中小製造業の生産性向上|付加価値と工数でわかる現場改善3つの進め方を現場目線で解説!

中小製造業の現場で工程改善を話し合う作業者

「毎日これだけ一生懸命つくっているのに、どうして会社は苦しいままなんだろう」
「生産性を上げろと言われるけれど、これ以上どうやって早く動けというんだ」

そんなモヤモヤを抱えながら、今日も機械の音の中で段取りをし、品質を確かめ、納期に間に合わせている方は少なくないはずです。まずお伝えしたいのは、皆さんの動きが遅いから苦しいのではない、ということです。現場はもう十分に頑張っているはずです

原材料高、電気代の上昇、労務費の増加、そして採用難。以前と同じ売り方、同じ設備、同じ工程のままでは、同じ数量をつくっても残るお金が細くなりやすい時代です。だからこそ必要なのは「ただ手を速く動かす競争」なんかではありません。

生産性向上の本当の狙いは、現場を急かすことではなく、限られた時間から、より大きな価値を生み出せる「つくり方」に変えることです。言い換えれば、自分たちの給料と職場を守るための知恵の戦いです。

この記事では、少し身構えてしまう「労働生産性」「付加価値」「労働投入量」という言葉を、現場で使える言葉にほどきます。さらに、改善の方向を3つに分け、どこから手をつければよいかを具体例と比較表で整理します。

難しい経済の話を覚える必要はありません。まずは「何を増やすのか」「何を減らすのか」の二つが見えれば、改善会議の景色は変わります。

ぜひ今回も読み終えるまでのお時間、しばらくお付き合いくださいませ。

目次

「これ以上、早く作れ?品質を無視しろって言うのか?」現場が抱える違和感と直面する3つの現実

「生産性向上」と聞いた瞬間、現場に緊張が走ることがあります。タクトを縮めろ、休まず動け、人数を減らせ。そんな話に聞こえるからです。しかし、現代の製造現場における問題の中心は「人の頑張り」ではありません。まず、工場を取り巻く3つの現実を落ち着いて見てみましょう。

現実①:材料費・電気代・人件費の「三重苦」!作っても作っても利益が残らないカラクリ

売上が同じでも、材料、電気、外注、物流などの費用が上がれば、会社に残るものは減ります。働く人の生活を守るには賃上げも必要です。ところが、その増加分を販売価格へ十分に反映できなければ、「忙しいのに利益が薄い」という状態になります。

たとえば、材料を600円で仕入れ、加工して1,000円で販売する仕事を考えてみます。ここでは話を単純にするため、材料以外の費用をいったん横に置きます。材料が600円なら、販売までに自社が加えた差は400円です。材料が700円に上がり、売値を1,000円のままにすれば、その差は300円に縮みます。

数量を増やしても、一個当たりに残る幅が細ければ、現場の負担ほどには利益が増えません。しかも急いだ結果、不良や手戻り、特急運送が増えれば、さらに価値が外へ漏れていきます。「作っても作っても楽にならない」のは、努力不足ではなく構造の問題なのです。

中小企業庁も、物価高と人手不足の中で賃上げ原資を確保するには、価格転嫁や付加価値向上が重要だと示しています。だから現場改善と価格の話は別々ではありません。品質、納期、難しい加工への対応力を記録することは、営業や経営が価格交渉をする際の大切な材料になります。

現実②:迫り来る2050年問題!「10人の仕事を7人で回す」人手不足はもう待ったなし

「10人の仕事を7人で」という言葉は、ただ不安をあおるためのものではありません。国立社会保障・人口問題研究所の推計を用いた厚生労働省資料では、15~64歳の人口は2020年の約7,509万人から、2050年には約5,540万人になると見込まれています。比率にすると約73.8%です。

つまり厳密には、「10人が7.4人になる規模」の変化を、現場でイメージしやすく丸めた表現です。もちろん、日本全体の人口推計が、そのまま一つの工場の人員になるわけではありません。それでも、採用すれば欠員が埋まる前提では計画しにくくなる方向は、すでに多くの職場が感じているのではないでしょうか。

ここで大切なのは、7人に10人分の汗をかかせることではありません。欠員が出ても破綻しない工程にする、ベテランさんしか分からない調整を見える形にする、運搬や探し物に人を縛りつけない。省人化とは、人を追い出す話ではなく、人にしかできない判断や技術へ時間を戻す話です。

現実③:気合いと根性はもう限界!「汗を流す量」ではなく「つくり方の仕組み」を変える時代へ

残業で吸収する、休憩をずらす、できる人に仕事を集める。緊急時には必要な対応でも、毎日の標準になれば、誰かが休んだ瞬間に崩れます。品質事故の芽も増え、若い人へ仕事を渡す余裕もなくなります。

見るべきは、人の速さより「止まらせているもの」です。材料待ち、図面の確認待ち、工具探し、設備の微停止、前工程からのまとめ運搬、検査後のやり直し。本人が一生懸命でも、こうした時間は価値を生みません。

ですから、生産性向上の第一声は「もっと速く」ではなく、「何が仕事を止めている?」でありたいものです。人を責めず、工程、置き方、情報、設備条件という仕組みに問いを向ける。そこからなら、現場のみんなが同じ側に立って改善を始められます。

参考:中小企業庁 2025年版中小企業白書厚生労働省 日本の将来人口推計

そもそも「労働生産性」ってなに?現場目線で日本一わかりやすく解き明かす

言葉は難しそうでも、考え方は驚くほど単純です。「入れた時間や人数に対して、どれだけ価値を生み出せたか」。まずはこの一文だけをつかんでください。

小難しい話は抜き!計算式はたったの「付加価値(分子)÷ 労働投入量(分母)」

労働生産性を付加価値と人数・時間の関係で示した図

労働生産性は、次の形で表せます。

労働生産性 = 付加価値額 ÷ 労働投入量

時間当たりで見るなら、分母は全員の作業時間の合計です。

時間当たり労働生産性 = 付加価値額 ÷ 総労働時間

たとえば5人が8時間働けば、労働投入量は40人時です。その日に生み出した付加価値額が20万円なら、時間当たりの労働生産性は5,000円/人時になります。ここでは説明のために単純化していますが、改善前後を同じ考え方で比べれば、変化を見る物差しになります。

一人当たりで見る方法もあります。ただし、人数が同じでも、一方の職場は残業が多く、もう一方は定時で終わるなら、負担は同じではありません。現場改善では「一人当たり」だけでなく「一時間当たり」も見ると、残業に隠れた問題が見えやすくなります。

【イメージ図で納得】「付加価値」とは、仕入れた材料に“自社の技で付け足した価値”のこと

付加価値は売上そのものではありません。仕入れた材料や外部から買ったものに、自社の加工、品質保証、短納期対応、設計提案、安定供給などを重ねて、お客さまに渡せる価値を大きくした部分です。

仕入れた材料や外注品に自社の技術と対応力を加えて付加価値を生み出す流れ

この間に自社が付けて加えた価値が、付加価値です

会計上の付加価値額には複数の計算方法があります。簡便な引き算で把握する方法もあれば、人件費、減価償却費、賃借料などを積み上げる方法もあります。正確な全社数値は経理と計算範囲を合わせる必要があります。

一方、現場が日々の改善を考えるときは、「良品として通ったか」「やり直しで価値を失っていないか」「短納期や難加工という強みを記録できたか」と見ればよいのです。付加価値を難しい会計用語のまま抱えず、自分たちが付けて加えている価値へと、置き換えて捉え直してみてください。

「労働投入量」とは、現場の仲間たちが流した“時間と人数(工数)”のこと

労働投入量は、ざっくり言えば人数×時間です。3人が2時間なら6人時、2人が3時間でも6人時です。製造現場では工数という言葉のほうがなじみ深いかもしれません。

ここで気をつけたいのは、機械が加工している時間だけを数えないことです。材料を取りに行く、図面を探す、検査結果を待つ、段取りを戻す、帳票へ二重入力する。仕事のために人が拘束されているなら、その時間も分母に入っています。

だから工数を減らすとは、休みを削ることではありません。価値を生まない待ち、探す、運ぶ、やり直すを減らし、同じ時間の中で必要な仕事へ集中できるようにすることです。

つまり「現場が注ぎ込んだ時間に対して、どれだけ大きな価値を生み出せたか」の勝負!

付加価値が分子、労働投入量が分母。この形が分かると、生産性を上げる方法は整理できます。

  1. 分子の付加価値を増やす
  2. 分母の労働投入量を減らす
  3. 分子を増やしながら分母を減らす

ここで「生産数量だけ」を追いかけないことが大切です。100個から110個に増えても、不良、残業、特急運送が増え、付加価値が残らなければ、生産性が上がったとは言い切れません。QCD、つまり品質・コスト・納期を一緒に見て、良品として価値を届けられたかを確かめましょう。

参考:日本生産性本部 生産性とは中小企業庁 2026年版中小企業白書

会社が生き残る道は3つしかない!労働生産性を引き上げる「実践の選択肢」

式が分かれば、打ち手は迷路ではなくなります。分子を大きくするか、分母を小さくするか、その両方を行うか。工場の事情に合わせて順番を選べばよいのです。

労働生産性を上げる3つの改善パターンを比較した図

選択肢①:【攻めの改善】同じ人数・同じ時間で「生み出す付加価値」を増やす

一つ目は、投入する人数と時間を大きく変えず、価値を増やす方法です。単に生産個数を増やすだけではありません。良品率を上げる、短納期でも安定して納める、他社では難しい精度へ対応する、設計段階で加工しやすい形を提案する。こうした仕事は、お客さまが自社を選ぶ理由になります。

たとえば、5人×8時間の40人時はそのままで、手戻りを減らし、良品として渡せる付加価値を20万円から22万円へ増やせたとします。時間当たり労働生産性は5,000円/人時から5,500円/人時へ上がります。

現場が価格を決めるわけではありません。それでも、不良率、納期遵守、緊急対応の回数、加工できる精度範囲といった記録は、営業が「なぜこの価格なのか」を説明する土台です。価格転嫁をお願いだけで終わらせず、価値の証拠を渡す。これは現場だからこそできる攻めです。

選択肢②:【守りの改善】同じ付加価値を「もっと少ない人数・短い時間」でつくる

二つ目は、同じ価値をより少ない工数で届ける方法です。先ほどの20万円の付加価値を、40人時ではなく36人時で生み出せれば、時間当たり労働生産性は約5,556円/人時になります。

ここで「人数を減らす」とだけ受け取らないでください。実際の出発点は、段取り待ちを減らす、工具の定位置を決める、検査票の転記をなくす、材料を使う場所の近くへ置く、治具で位置決めの迷いをなくす、といったことです。

空いた時間は、点検、改善、技能の共有、新しい仕事の立ち上げに回せます。欠員が出たときの応援にも余裕が生まれます。人手不足の時代の守りとは、少ない人数を疲れさせることではなく、仕事が人を振り回さない状態をつくることです。

選択肢③:【最強の進化】付加価値を高めながら、徹底的に現場のムダ時間を削ぎ落とす

三つ目は、分子を増やし、分母も減らす方法です。40人時で20万円だった工程を、36人時で22万円へ変えれば、5,000円/人時だった値は約6,111円/人時になります。

ただし、最初から二つを同時に追いすぎると、目的がぼやけます。まずボトルネックを一つ決め、「今月は段取り待ちを減らす」「次は良品率を安定させる」と順番に進めるほうが、現場では動きやすいでしょう。

注意したいのは、数字だけをよく見せる変更です。必要な検査を省く、点検を後回しにする、休憩を削る。これらは分母が小さく見えても、後で故障、不良、離職という大きな損失を招きます。QCDと安全を崩したら、それは改善ではありません

選ばなければ自然淘汰される?「他社が進化して自社が立ち止まる」ことの本当の怖さ

「自然淘汰」という言葉で現場を怖がらせても、よい改善は生まれません。本当に怖いのは、変化がないことより、問題が見えないまま固定されることです。

他社が段取り時間を安定させれば、短納期の相談を受けやすくなります。技能を標準化すれば、急な欠員にも対応しやすくなります。省力化投資を重ねれば、人は難しい判断へ集中できます。その差は一日では小さくても、数年で受注できる仕事や働きやすさの差になります。

だから「全部変えなければ」と構える必要はありません。今日の一工程について、分子を増やしたいのか、分母を減らしたいのかを決める。それだけで、改善案を選ぶ基準が生まれます。

【具体例で見る】現場の進化は難しくない!明日から実践できる2つのアプローチ

ここからは、式を作業台の高さまで下ろしてみましょう。大きな投資の話だけではありません。いま目の前にある不良、段取り、歩行、待ち時間も、生産性を動かす立派な入口です。

アプローチ1:付加価値を上げる現場の工夫(不良・手戻りゼロ、短納期対応、高難易度加工への挑戦)

「不良・手戻りゼロ」は目標として大切ですが、いきなりゼロを約束するのではなく、まず発生地点と原因をつかみます。最終検査で見つかった不良を数えるだけでなく、どの工程で異常の兆しが出ていたかを振り返ってみてください。

具体的には、次のような工夫があります。

  • 初品確認の条件と合否を写真や限度見本でそろえる
  • 加工条件の変更点を残し、次の人が同じ迷いを繰り返さないようにする
  • 手戻りの件数だけでなく、失った時間と材料も記録する
  • 短納期品の特急対応を「頑張った」で終わらせず、成立条件を標準にする
  • 難加工で必要だった工具、治具、測定方法を再利用できる形にする

お客さまにとっての価値は、加工品の形だけではありません。「安心して任せられる」「予定どおり次工程へ流せる」「設計の相談ができる」も価値です。QCDの実績を営業と共有すれば、価格転嫁やより難しい仕事の相談へつながる材料になります。

ただし、高難易度加工へ挑戦するなら、設備能力、測定能力、安全、技能の再現性を確かめます。一人の勘だけに依存したまま受注を増やすと、その人が休めなくなります。技を奪うのではなく、判断のポイントを言葉や見本にして仲間へ渡すことが、付加価値を継続させます。

アプローチ2:労働投入量を減らす現場の工夫(設備の刷新、からくり改善、段取り替えの半減、歩行ロスの撲滅)

工数を減らすときは、作業者の手だけをストップウォッチで追わないでください。工程全体を「加工している」「運んでいる」「探している」「待っている」「やり直している」に分けると、本人の努力では消せない時間が見えてきます。

低コストで試しやすい順に考えると、こんな流れです。

  1. 置き場所と数量を決め、探す時間をなくす
  2. 使用順に工具や部品を並べ、取り違えを防ぐ
  3. 外段取りにできる準備を、設備停止前に済ませる
  4. 治具やストッパーで、位置決めと調整のばらつきを減らす
  5. 重力、ばね、滑車などを使うからくりで、持つ・戻す動作を軽くする
  6. 設備更新や自動化は、残ったボトルネックに絞って検討する

段取り替えを半減できるか、歩行ロスを撲滅できるかは、現状によって違います。最初から効果を約束せず、交換開始から良品一個目までの時間、歩数、応援人数を測り、試した後に同じ方法で比べます。

設備刷新も「新しいから速い」だけで決めないことです。加工速度が上がっても、前後工程が追いつかない、検査待ちが増える、保全できる人がいない、品種切替に弱いなら、ライン全体の生産性は期待ほど上がりません。導入前に、どの時間を何分減らすのか、品質と納期にどう効くのかを言葉にしましょう。

【徹底比較】「付加価値アップ型」vs「労働投入量カット型」どっちから始める?

どちらが正解かは、現場の詰まり方で変わります。次の表で、いま困っていることに近い側を見てください。

比較する点付加価値アップ型労働投入量カット型
主な狙い良品、信頼、対応力を増やし、粗利を伸ばす待ち・運搬・探索・手戻りを減らし、残業と負担を抑える
現場の主な動き歩留まり向上、不良流出防止、短納期の再現、高難易度加工定位置化、治具化、外段取り、からくり、自動化、設備更新
得られる可能性顧客の信頼、受注機会、価格交渉の根拠定時で終えやすい、欠員時の余裕、増産余力
向く状況受注はあるが不良・手戻りで良品が増えない、強みを価格へ反映できない欠員、残業、段取り待ち、歩行や運搬が常態化している
注意点売上だけでなく外部購入費や追加工数も見る必要な検査、保全、休憩を削らない

バックオーダーが多い現場でも、まずボトルネックが不良なのか能力不足なのかを見ます。人手不足の現場でも、付加価値の低い仕事をただ速くするだけでは苦しさが残ります。迷ったら、効果が一番大きそうな案ではなく、「一週間で試し、数字で確かめられる案」から選んでみてください。

現場の中心になって動く人・職人が今日から始める「生産性改革」の3ステップ

立派な改善計画をつくっても、日常が忙しすぎて動けないことがあります。そこで、現状を知る、方針を決める、小さく試すの3段階に絞ります。紙一枚からでも始められます。

現場の生産性改革を進める3ステップの図

ステップ1:現状を知る!自分たちのラインの「作業時間」と「生み出している価値」を可視化する

まず一つの製品、一つの工程、一つの時間帯を選びます。工場全体を一度に測ろうとすると、記録だけで疲れてしまいます。

最低限、次の項目を記録してみましょう。

  • 良品数と不良・手戻り数
  • 作業した人数と開始・終了時刻
  • 段取り開始から良品一個目までの時間
  • 設備が止まった時刻、時間、理由
  • 待ち、探す、運ぶ、やり直すに使った時間
  • 特急運送や追加材料など、予定外に発生したもの

付加価値額を現場だけで正確に計算しにくい場合は、経理や営業と範囲を合わせます。それまでは良品数、手戻り時間、材料廃棄、納期遵守などの代替指標を使って構いません。ただし、良品数を付加価値額そのものと思い込まず、最終的には金額とのつながりを確認します。

可視化の目的は、誰が遅いかを探すことではありません仕事を止める仕組みを見つけることです。記録を評価に使う前に、「改善のために使い、個人を責めない」とみんなで確認しておくと、本当の困りごとが出やすくなります。

ステップ2:方針を決める!「価値を増やす」か「時間を減らす」か、チームの合い言葉を統一する

数字が見えたら、今月の狙いを一つ決めます。「生産性を上げる」だけでは広すぎます。次のように、分子か分母へつながる言葉にしましょう。

  • 分子側:「初品不良を減らし、良品として渡せる数を増やす」
  • 分子側:「短納期品の成立条件を見える化し、再現できるようにする」
  • 分母側:「工具探しをなくし、段取り中の停止を減らす」
  • 分母側:「検査結果待ちの発生場所と回数を減らす」

目標にはQCDと安全のガードレールを付けます。「段取りを短くする。ただし初品確認は省かない」「歩行を減らす。ただし通路と避難経路はふさがない」といった具合です。

また、現場だけで完結しない問題は、相手部署と一緒に扱います。図面の承認待ちなら設計、材料の小分け納入なら購買、価格転嫁なら営業と経営です。現場の問題に見えても、原因が情報や発注条件にあることは珍しくありません。

ステップ3:小さく試す!設備をガラリと変える前に、足元の「10秒のムダ取り」から始める

10秒は小さく見えます。しかし、一日に何十回も繰り返す作業なら、積み上がります。大事なのは「10秒削減した」と先に決めることではなく、どの動きがなぜ必要かを観察することです。

試すときは、次の型が使えます。

  1. 対象を一つ決める
  2. 改善前を同じ条件で数回測る
  3. 仮説を一つだけ試す
  4. 品質、安全、時間、作業者の負担を確認する
  5. よければ仮標準にし、合わなければ戻す
  6. 一週間後に、続いているかを確認する

たとえば、よく使うレンチを設備脇へ置くとします。移動時間が減っても、異物混入や取り違えの危険が増えるなら場所を見直します。改善は置いた瞬間ではなく、安全に使われ続けて初めて定着です。

設備投資を否定する必要もありません。小さな改善で原因を絞った後なら、「この設備でどのボトルネックを解消するのか」が明確になります。投資効果も説明しやすくなり、導入後に使われない設備になる危険を減らせます。

最後に、改善前後は同じ物差しで比べます。短くなった時間だけでなく、良品率、停止、疲労感、残業、納期への影響も見てください。数値と現場の声がそろえば、次の改善へ進む自信になります。

現場からよく出る「生産性向上」の素朴な疑問(FAQ)

生産性の話は、働き方や雇用に関わるため、不安が出て当然です。言いにくい疑問ほど、置き去りにせず答えをそろえておきましょう。

Q1. 生産性を上げて作業時間を減らしたら、仕事がなくなって首切り(リストラ)になりませんか?

生産性向上そのものは、リストラを意味しません。人員をどう扱うかは会社の方針であり、計算式だけから決まるものではないため、「絶対に雇用へ影響しない」と一律に断言することもできません。

だからこそ、取り組みを始める前に目的を共有する必要があります。人手不足や欠員が起きても現場をパンクさせない、残業を減らす、点検や技能共有へ時間を回す、新しい受注へ対応する。こうした使い道まで示せば、「時間を減らしたら自分が不要になる」という不安を小さくできます。

2050年には15~64歳人口が2020年より大きく減る推計があります。これからの改善は、いまいる仲間を無理に減らすためではなく、採りたくても採れないときに仕事と雇用を守る備えとして考えるのが現実的です。

Q2. 「付加価値を上げろ」と言われても、製品の単価を決めるのは営業や顧客じゃないですか?

そのとおりです。最終的な価格交渉は主に経営や営業の仕事であり、現場だけへ責任を押しつけるものではありません。

ただし、営業が価格を説明する材料は現場にあります。不良をどこまで抑えたか、納期をどれだけ安定させたか、緊急対応を成立させるために何が必要か、他社が難しい加工をどう再現しているか。これらを数字と条件で残せば、単なる「値上げのお願い」ではなく、提供価値の説明になります。

同時に、材料費や労務費がどれだけ上がったかは、経営・購買・経理から現場へ共有してもらいましょう。現場の工夫だけで吸収し続けると、必要な保全や人材への投資まで削られます。価格転嫁と工程改善は、どちらか一方ではなく両輪です。

Q3. 高価な最新設備を導入する資金がない中小工場は、どうやって生産性を上げればいいですか?

設備がなくても始められることはあります。工具の定位置化、材料の置き方、外段取り、治具による位置決め、チェック表の見直し、二重入力の解消、異常時の連絡方法などです。まず、探す・待つ・運ぶ・やり直す時間を測ってください。

ただし、「お金をかけない改善だけで一律に何割上がる」とは言えません。効果は製品、設備、ロット、現状のムダによって違います。改善前後を同じ条件で測り、事実で判断しましょう。

小さな工夫で解消できないボトルネックが残ったら、そのとき設備刷新や自動化を検討します。どの時間を減らしたいか、必要な能力は何か、保全と操作を誰が担うかが見えていれば、限られた資金を効果の大きい場所へ集中できます。

まとめ:生産性を上げることは、現場で汗を流す「自分たちの未来」を守ること

労働生産性は、付加価値額を労働投入量で割ったものです。現場の言葉にすれば、「みんなが注ぎ込んだ時間に対して、どれだけ大きな価値を届けられたか」を見る物差しです。

生産性を上げる道は、次の3つに整理できます。

  • 同じ労力で、良品、信頼、対応力などの付加価値を増やす
  • 同じ価値を、より少ない待ち・運搬・探索・手戻りで届ける
  • 付加価値を増やしながら、労働投入量も減らす

どの道でも、「もっと速く動け」が出発点ではありません。人を止めている工程、情報、置き方、設備条件を見つけ、仕組みを変えることが出発点です。品質、コスト、納期、安全のどれかを犠牲にして数字だけをよく見せても、長くは続きません。

まず明日、一つの工程で問いかけてみてください。

「この一時間で、価値を増やせたのはどこだろう?」
「待つ、探す、運ぶ、やり直す時間はどこにあっただろう?」

答えが一つ見つかれば、十分な前進です。10秒のムダ取りでも、初品確認の見える化でも構いません。改善前を測り、小さく試し、QCDと負担を確かめる。その積み重ねが、10人の仕事を残った7人へ押しつけるのではなく、少ない人数でも無理なく価値を届けられる現場をつくります。

生産性向上は、現場の汗を否定する言葉ではありません。その汗を、探し物や手戻りで消耗させず、本当に価値を生む仕事へ戻すための考え方です。自分たちの給料、働きやすさ、技術、そして次の世代へ渡せる職場を守るために、まず一か所から一緒に始めてみませんか。

自社のボトルネックをどう見つけるか、付加価値と工数のどちらから手をつけるか迷ったら、SEIZO-BUの【お問合せフォーム】=製造業なんでも相談室へご相談ください。現場の状況を伺いながら、無理なく始められる改善の一歩を一緒に考えます。

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この記事を書いた人

 大手総合電機メーカーで20年間経験を積んで平成22年に独立。16年間で900社を超える中小企業支援、そして自らも小売業を立ち上げて業績を安定させた実績を持つ超現場主義者。小さなチームで短期的な経営課題を解決しながら、中長期的な人材育成を進める「プロジェクト型課題解決(小集団活動)」の推進支援が支持を集めている。

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