2.日本的品質管理のいいところ(2)日本的品質管理の考察
2.日本的品質管理のいいところ(2)日本的品質管理の考察

「日本的品質管理の生い立ち」について時代ごとの品質管理体制の変化を前回は解説しました。

今回は、その歴史の中から日本的品質管理が教えてくれることを少しお伝えしていきたいと思います。このお話は実際にある勉強会でお会いした大手電機メーカーの元品質保証部長の方とのやりとりをもとにした内容です。ご参考いただければ幸いです。

日本のQCの考え方を応用してみて見えること

今回、コロナの影響で1年延びましたが「2020年東京オリンピック競技大会」が開催されました。世界中の選手、スタッフの方から多くの感動をいただきました。

また、開催期間を通して改めて世界が身近に感じ取れる機会にもなりました。今日は、その「感じ取りかた」について考えてみたいと思います。

私たちは、グループ・集団を特徴づけて感じ取り「まとめて話をしてしまう」ことがあります。国籍、性別、学歴、出身地域や宗教、民族までいろいろなグループがあります。例えば「中国人は」「男性だから」「官僚出身で賢い」「この人は中卒だから」「関西人は」と我々は、属する集団で人を判断しがちです。それが問題を大きくすることもあります。場合によっては、社会問題へと発展することもあります。人は、「感じ取りかた」によって「判断」していることが多いことに気づきます。

このようなことも日本のQCの考え方を多くの人が理解することで問題を小さくできる可能性を秘めているのです。それはどういうことか?わかりやすく説明していきましょう。

日本的品質管理は、何を伝えたか

1980年代、日本のものづくりが優れていると世界中で評判になり、多くの外国人が日本に勉強に来ました。当時は、日本製品が世界を席巻していたころです。ちょうど私も1983年に企業に勤め始めています。その時は、外国との取引も盛んになってきており、貿易を専門にする職種も生まれてきていたように記憶しています。今から考えますと日本企業が成長していた時代だったんだと振り返って感じます。当時は日本的品質管理が根付いていた背景もあり、デミング賞に挑戦する企業が多かった時期でもあります。

その日本的品質管理に貢献された3名の方がいらっしゃいます。石川馨氏、西堀栄三郎氏、唐津一氏らです。彼らは、品質管理を日本へ提唱し、広めてきました。そんな3名を少しご紹介します。

石川 馨氏

石川馨氏は、品質管理・サンプリングそして工業標準化など多岐に渡って取り組まれています。 中でも日本的品質管理の構築、 QCサークル活動、管理図法などでは創造的な仕事を進められました。 これらの活動は、国内だけにとどまらず広く、世界各国に及び大きな足跡を残しています。日本の品質管理の発展史そのものだといっても過言ではないと思います。

西堀 榮三郎氏

西堀榮三郎氏は、日本の登山家、無機化学者、技術者であり、第一次南極越冬隊の隊長を務めました。統計的品質管理手法を日本の産業界に持ち込み、デミング賞や電電公社総裁賞を受賞し、戦後日本の飛躍的な工業発展の礎を築きました。不良品をつくることをやめる方法を提唱した方です。滋賀県東近江市には「西堀榮三郎記念探検の殿堂」があります。

唐津 一氏

唐津一氏は、松下電器産業(現パナソニック)創業者の故松下幸之助氏に誘われ、61年に日本電信電話公社(現NTT)から松下通信工業に移籍、78年から常務を務め、86年から東海大教授。QC(品質管理)やものづくりに関する著作を多く残しています。

先駆者たち3名から見た日本的品質管理

第二次大戦後、日本のモノづくりの非弱さが問題とされ、アメリカから統計的品質管理の指導を受けたのが日本の品質管理の始まりです。指導を受けた先駆者達が日本的品質管理(全員参加の品質管理)へと発展させました。そのための工夫があのQCサークルであり、QC7つ道具です。西堀栄三郎氏は全員参加のためにモチベーションの大切さを訴え、唐津一氏は、バラツキ改善を主張しています。唐津一氏は、当時の日本製品を、欧米に比べ、バラツキが小さく工程能力Cpが高いため、故障も少ないと評価していました。彼は、規格を満足すればよいという考え方ではなく、中心を極めるという日本人の気質がよい品質を生み出していると考察したのです。

品質管理の先駆者たちは、統計的品質管理の概念と全く反対の方向、つまり規格で切るのではなく改善を進めて、より良い製品をつくることのできる実力強化を提唱してきたのです。

 

実際現場で起きていたこと

トヨタの指導を受けて標準作業組み合わせ表を使った改善活動に取り組んだことがあります。

顧客から要求された製品を1つ造るのに必要となる時間に合わせて作業の流れを作ります。例えば、1個の製品についてある加工が完了する時間を計ってみます。当然、毎回時間はばらつきます。そのため、ばらついたその原因を追究し、そのバラツキを改善していきます。

これを繰り返す内にばらつきは小さくなり、平均の時間も短くなっていきます。愚直な活動ですが、効果のある要因を見つけるのではなく、1つひとつのバラツキ、例外事項、異常に対して、効果は小さくても地道に潰していくことが結局は急がば回れで効果に結び付いていくのです。

唐津一氏は、平均で物事を判断するなといっています。ひとつ一つのバラツキの原因を、事実を確認して潰していくことが大切といっています。これが、日本的品質管理の原点であったと思います。このアプローチでは、事実把握がその解決のキーとなります。

作業設計は、人によるばらつきを抑えるために作業者を機械のように扱うとして批判的な意見を言う人は多いようです。しかし、本質は、作業設計により人のバラツキを抑えることではなく、設計した後の作業について人が行う改善を愚直に続けることにあります。一つひとつのバラツキの改善は、事実を掴めば、誰でもできます。改善活動に現場の誰もが参加して積極的に進めていける環境づくりを行うことに意味があります。ここまでくるとバラツキ改善の考え方を忠実に進めていると言えるのです。改善活動はスポーツと同じで達成感を味わえる魅力があります。全員参加の改善は、人を大切にする取り組みでもあると思っています。

日本のQCの考え方を応用すると

集団の色で判断するのではなく、一つ一つのデータを見て判断していく。この考え方は、組織をうまくマネージメントしていく上でも大切なことであると考えています。

一人ひとり、個性を持っています。つまり、世界に一つだけの花です。集団の色で判断するのではなく、その人の人となりをよく判断して接していくことが大切ではないかと思います。会社組織においても、社会の中でも、一人ひとりの個性をよく把握して接するようにすれば、組織の、世界の人権問題は縮小化されていくのではないかと期待しています。

このように世の中で起きている問題を解決するためには、ひとつ一つのバラツキの原因を、事実を確認して潰していく地道な活動が必要であることが品質管理において重要な考え方です。

一山いくらのリンゴではなくて、籠の中入っているリンゴはどのような顔をしているのか確認したうえで次のステップに進めることの大切さを品質管理は教えてくれていると私は考えています。

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