました。

生まれた製品がうまく顧客に満足してもらえるように育てていくことをしておりました。近年は、国内の企業も投資を控えているということもあり、開発される製品も少なくなってきており、新製品というよりも既存品を育てることが多かったです。

そのような仕事を通して、月次報告会や個別のクレーム対応、開発とのデザインレビュー、製造工場との品質会議、ISOといった管理手法の導入などを行っていました。

これらの活動を粛々と進めていても思うほど成果につながらないことも多かったように思います。うまく進んでいるように報告されていても業績に結果が表れないことはよくあります。毎日の仕事の中で会社業績を知ることは、難しいことだと思います。

1つの活動がどれだけの影響を会社に及ぼしているかは、環境変化で多くの要因の影響を受けている企業からみるとわかり難いことは仕方のないことです。しかし、管理活動を1つの投資と考えてみますと、投資に見合う成果が認められなければそれはやめた方がいいことになります。

例えば、ものをつくれば検査をしてそのものの出来栄えを確認します。検査を管理活動とすると、検査にはコストがかかります。その検査も出来栄えを確認できなければやめた方がいいということになります。

計画をたてて、それが結果につながらなければ計画を見直していかなければなりません。それを行わないで進めていくことは問題です。

管理活動の目的を明確にする

管理活動には、本来の目的があります。先ほどの検査では、製品の出来栄えを確認するということです。管理活動は進めることだけでなく、目的にかなっているかを常に考えておく必要があります。

品質管理は、設計段階で狙ったものが安定してつくれる条件を出してその組み合わせでもって作り方を決めていきます。その決めた作り方を維持管理することで、そこから外れるものについて問題の深堀りを繰り返し、得られた気づきでもって改善につなげていきます。そのことで品質は向上していきます。

また、管理は「目的意識をもつこと」「事実に基づいて進めていくこと」が基本になり、PDCAを単純に回していればいいというわけではありません。これらの活動をうまく進めていくにはある程度の経験が必要だと思います。

私が所属していたトップからは「品質問題になるかどうか臭いで感じろ!その感覚を研ぎ澄ませよ」とよく言われました。感覚を研ぎ澄ませるとは、今までの経験からこれはいけるとか、これはいけないとかの判断を肌感覚でもしっかりと伝えることができることです。

その判断は、「データで物をいいなさい」「データ亡き者発言権なし」などと言われるような指摘されることとは事実に基づかないこともあるため一線を画します。

不十分な事実情報に基づいて判断してしまうために成果につながらないことが増えてくるのも事実です。

本気で取り組めるか

製造業でお仕事をしていると「トヨタのかんばん方式」の話が良く出てきます。かんばん方式を学んで導入しようと試みた企業も多いと思います。枠に当てはめたとしても魂を込めないと成果にはつながらないという声がよくあがります。魂を込めるとはどのようなことでしょうか?

トヨタの協力会社にお勤めされていた人から次のことをお伺いしました。「私は、かんばん方式を成果につなげるノウハウがあるのだと思い本を読み漁りましたが、理解はできませんでした。工程において作業設計、ライン設計することはスタートにすぎなくて、問題に気づきやすくするだけで、日常的、継続的に改善を積み重ねることがポイントであることに気づきました。強い意志を持って取り組むことが大切だったのです。」

私もトヨタの品質発表会に参加した際によく耳にしていたのは「本気で取り組む」ということでした。一貫した考え方が伝わってきます。

規格を導入するという考え方に当てはめた時に、近年ではISO管理ツールを導入する際は、導入することが目的のように錯覚されることが多いです。

ISO審査でも、標準とその遵守状況に審査の重点が置かれるため、実質的な改善活動が日常的、継続的に行われていて組織に根付いているかを判断するには審査は弱いように思います。昨今、この点に問題認識を持たれる審査員もいて、改良が加えられていることも聞きます。

このように管理ツール導入が前提になっているときは、導入することが目的のように錯覚されることが多いので、目的と手段を取り違えないようにすることは大切です。

管理のしくみづくり

企業体質の向上は、最終的に、問題解決が繰り返し、行われているかによって大きく変わってくると思います。常に問題提起し、その改善を継続的に行い、それが日常的に繰り返させることによって管理体質は向上していくのだと思います。

それような組織に根付かせるためのしくみづくりでは、1つの指標として、コンサルタント会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーによって提唱された「7つのS」もアプローチとして参考にすべき一つであると思います。

7つのSは、ソフトの4S「Shared value (共通の価値観・理念)、Style(経営スタイル・社風)、Staff(人材)、Skill(スキル・能力)」とハードの3S「Strategy(戦略)、Structure(組織構造)、System(システム・制度)」からなっています。

ソフトの4つは、価値観が絡む要素なので、強制的にまたは短時間に変更することは難しいですが、ハードの3つは、変えようとする意思やプランがあれば、変更することが可能です。

管理のしくみづくりには、「何を目指して、どのような組織で、どのように運用していくか」を決めていくことが、結果に結びつけやすくなると思います。環境変化の激しい昨今において、管理のしくみづくりには大切な考え方です。

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この記事を書いた人

電子部品メーカー品質保証に従事。主に、
(1) 製造現場の生産管理ノウハウ、品質管理、カイゼン活動、再発性クレームなど品質問題解決
(2) 市場不具合の傾向分析により、人的ミス管理不良に関する再発防止措置
(3) 製品開発市場評価によるフィールドにおける製品寿命推定
(4) 人材教育、チームビルディングなど

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