改善活動が継続できない3つの理由~効果的な評価とフィードバックで解決する実践ノウハウ~

改善活動が継続できない3つの理由~効果的な評価とフィードバックで解決する実践ノウハウ~

 改善活動は、私たちの仕事をより良く、より効率的に進めるために不可欠なものです。しかしこの改善活動はやっかいなことに、自然に任せていては、継続できないのが難しいところです。

 そこで今回は、製造業における改善活動はなぜ必要なのか?それを継続させるための効果的な評価ノウハウとはどんなことか?についてお話しします。あなたの改善が工場(チーム)にどのような影響を与えて、どのように評価されるのかを知ることで、毎日の改善がもっと意味を持るようになり、加えてチーム全体が前進する手助けとなります。では、一緒に改善活動を継続し、作業現場をより良くしていきましょう!

 ぜひ今回も読み終えるまでのお時間、しばらくお付き合いくださいませ。

目次

製造業における改善活動の意義

 製造業における改善活動は、私たちの日常の作業効率や製品の品質を向上させるためには必要不可欠です。そりゃどう考えても、1つの改善だけでチームとしての実力がグン!と上がったり、職場が一夜にしてとてつもなくよくなったりすることは、魔法ではないのですから現実的にはありえませんよね。

改善を継続させることの重要性

 つまり改善は継続してこそ意味があるということです。何度も何度も、作業プロセスを見直し、常により良い方法を探求するスタイルは組織をとても強くしていきます。毎日の作業で少しずつだったとしても手間を省いていったならば、1年後には大きな時間の節約となり、それがコスト削減につながります。

 これは世の中の真理とつながることです。例えば、1日に1%ずつ改善を積み重ねることを前提としましょう。1日目は1に1.01を掛けて、2日目にはそれに1.01を掛けて、これを1年のおおよその稼働日である250日を繰り返すと11.913…約12倍に膨れ上がります。それほど継続とはすごいパワーを秘めています。

改善への評価が果たす大切な役割

 またそうやって継続させようとする時に、とても大切な役割を果たすのは改善を実施したヒトへの評価です。改善を実行した側にとっての評価は、改善そのものの良かった点や、次なる改善すべき点を知ることで、自分は何を続け、何を改善するべきかを明確に理解できます。また具体的なフィードバックを受けることで、作業者は自分の努力が認められ、次の改善に向けての意欲が強まり、動機付けができるわけです。この効果を使わない手はないですよね。

改善活動が継続できない3つの理由

 では逆の話ではあるのですが、改善活動が継続できないのには、それなりに理由があるんです。では代表的なその理由を3つ挙げていきましょう。

理由1:目的が見えない

 まず最初の理由は、目的が見えないことです。上司から改善しろと言われ、やってみたとします。でも一定の負荷をかけてやった改善に対して、なんのために実施したのかわからない状況は正直「次はやりたくないな」と内心思います。バカバカしいのでどうにかして次は逃げられないか?ということに工夫を重ねるわけです。これでは本末転倒ですよね。このように改善活動を行う目的が明確でないと、作業者は何のために努力しているのか理解できません。目標を設定し、その取り組みがどれほど重要で、その目標がどのように日々の作業に貢献するのかをしっかり伝えることが重要です。

理由2:やってもなんの反応もない

 改善をしろと言われてやってとします。でも実施しても、上司からなんの反応もなかったとします。改善を実行した側としては、「これはやっても、やらなくても変わらない仕事なんだな」と業務認識を改めます。これでは改善の継続は難しいですよね。そのため評価やフィードバックはとても重要な機能となります。やはり自分が実施した努力の結果は知りたくなるもので、しっかり伝われば改善活動を継続するパワーを提供できます。

理由3:コミュニケーションが足りない

 改善のアイデアや提案を共有するための定期的な話し合いが不足していると、作業者間でのコミュニケーションが低下し、改善活動が停滞する可能性があります。話し合いを通じて、改善の方向や進捗を共有し、連携を深めることが大切です。で、そもそも上司との対話がないと、作業者はどの部分が良くてどの部分が改善が必要なのかを把握できず、次なる改善の方向性がわからなくなり迷子になりやすくなります。そりゃそうですよね。

改善への評価の基本原則

 ではその改善への評価はどのように実施すればよいのでしょうか?その基本原則を整理していきましょう。

改善への評価を実施するための基本原則

 まずは以下の基本原則を守りながら評価体制を整備することを念頭に置いてください。

基本原則1:オープンなコミュニケーション

 作業者とは自由に対話ができる関係を保ちます。つまり改善に対する考え方やや意見を自由に議論したり共有できる環境を作ります。これは上司側から整えないと、絶対に自然に構築されたりはしませんから、管理者側の仕事であることを深く理解いただくことが大切です。

基本原則2:具体的かつ構造化されたフィードバック

 明確で具体的な評価体制を構築してフィードバックを提供します。どの範囲が改善され、それはどのような評価なのか?また、さらなる良い改善にするにはどのような考え方が必要か、助言・アドバイスを行います。相手が受入れやすい言葉選びが重要ですので、ここは訓練が必要ですね。

基本原則3:定期的かつ適時な評価

 改善が行われる度に評価を実施し、作業者が自身の次なるステップを把握しやすくします。また、状況に応じて適時に評価を行い、彼らがさらに飛躍するために必要な、フィードバックや意見交換の機会を設定しましょう。彼らの成長を手助けすることが大切です。

最も重要なのは具体的・明確な評価体制の整備

 具体的かつ明確な評価は、作業者にどの部分が良く、どの部分が改善が必要なのかを明示することです。明確な評価は、作業者が次の改善活動に向けて具体的な計画を立てる助けとなります。具体例を交えながら、どのように評価をしたのか、またさらに評価を上げるためには何が必要なのか、を理解することで、作業者は自分の貢献をより実感し、改善活動に向けた明確な方向性を持つことができます。

実施した改善活動の結果に対する評価の方法

 では実際に改善活動が行われた結果に対する評価する時に重視すべきポイントを2点、説明しておきましょう。

改善の効果の評価と共有

 改善活動の効果を評価する際には、具体的なデータや指標を基にして効果を明確にすることが重要です。例えば、時間の短縮、コストの削減、品質の向上などの指標を設定し、それに対する改善の影響を計測することが重要です。さらに、評価の結果をチーム全体で共有することで、どの改善活動が効果的であったのか、どのように改善活動が業務に影響を与えたのかを明確に理解することができます。

次の改善への取り組み意欲を促すコメントを記載

 評価はしても、それに対するコメントがない場合は効力は半減化します。実際に改善活動の効果を評価し共有することで、作業者は成功体験を共有し、次の改善活動に向けての意欲を高めることができるでしょう。しかし今回の改善活動で得られた知見を基に、新たな改善活動の提案や、さらなる改善活動の方向性を考えるきっかけを提供することがとても大切です。明確な評価と共有を通じて、作業者は連続的な改善のサイクルを維持し、組織全体の改善文化を形成することができます。

改善への評価におけるコミュニケーションノウハウ

 その一方でその改善評価の一連の動きには、上司と部下間における一定のコミュニケーションノウハウを蓄積していく必要があります。重視すべき点は大きく3つあります。

公正な評価軸の設定

 あの人は褒められたけど、自分は褒められない理由。これは作業者自身がどの方向に成長すべきか?を考えるに当たり、知りたくなる健全な興味です。これに答えられないようであれば、会社としてチームとして、不足している点と言えるでしょう。誰が評価しても同じ点数が出るような、評価表などを整備していくこともひとつのアイデアです。改廃を前提に検討ください。

聞くスキルの重要性

 もちろん皆さまもご理解しているとおり、コミュニケーションは常に改善活動の中心にあります。特に、改善を実施した人の改善への着想や考え方を適切に理解するために、質問するスキルは重要です。良い聞き手になることで、作業者の不安やアイデアを正確に把握してはじめて、それに対する適切な回答や指示を提供することができます。

改善の質を上げるコメントを返す

 改善活動の質を向上させるには、作業者に対して改善の目的とその効果を理解してもらうことが重要です。作業者が自分の提案がどのように作業プロセスやチームのパフォーマンスに影響を与えるのかを理解することで、彼らは次のステップで何を改善できるのかを考え、更なる改善提案を行う意欲を持つことができます。また、作業者が改善活動の結果を可視化し、それを評価しやすくすることで、連続的な改善活動を支援し、組織全体の改善文化を育てることができます。

評価事例: 改善活動への評価の考え方

 では具体的にどのように評価すべきでしょうか?あなたにご理解いただくために、そのイチ事例を紹介しましょう。

具体的な改善事例

 1人の作業者より以下にて『ライン横の作業場の整理整頓』とタイトルで5Sに関する改善の報告書が提出された事例を紹介しましょう。 By 工場の5S活動事例集 専門サイト:5S-CONECTより

【ビフォー】【アフター】

【改善者よりのコメント】

(なにが)

作業台の周りの不要なものが無くなり、

台車等の置き場ができ

(どうなった)

綺麗になった。

この改善事例に対する管理者コメント

 さてこのような改善事例の報告書に対して、管理者はどうコメントすることが適切でしょうか?もちろん、この改善が管理者として物足りなかったとしても、ちゃんと返すことが次なる改善を生むことをしっかり認識し直すようお願いします。

評価表による評価

 この職場に改善に対する評価表があれば、その評価表で評価してその結果をフィードバックしてあげてください。実際には職場によって評価すべき項目は違います。それは目指すゴールが違うからです。本当にスーパーのようにピカピカ職場を目指すのか、はたまた効率化できる仕組み化をどんどん進めて超合理的な職場をつくるのか、によって評価すべき項目が変わるはずです。まずは自職場の理想的な姿を評価表に変えて装備しておくことはとても重要なことです。

管理者コメント

 そして評価表があるなしに関わらず、管理者からのコメントは必ず返してあげてください。たとえば、以下のような内容が理想的です。

①感謝を伝える

 まず改善を進めたことに対して、職場を代表して感謝を伝えます。しっかり『ありがとうございます』と返していただければと思います。これは基本ですよね。

モノが溢れていた状態だったライン横を
きれいに片づけてくれた改善ですね!

まずは問題のある個所を見つけてくれたこと
そして時間をかけて整理・整頓してくれたことに
感謝したいとおもいます。

ありがとうございます。

②印象を伝える

 そして次に改善をした後の印象を伝えてください。すきっきりしたとか、キレイになったとか、合理化が進んだとか、改善したことが役立つものであることを伝えてください。これをみてはじめて、改善してよかったんだと正しく認識します。

とってもスッキリした印象になったかと思います。

問題がある箇所への対処はバッチリです。

③次に考えて欲しい方向を伝える

 そのうえで、さらに考えて欲しい方向性を伝えます。次なる改善ネタ、検討して欲しい方向など、ここで管理者として成長していただきたい内容を伝えてみてください。ここは本当に作業者との対話になります。たいへんだと思いますが、真のコミュニケーションを図ってください。

あとはこれを生み出さないための根本対策
つまりこれを維持できるか?という課題が残ってますね。

モノが溢れてしまった理由はどんなことでしょうか?
○ 置き場所が決まっていないのでここに置いた
○ 誰もが自分で判断するのでここでも良いことになる
○ ちょっと仮置きのつもりが、ずっと放置したままとなった
○ みんな置いているから自分が置いても怒られないだろう などなど
いろんな理由が考えられるかと思います。

そうやって全員の意見を集められたら
対策は可能になります

○ 置く場所を決める
○ 置く場所に『○○置き場』と表示をつける
○ 関係者全員に置き場所を決めたので守って欲しい旨を伝える

などなどが考えられます。
おそらく、ここまでやってみても同じ状況になるなら
また次なる対応策が検討できるようになっているはずですよね。

④新たな改善報告を楽しみにしていることを伝える

 最後に、あなたの次なる改善報告が楽しみに待っていることを、明らかに伝えてください。そのことによって『期待に応えたい』と考える方は必ず次なる改善を考えてくれるようになります。ここをうやむやにすると、都合よく捉える方を野放しにします。それは避けたいですよね。

ぜひこうやってルールをつくって
全員で素晴らしい職場づくりを進めてください

あなたの次なる素晴らしい改善報告をお待ちしています。

工場の5S活動事例集 専門サイト:5S-CONECTより

評価コメントの実施とその効果

 実際に実行された改善を題材にして、管理者は作業者に対し具体的な評価コメントを提供しました。①感謝と②印象を伝えて、③次に考えて欲しい方向を伝えながら、④新たな改善報告を楽しみに待っていることを伝える。このことによって、改善者は『よかった。次はこうやればいいんだ、待っていてくれるし頑張ろう』と前向きに捉え、さらに考え方のレベルを高めます。そう考えると、管理者そのものも勉強して次なるステップへ登らないと、ですね。

工場の5S活動事例集 専門サイト:5S-CONECT について

 こういった改善者への助言・アドバイスを、専門家が直接返すサイトを運営しています。閲覧はフリーですので、よければ参考にしてみてください。

工場の5S活動事例集 専門サイト:5S-CONECT

まとめ:作業者への効果的な改善評価の手法

 さて、これまでの内容を通じて、改善活動は組織全体の成長と作業者の満足度向上に不可欠であることをお話してまいりました。しかし、その成功は適切な評価とフィードバックに大きく依存しています。今、手を止めずに積極的な評価とフィードバックを提供することで、作業者のモチベーションを高め、継続的な改善活動を奨励することができます。立ち止まらず、今すぐ行動を起こし、改善評価のプロセスを実装して、組織全体の生産性と効率を向上させていきましょう!

 もし、確認したいことがあれば以下まで気軽にZOOMでの無料相談をお申込みいただければと思います。

 滋賀県よろず支援拠点> https://www.shigaplaza.or.jp/yorozu/contact

※ 西本を指名すれば、全国どこからでも申込み可能です。

 それでは今日はここまでです。今後とも宜しくお付き合い下さい☆
 長文乱文を最後まで読んでくださりいつもありがとうございます♪
 すべては御社の発展のために、すべてはあなたの笑顔のために

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この記事を書いた人

 大手総合電機メーカーで20年間経験を積んで平成22年に独立。10年間で600社を超える中小企業支援、そして自らも小売業を立ち上げて業績を安定させた実績を持つ超現場主義者。小さなチームで短期的な経営課題を解決しながら、中長期的な人材育成を進める「プロジェクト型課題解決(小集団活動)」の推進支援が支持を集めている。

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