中小企業診断士の吉岡です。
QC活動がうまくいかない、思うような成果が出ない、従業員が積極的に参加してくれない。
このようなお悩みを抱える企業様を支援先でも良く目にします。
その背景には、QC活動をどのようなものとして位置づけるのか。
それが会社や現場にとってどのような意味を持つのかの理解が
曖昧であることが原因であるケースがほとんどです。
特に現場リーダーは、経営層からは改善の成果を求められ、
現場には活動の働きかけを求めるという厳しい立場です。
その種板挟みの渦中で、結果として、QC活動が
負担になってしまうのも、ある種当然でしょう。
本記事では、QC活動がなぜ続かない/機能しないのかを整理し、
現場のリーダーがどのように対処していくべきであるのか、検討していきます。
QC活動の本来の定義とあるべき姿の整理
まずは、QC活動が上手くいかない理由を整理する前に、QC活動本来の活動とあるべき姿を
整理していきます。
理想の姿を最初に定義しておくことで、その理想との差分を把握できるようにします。
QC活動の本来の定義
QC活動は、一言でいうと、製造品質を良くするための取り組み です。
ただし、ここで言う品質とは、不良を減らすことや検査を強化することだけを意味しません。
製造現場では、求められている品質を、日々の仕事として安定して出し続ける必要があります。
その要求品質を、無理なく、安定して守り続けられる状態を作る。
そしてそのために、運用を変えるべき箇所があるならば見直しを行う。
この一連の流れを現場の仕事として回していくための
枠組みこそがQC活動の本来の役割です。
QC活動が目指すべき姿
QC活動は本来、製造品質が改善され、現場の問題も改善されていくことがゴールです。
また、そのゴールの達成によって、経営上にも大きなメリットがあることは言うまでもありません。
そして、そのゴールを達成するために目指すべき姿は、
現場の問題に対して誰かが声を上げ、周囲はそれを受け止め、
自然と「どう直すか」の話が始まる状態です。
製造業に限らずですが、現場の違和感や問題は現場が一番わかっています。
それを問題として指摘出来て、改善が自然に行われていく空気があれば、
QC活動が形骸化することはないでしょう。
QC活動が目指すべき姿とは、
そうした行動を支える現場の空気そのものです。
QC活動の日常業務化
先ほどの空気感が定着している現場では、QC活動が半ば日常業務化されていて
それ自体が通常業務の一環として扱われています。
改善活動やそのために業務時間の調整を行うことが
仕事の一部として自然に受け止められています。
誰かが改善に取り組んでいて、そのために時間を割いていても
周囲が違和感を覚えたり、「本来の仕事はどうしたのか」と
問われたりすることもありません。
この状態では、改善に向けた話し合いや試行に時間を割くことが、
暗黙の了解として織り込まれています。
また、QC活動が日常業務化している現場では、
改善への取り組みが仕事を前に進めるために必要な行為として、
評価の枠組みの中に自然に収まっています。
会社や現場のために努力をしていることが、
評価の中に組み込まれる仕組みが出来ています。
いわゆる、頑張り損にはならないということです。
なぜQC活動は現場で止まってしまうのか
第二章で整理したように、QC活動が機能している現場には、
品質を安定して守るという目的が共有され、改善が業務として扱われ、
現場の声が自然に次の行動につながっていく状態があります。
この章では、その理想像に対して、多くの現場で
起きている事態を、構造として整理します。
改善から「自主性」が失われてしまう
QC活動がうまく機能しない現場の多くは、
改善から自主性が失われてしまっています。
テーマや進め方が上から決まり、現場は実行役として関わるだけ。
この構図では、一見すると指示が明確で進めやすいように見えますが、
その流れでは、QC活動は「自分たちの仕事を良くする取り組み」ではなく、
「やらされ仕事」として受け取られます。
第一章で整理した理想の状態では、現場の違和感が自然に共有され、
「どう直すか」の話が現場から始まります。
当然、やらされる仕事と、自主的に取り組む活動ではモチベーションに大きな差が出ます。
また、QC活動の目的が、現場にきちんと共有されないまま始まってしまうことすらあります。
方針や指示としては説明されていても、
「なぜ、それを解決しないといけないのか」「それで現場の何が変わるのか」が語られないケースです。
これまでの経験上、そのような取り組みは、
最初から形骸化することが約束されているとすら断言できます。
本来、QC活動によって得られる効果は経営だけでなく現場にも大きなメリットをもたらします。
それを発信し、浸透させることができない間は、現場の自主性は醸成されません。
現場視点で価値のある取り組みとすることができない
改善が現場の仕事として根づかないまま活動が続くと、
次に起きやすいのが、評価軸のズレです。
QC活動も、会社の業務の一環ですので、
効果測定をし、経営層に報告する必要があります。
本来必要なプロセスではあるのですが、それを過剰に
意識してしまうことで、本来の趣旨を見失ってしまいます。
つまり、QC活動そのものが次第に「説明責任を果たすための業務」にすり替わってしまうのです。
品質の大きな改善や、業務上の改善という本来の成果よりも、
どれだけ経営層が喜ぶことを行ったのか、が評価される構造では、
現場の意欲は削がれるばかりです。
それが続いていくと、現場の視点では、QC活動そのものを
現場に大きな変化をもたらさない取り組みとして受け止められ、
形骸化は加速していきます。
QC活動が業務の流れから切り離されていく
改善が現場の仕事として扱われず、その目的が趣旨から外れていくと、
QC活動は次第に通常業務の流れから外れていきます。
そして、QC活動が日常業務とは別枠の取り組みとして扱われると、
「余裕があるときにやるもの」という位置づけになります。
会議の合間や繁忙期が終わった後など、
条件がそろったときに進めようとされますが、
現場に恒常的な余裕が生まれることはほとんどありません。
結果として、できなかった理由だけが積み重なり、
QC活動は動かなくなっていきます。
あるいは、その枠内でできる、
本質的ではない報告のためのQC活動が行われるだけになります。
実際に、件数稼ぎのための改善提案や、目標数字を達成するための
ヒヤリハットなどが提出されている現場も目にします。
皆さんも心当たりはありませんか?
本来的には、QC活動が滞っても、製造業務自体は回ってしまいます。
そして、品質不良や納期遅れなどと比較をすると、QC活動が上手くいっていないことは、
大きな問題として取り上げられにくいことも残念ながら事実です。
そのような空気感が蔓延すると、いよいよQC活動は形骸化してしまいます。
現場リーダーがQC活動において果たすべき役割
前章までの内容を整理すると、QC活動が現場でうまく機能しなくなるときは、
多くの場合、現場と管理職の間にズレが生じています。
現場は、忙しさや負荷の中で
「なぜ今これをやる必要があるのか」が見えなくなり、
管理職は、現場の実情を十分に把握しないまま
「やるべき取り組み」としてQC活動を求める。
このズレを放置してしまうことが、QC活動が形骸化する根本的な原因です。
では、この間に立つことができる現場のリーダーに求められる役割とはなんでしょうか?
この章で整理していきます。
現場に対して果たす役割
現場リーダーがまず向き合う必要があるのは、現場です。
現場リーダーの役割は、QC活動が現場の仕事とどう結びついているのかを説明することです。
「やらされ仕事」としてのQC活動が、活性化することがないのは前章で述べた通りです。
品質不良やムダがあることは分かっていても、
それとQC活動がどうつながっているのかが見えていない状態です。
QC活動をやらないと困るのは誰か。そして、QC活動を続けた先に恩恵を受けるのは誰か。
それが、最終的には現場自身であるということを、現場の実感に即した形で伝えること。
それが、現場に対して果たすべき役割です。
皆さんの現場では、以下のような出来事で疲弊していませんか?
- 同じ不良やトラブルが何度も起きる
- 手戻りや確認作業が増え、仕事がどんどん重くなる
- 属人化が進み、特定の人しか分からない作業が増える
- 忙しさの原因が分からないまま、現場の不満だけが溜まる
- 担当が変わるたびに、同じ問題を一からやり直すことになる
これらから解放され、製造活動に専念できると従業員に伝えることで、
現場のメンバーに腹落ちさせることができると思いませんか?
現場のメンバーと向き合い、彼らを引っ張っていくことこそが
現場リーダーに求められる役割です。
経営層や管理職に対して果たす役割
一方で、現場リーダーは管理職や経営層にも向き合う必要があります。
それは、QC活動を「余裕があるときにやる改善」ではなく、
品質を安定させるために欠かせない業務として認識させることです。
QC活動を業務として扱わないという判断は、
品質トラブルや人材流出のリスクを放置している状態 であり、
QC活動が会社全体の生産性と競争力を支える投資行為であるという整理です。
そして、積極的にQC活動に関わる従業員に対しては、
適切な評価・処遇を行う建て付けを設けることも極めて重要となります。
品質が向上することや、ばらつきが減ることは、
全体の生産性に大きく寄与することです。
更に、中長期的な視点でみると、品質の向上が安定が取引先から評価されることは、
新たな取引先の紹介や、別の商品の受注にも波及しうる、会社の競争力を高める行為です。
QC活動が会社全体にもメリットをもたらすことであり、
それを行うための仕組み化こそが、現場リーダーが経営層や管理職に対して
担う役割になります。
現場と経営層、両方に向き合って初めてQC活動は回り出す
経営層と現場、それぞれの理解と納得がQC活動を形骸化させないために重要な論点です。
現場リーダーは、現場に対しては「なぜ必要か」を伝え、
上に対しては「業務として扱うべき理由」を示す立場にあります。
そして、経営と現場が一体となってQC活動に取り組むことができて初めて、
両者にとってメリットのある、本質的な活動が行われることになります。
QC活動を組織の仕事として成立させることこそが、現場リーダーが組織の中で果たすべき役割です。
QC活動をリードする際のスタンス
経営層と現場、双方の理解がそろい、
QC活動を「やる意味」が共有された状態。
ここからが、ようやく本当のスタートです。
ただし、期待が高まった初動のタイミングこそ、
「せっかくなら成果を出したい」
「ちゃんとした改善にしたい」
という想いが根付くか、一過性になるかの分かれ道です。
ここでは、QC活動が本来の機能を取り戻し始めた段階で、
現場リーダーが特に意識しておくべきスタンスを整理します。
小さな改善から始める
なにか新しいことを始める時には往々にして、
「ここから一気に立て直したい」
「きちんとした形を作りたい」
という空気が生まれやすくなります。
しかし、大きな改善は、関係者も、費用も、調整コストも全てが大きくなり、
難易度が高くなり、時間もかかります。
その結果、成果が得られない期間が長くなりすぎると、
せっかく動き始めたQC活動が、再び止まるという最悪の事態すら招きかねません。
特に現場において、初動で必要なのは、成功体験を得ることです。
QC活動によって、業務の一部を変更し、品質が向上したという経験は、
一度生まれた機運を次の活動に繋げます。
また、多くの場合、改善活動の型というのは、対象業務がなんであれ、
大きくは変わりません。一度身に着けた方は意外と応用が利くものです。
このことからも、小さな成功体験を積み、型を現場が覚えることで、
大きな改善を達成できる土台作りを行うことが、初動に求められることです。
成果より「前進」を評価する
QC活動を開始して、最初から目に見える成果が出ればいいですが、
思うような成果が得られないこともあります。
QC活動の初動で目を向けるべきは、
成果ではなくPDCAが回り始めているかどうかです。
PDCAサイクルが回り出していれば、
たとえ数値がまだ改善していなくても、
活動としては前進しています。
もともと、形骸化していたQC活動が、再び
「考えて、試して、振り返る」状態を取り戻しつつある、
という点を成果として見ることも大切です。
一方で、成果だけを評価軸にすると、
「結果が出ないならやる意味がない」
という空気が生まれ、QC活動のやる気も削がれてしまいます。
仮に、思うような成果が得られなかったとしても、
失敗を失敗のままにせず、そこから得た学びを基に、
次の改善策を考えていけば、いつか必ず成果に結びつきます。
そして、その経験が組織に根付いていくことで、組織全体の強化にも繋がります。
まとめ:QC活動はなぜ「形骸化」するのか?
QC活動が形骸化するかどうかは、会社や現場の認識に大きく左右されます。
現場に対しては、QC活動が自分たちの仕事を楽にし、
同じ問題を繰り返さないための取り組みであることを伝える。
経営層に対しては、QC活動が品質と組織力を支える業務であることを理解させる。
この両方がそろって初めて、QC活動は現場の実務として根づいていくので、
両者の間にズレを生じさせない、生じたズレを放置しないことが重要です。
QC活動は最終的に、経営にも現場にも双方にとって大きな効果をもたらします。
皆様の現場においてもQC活動を活性化させるきっかけとなれば幸いです。


