前回は、不良対応の前半部分
「不良原因の特定」についてお話しました。
まだお読みでない方は以下をご参考ください。
今回は、今回は不良対応の後半部分、
不良の直接原因からさらに深堀りして、
根本原因の追究方法である
「なぜなぜ分析」についてお話します。
なぜなぜ分析の流れ
まずはなぜなぜ分析の流れを
次の3ステップで説明していきます。
STEP2:因果をつなげるなぜなぜ5回
STEP3:真因の決定
STEP1:問題の設定
掘り下げる問題=事象を設定します。
不良対応の根本原因追及においては、
不良の直接原因を設定します。
そしてこれから深掘りがしやすいよう
できるだけ具体的に事象を表現します。
5W1Hの要素をできるだけ盛り込み、
曖昧な表現は避け
できるだけ具体的な数値を用いて表します。
その方が、事実に基づいて
深堀りをすることができるからです。
(例)料理が美味しくなかった原因
×:味付け時に醤油を入れ過ぎてしまった。
〇:味付け時に醤油を小さじ1のところ
大さじ1入れてしまった。
STEP2:因果をつなげるなぜなぜ5回
事象が設定できたら、いよいよ
なぜ?なぜ?と深堀りしていきます。
先ほどの事象を例に見てみます。
『味付け時に醤油を小さじ1のところ
大さじ1入れてしまった』
なぜ1
『問い』なぜ大さじ1入れたのか?
『答え』近くに置いてあったさじを使った。
なぜ2
『問い1』なぜ近くに置いてあったものを使ったのか?
『答え1』小さじと大さじがあるのを知らなかった。
『問い2』なぜ近くに大さじが置いてあったのか?
『答え2』前に使った人が置きっぱなしにした。
このように、前の『なぜ』の答えに対して
さらに『なぜ』と問いをたてます。
そして2つの問いが出てきたときには
2つに分岐させるようにします。
図にすると以下のようになります。
ここで
①発生面
②管理面
の2系統で分析するのがおすすめです。
『発生面』
不良が作り込まれた原因を深掘りします。
直接関わった担当者の行動に基づいて
事実を確認していきます。
『管理面』
不良をなぜ流出させたのか?
途中で見つけられなかったのか?
について深掘りします。
たとえば担当者が何らかのミスを犯しても
それをチェックできれば問題は最小限で済みます。
管理面についても取り上げることで、
組織全体で考える雰囲気が作りやすくなります。
STEP3:真因の決定
なぜ?なぜ?を繰り返して、
これ以上新たな問い
「なぜXXXなのか?」
に意味がなくなれば
そこで深堀は完了です。
最後に残ったなぜ?の答えが
真因ということになります。
真因は①発生面②管理面で
各々1つまたは複数となります。
なぜ?は5回繰り返すと良い、
とされていますが、別に回数に
意味があるわけではありません。
しかし、少なすぎると深掘りが不足するので、
できれば5回を目安にやってみてください。
恒久対策の決定
最後に残った真因それぞれに対して
「どうすれば(その事実が)起きないのか」
を検討します。
上手くなぜなぜ分析が進み、
真因を適切に見つけ出せていれば、
その再発防止策は比較的設定しやすくなります。
例えば、上の例でなぜなぜの続きを行うと
なぜ3
『問い1』なぜ小さじと大さじを知らなかったのか?
『答え1』これまでに教わったことがなかった。
『問い2』なぜ置きっぱなしになっていたのか?
『答え2』片付ける場所を知らなかった。
なぜ4
『問い1』なぜ教わったことがなかったのか?
『答え1』教育制度がなかった。
『問い2』なぜ場所を知らなかったのか?
『答え2』表示されていないのでわからなかった。
となり、ここで深掘りを完了します。
再発防止策として、
①新人教育制度を設ける。
②整頓場所を決定し表示する。
とします。
①の教育制度で、大さじと小さじについて知識を身に付け、
②でそれらが所定の場所に置かれるようにし、
表示を見て大さじか小さじかを選べるようにします。
そして再発防止策は、仕組みとして
誰でも実行できるようにすることが重要です。
「絶対に再発させない」ためには
仕組み化することが重要です。
また当然ですが、
実行できる内容でなければいけません。
上手くいくなぜなぜ分析のコツ
なぜなぜ分析を上手く進めるにはいくつかコツがあります。
ここでは3つ紹介します。
②事実をそのまま文章にする
③個人的な感情や心理を扱わない
①チームでやる
なぜなぜ分析は、皆でやれば
チーム力の向上につながります。
間違っても当事者とその上司だけでやる、
といったことは避けてください。
チームでやることによって、
誰かのミスであっても個人の問題にせず、
チーム事として取り組めるようになります。
そうすることで、
何か問題が起きた時に
再発防止に取り組んだり、
問題が起きる前に未然防止策を考えられる
ようになっていきます。
②事実をそのまま文章にする
なぜなぜ分析で
なぜ?と深堀りをするとき、
端的に表そうとすると逆効果です。
事実を聞いたまま、見たまま、
文章にします。
例えば、
本来「1735」とパソコンで入力するところに
「1725」と入力してしまった場合、
どのように文章に表すでしょうか?
×:3を2と打ち間違えた
〇:3のところに2と入力した
「打ち間違えた」というと、
3を入力しようとしているけど2と打った
という意味になります。
しかし、もともと2を入力しようと思って
やった結果かもしれないのです。
打ち間違えというのは単なる推測です。
推測を入れず、事実を正確に把握し
そのまま文章にすることにより、
次の「なぜ?」が
より真因に近づく「問い」
になるはずです。
③個人的な感情や心理を扱わない
これはヒューマンエラーについて
取り扱う場合には特に注意します。
なぜ?の答えとして
「やる気がなかった」
「疲れていて間違えた」
といった、確証の得られないことは
書かないようにします。
なぜ?と掘り下げる時には、
人の意識面ではなく、あくまでも
『人の行動』に基づいて実施します。
当事者に
「どうしてこのような行動になったのか?」
と問いかけ、行動を振り返ってもらいます。
この時、自分自身では答えが出ない場合もあります。
ミスしたことで気持ちが落ち込んでいて考えらない、
といったこともあるでしょう。
ここで『チームの力』を発揮します。
皆でどうなればこの行動につながるのか考えます。
『行動』をした人が悪いのではなく、
『行動』を防ぐしくみがなかったのが悪い、
このように考えることにより、
ミスを隠さず皆で考えられる風土ができてきます。
まとめ
今回は、不良を引き起こした真因
根本原因を追究する方法として
『なぜなぜ分析』のやり方についてお話しました。
進めるための3つのステップと
上手く進めるコツを3つ紹介しました。
なぜなぜ分析を行い再発防止策を決定し
確実に実行していくことで、
根本原因が絶たれます。
これはもちろん不良の削減につながりますが、
それよりもチーム力が上がる効果の方が
大きいと思います。
特に『個人のせいにしない』風土が
風通しの良さや改善意識の高まりを生みます。
ぜひ問題発生をきっかけに
なぜなぜ分析に取り組んでみてください。