中小製造業の生産性向上は「何から」始める? 組織の考え方を劇的に進化させる4つのステップ

中小製造業の生産性向上は「何から」始める? 組織の考え方を劇的に進化させる4つのステップ

我々製造現場はは毎日、人と設備を組み合わせてモノづくりをしています。外からは単純作業に見えても、現場の人間は頭の中で「どうすればもっと楽に、スムーズに流れるか」と、常にパズルを組むような「段取り」を考えて、もっとも生産性の高い行動を選択しようと努力しているはずです。

でも、世間でよく聞く「他社の成功事例」や「新しい管理手法」を真似してみても、「ウチの現場じゃ、なんか上手くいかないんだよな……」と想像したこともあると思います。それは実は正しいです。「規模が違うから」「作るモノが違うから」と思いがちですが、実はもっと根本的な原因があります。

それは、新しい設備や自社に合うデジタルツールが見つかってないことだけが理由ではありません。 それらの道具を使いこなすための、現場のみんなの「チームとしての基礎的な考え方」がまだ育っていないだけなのです。

そこで今回は、「今のメンバーと今の設備の生産性をもっと高めるための4つのステップ」について紹介したいと思います。 「会社のため」というより、まずは自分たちのものづくりがもっと上手くなるために。現場の知恵を「誰かの技」から「チームの技=武器」に変えていくための手順を、一緒に見ていきましょう。

今回も読み終えるまでのお時間、しばらくお付き合いくださいませ。

目次

生産性向上とは、手法の導入ではなく「組織の考え方の進化」である

私たち現場の人間にとって、「生産性を上げる」という言葉は、誰かに言われてイヤイヤ取り組むものではありませんよね。

「もっと良いモノを、もっと手際よく作りたい」

「バシッと段取りが決まって、予定より早く終わった瞬間が気持ちいい」

それは、ものづくりに携わる人間としての「職人の誇り」そのものだと思います。

ただ、ひとりの「腕」だけで上げられるスピードには、物理的な限界があります。

ここからさらに上のレベル──工場全体としての生産性を劇的に高めるために必要なのは、新しい管理手法を覚えることではなく、現場というチーム全員の「目線」を合わせ、進化させることです。

「個人の凄腕」から、自ら問いを立てる「最強の改善チーム」へ

現場における「組織の進化」とは、皆さんが個々に持っている素晴らしい技術や勘所を、チーム全体の力に変えていくプロセスです。

  • これまでのステージ(個人の力):
    • 「自分はこの機械のクセを完璧に知っているから、最高の調整ができる」
    • 「俺のやり方なら、誰よりも早く正確に組める」
    • 課題: その人が休むと品質が落ちる。せっかくの素晴らしい技が、一人の中に留まってしまっている。
  • これからのステージ(チームの力):
    • 「機械のクセを共有して、若手でもベテランと同じ調整ができるようにしよう」
    • 「一番早いAさんの手の動かし方を分析して、チーム全員の標準にしよう」
    • 現場でのメリット(どんないいことがあるか?):チーム全員のレベルが底上げされ、「誰がやっても早くて上手い」という最強の現場になります。また、特定の人への負担集中も解消されます。

つまり、一人ひとりが優秀な職人であるだけでなく、「チーム全体をもっと強くするには?」という問いを全員で共有できる集団へと進化すること。これが、私たちが目指すべき次の姿です。

まずは「対話」を通じて、チームの「筋肉」を鍛え上げる

「チームを進化させる」といっても、いきなりAIだのIoTだの、横文字のツールに頼る必要はありません。

最新のスパイクを履いても、足腰が弱ければ速く走れないのと同じで、まずは「直接話し合うこと(対話)」で、組織としての筋肉を鍛えることが先決です。

  • その言葉の定義(対話とは?):
    • 会議室での堅苦しい議論ではありません。現場で現物を見ながら、「ここの作業、もっとこうしたら流れが良くなるんじゃない?」「この治具、ちょっと使いにくいよね」と、お互いの職人としての感覚をすり合わせる行為のことです。
  • 現場でのメリット(どんないいことがあるか?):
    • 「あうんの呼吸」が生まれる: 言葉にしなくても連携できるレベルまで、チームの意思疎通がスムーズになります。
    • 自分たちの現場になる: 上から降ってきたルールではなく、自分たちで話し合って決めた「俺たちのやり方」なら、誇りを持って守り、育てていけます。

デジタルツールや新しい機械は、この「強固なチームワーク」が出来上がった後に、それを助ける道具として使えば十分です。

まずは、現場のみんなで「技や気づきを言葉にする」回数を増やすことから、組織の進化を始めていきましょう。

【完全解説】組織の考え方を進化させる「改善体制」構築の4ステップ

それでは、ここから具体的に、現場のチーム力を高めていくための4つのステップを解説していきます。

遠回りに見えるかもしれませんが、この順番で進めることが、結果として一番早く「楽で強い現場」を作る近道です。

STEP 1:5S活動 ― チームによる「改善活動」の導入

最初のステップは、製造業の基本中の基本、「5S=整理・整頓・清掃・清潔・習慣(しつけ)」です。

「なんだ、5Sか。そんなの毎日やってるよ」

「掃除しろってことでしょう?」

そう思われたベテランの方も多いかもしれません。しかし、ここで提案したいのは、単に工場をピカピカにするための美化活動ではありません。

5Sの真の目的は、「チーム全員で決めたルールを守り抜き、足並みを揃えるためのトレーニング」です。

ただの掃除活動ではなく「チームの規律」を養う

プロのスポーツチームが、基礎練習や道具の手入れを徹底するのと同じです。私たち製造現場にとっての5Sは、「仕事の邪魔になる要素(ノイズ)を取り除き、全員が迷わず動ける状態を作る」ための作戦です。

それぞれの意味を、現場目線で再定義してみましょう。

  • 整理Seiri:必要なモノと不要なモノを分ける
    • 現場の視点: 「いつか使うかも」という迷いを断ち切ることです。不要なモノが減れば、作業スペースが広がり、安全確保や移動のムダ削減に直結します。
  • 整頓Seiton:必要なモノを使いやすい場所に置く
    • 現場の視点: これは「配置の戦略」です。「あの工具どこだっけ?」と探す時間は、私たちにとって最大のムダ。誰が見ても「あ、ここにある」と0.5秒で分かる状態を作ることで、作業のリズムを止めないようにします。
  • 清掃Seiso:掃除をしながら点検する
    • 現場の視点: ただ床を掃くだけではありません。機械を拭きながら「あれ、油漏れしてる?」「いつもと音が違うな」と、異常の予兆に気づくための点検作業です。機械を愛する職人ならではの「触診」と言えます。
  • 清潔=Seiketsu:きれいな状態を維持する仕組み
    • 現場の視点: ここからが重要です。一度きれいにしても、また汚れたら意味がありません。「なぜ汚れるのか?(発生源対策)」を考え、「汚れないカバーを付ける」「ゴミが落ちにくい受け皿を作る」といった未然防止策をチームで考えるフェーズです。
  • 習慣(しつけ)=Syukan/Shitsuke:決めたルールをみんなで守る
    • 現場の視点: 漢字では「躾」と書きますが、子供へのしつけとは違います。これは「チームの合意」です。「工具は使い終わったらここに戻そう」と全員で決めた約束を、全員が守る。誰か一人がサボればチーム全体のリズムが崩れることを理解し、お互いに声を掛け合える関係を作ることです。

このように、3S(整理・整頓・清掃)で現場を整え、清潔で「工夫」を凝らし、習慣で「チームの結束」を固める。これが5Sの本質です。

「自分たちで現場を変えられる」という実感

このSTEP 1で最も大切なのは、現場のみんなが「自分たちで現場は変えられるんだ」という実感(成功体験)を持つことです。

例えば、ある現場での話です。

そのチームでは、毎日使う測定器が棚の奥にあり、取り出すたびに屈むのが大変でした。「腰が痛いな」と思いながらも、何年もそのままでした。

しかし、5S活動でメンバーと話し合い、「よく使うから手元のワゴンに専用置き場を作ろう」と配置を変えました。

結果は劇的でした。「うわ、めちゃくちゃ楽になった!」。

たった数秒の短縮ですが、一日の疲れ方が全く違ったのです。

  • 「不便だな」と感じていたことを、口に出していい。
  • みんなで話し合えば、解決策が見つかる。
  • 実行すれば、自分たちの仕事が楽になる。

この「不便」→「対話」→「解決」→「楽になる」というサイクルをチーム単位(個人の視点を集結させる)で何度も回すこと。これこそが、組織の当事者意識を目覚めさせ、同時に個人の知識や視点をも磨き上げる、この先のステップへ進むための強力なエンジンになります。

STEP 2:QC活動 ― 顧客への提供価値と「チーム」の関係性の理解

STEP 1の「5S」で、自分たちの足場を固め、仕事がしやすい環境を整えました。次はいよいよ、その整った現場で生み出す「仕事の質」に目を向ける段階です。これが「QC(品質管理)活動」です。

「QC」と聞くと、「業務終了後に残って、面倒な発表資料を作らされる」というネガティブなイメージを持っている方もいるかもしれません。でもそれは間違った認識と、間違った活動の使い方です。

本来のQC活動は、誰かにやらされる宿題ではなく、「自分たちの仕事が、誰の何の役に立っているのか」を再確認し、プロとしての品質(提供価値)を保証するための作戦会議です。

「自分たちの仕事は誰の役に立っているか」を言語化する

STEP 1の5Sは、どちらかと言えば「自分たちが働きやすくするため(自分たちのため)」の活動でした。

対してSTEP 2のQCは、「お客さんに喜んでもらうため(相手のため)」へと視点を広げるステップとなります。

  • QC活動とは?:単に不良品を弾くだけの検査ではありません。「自分たちが作ったこの部品は、最終的に誰が使い、どんな笑顔に繋がっているのか?」をチームで語り合い、「だから、こういう品質が必要なんだ」と腹落ちさせるプロセスです。
  • 現場でのメリット(どんないいことがあるか?):
    • 仕事に「張り合い」が出る: 「ただ鉄を削っている」のと、「自動車の安全を守る部品を作っている」とでは、気合の入り方が違います。目的が明確になると、チーム全体の士気が上がり、自然と「いい仕事」ができるようになります。
    • 「やらされ仕事」からの脱却: 「上司がうるさいから寸法を守る」のではなく、「お客さんに迷惑をかけないために守る」という、プロとしての自律したプライドが生まれます。

「勘」ではなく「事実(データ)」で対話する

そしてもう一つ、QC活動で重要なのが、チーム内の会話を「感覚(勘)」から「事実(データ)」へ切り替えることです。

現場には、ベテランの方々の素晴らしい「職人の勘」があります。「今日はなんとなく機械の調子が悪い気がする」──この直感は非常に重要です。しかし、チームで動くとき、この「感覚」だけでは誤解や対立が生まれることがあります。

  • Before(感覚での会話):
    • Aさん:「最近、不良が多い気がするなぁ」
    • Bさん:「いや、そんなことないでしょ。たまたまだよ」
    • 結果: 水掛け論になり、対策が進まない。あるいは声の大きい人の意見が通ってしまう。
  • After(データでの会話):
    • チーム:「チェックシートをつけてみたら、火曜日の午前中だけ、寸法ズレが全体の8割を占めていることが分かった(事実)」
    • 結果: 「じゃあ、火曜の朝の気温か、資材の搬入タイミング怪しいね」と、全員が同じ方向を向いて具体的な対策が打てる。

【現場での使い方】

難しい統計学を学ぶ必要はありません。まずは「数を数える」「記録をつける」だけで十分です。

「俺の経験ではこうだ!」と個人の主張をぶつけ合うのではなく、「データ(事実)はどうなっている?」と客観的な数字を真ん中に置いて話し合う。

これにより、属人的な判断から「チームとしての納得解」を導き出せるようになります。これが、強い現場が持っている「課題解決力」の正体です。

STEP 3:IE手法 ― チームによる「生産性向上ツール」の活用

STEP 1(5S)で足場を固め、STEP 2(QC)で品質への意識を統一しました。

チームとしての土台がガッチリと固まったこの段階で、初めて投入するのが「IE(Industrial Engineering:経営工学)」という強力な武器です。

「IE」なんて横文字が出てくると、「ストップウォッチを持った背広組に、作業時間を監視される」ような嫌なイメージを持つ方もいるかもしれません。

しかし、ここで提案するIEは、そんな監視のための道具ではありません。これは、「自分達の職場の問題点を科学的に分析し、誰でも簡単に見つけられるようにするための見える化ツール」です。

磨かれた組織に「科学の目」を取り入れる

これまでのステップで、チームには「話し合う習慣(対話)」と「事実を見る力(データ)」が備わっています。ここに「科学の目」を加えることで、改善のレベルが一気に跳ね上がります。

  • IEとは?:直訳すると「産業工学」ですが、現場流に言えば「動きの解剖学」です。「なぜAさんは疲れずに早くて、Bさんは汗だくなのに遅いのか?」という違いを、根性論ではなく、「手の動かし方」「歩数」「目の付け所」といった単位まで細かく分解して分析する手法です。
  • 現場でのメリット(どんないいことがあるか?):
    • 「ムリ・ムダ」の正体がわかる: 「なんとなく大変」という感覚が、「部品を取りに行くのに3歩歩いているのが原因」と具体的に特定できます。
    • 説得力が増す: 「キツイから変えてくれ」と言うより、「この動作で腰への負担が〇〇kgかかっている」と数字で示した方が、会社も設備投資や治具作成に動きやすくなります。

職人技を「組織の資産」へ

このステップの最大の目的は、ベテランの方々が長年の経験で培ってきた「コツ(暗黙知)」を、チーム全員が使える「標準(形式知)」に変えることです。

現場には「あの人にしかできない調整」や「神業的な手捌き」が存在します。それは素晴らしいことですが、その人が休んだり引退したりすれば、その技術は失われてしまいます。これはチームにとって最大のリスクです。

  • 具体的な使い方(標準化):例えば、あるベテランさんが部品のセットを3秒で行うのに、新人は10秒かかるとします。
    • 従来の指導: 「もっと手際よくやれ!」「慣れろ!」(精神論)
    • IE的アプローチ: ベテランさんの動きを動画で撮って分析する。「あ、セットする直前に、手元で部品を半回転させているな」と気づく。
    • 解決策: その「半回転」をさせなくて済むように、部品置き場の角度を変える(治具化)。

こうすることで、新人がやっても3秒でセットできるようになります。

個人の「凄腕」を盗むのではありません。個人の工夫を科学的に分析して、「誰もがその達人と同じパフォーマンスを出せる仕組み」としてチーム全体にインストールするのです。

ここで初めて、個人の頑張りに依存せず、組織として劇的に生産性が向上します。

「楽をして、速く、いいモノができる」。

5SとQCで鍛えたチームだからこそ、このIEという武器を最大限に活かすことができるのです。

STEP 4:デジタル活用 ― 進化した組織が選ぶ「最後のピース」

いよいよ最後の仕上げです。ここでようやく、世間で話題の「デジタル(DX)」が登場します。

「え、今さら? 最初に入れるもんじゃないの?」

そう思うかもしれませんが、あえて断言します。ここまでは、アナログで十分です。 むしろ、アナログで汗をかいて仕組みを作ったチームでないと、デジタルは使いこなせません。

このステップでは、進化した現場にとって、デジタルツールが決して「仕事を奪う敵」や「面倒な管理ツール」ではなく、「最強の相棒(バディ)」になる理由をお話しします。

四の五の言わず、ここまではアナログでいい

多くの企業がDXで失敗するのは、STEP 1〜3(土台作り)を飛ばして、いきなりこのSTEP 4から始めてしまうからです。

「何を解決したいか」が決まっていないのに、高いタブレットを配っても、ただの動画視聴端末になって終わりです。

しかし、ここまで読み進めてきた皆さんの現場は違います。

5Sでルールを作り、QCで見るべき指標を決め、IEで効率的な動作を知っている。ここまで「現場のOS」がアップデートされていれば、デジタル導入は「必然的な結果」としてスムーズに進みます。

  • アナログの限界: 「手書きのチェックシートを集計するのが面倒くさい」「1分ごとのデータを取りたいけど、人間がずっと張り付くのは無理」
  • デジタルの出番: 「じゃあ、そこだけ機械に任せようか」

このように、現場から「ここを楽にしたいから、デジタルを使ってくれ」*いう要望が出た時こそが、導入のベストタイミングなのです。

デジタルが「相棒」として機能する条件

組織としての考え方が進化したチームにとって、デジタルツールは「監視役」ではなく、私たちの能力を何倍にも拡張してくれる「拡張機能」になります。

具体的に、現場でよく聞く横文字ツールを「現場の相棒」として翻訳してみましょう。

  • IoT(モノのインターネット)=「専属の記録係」
    • 定義: センサーなどが自動でデータを送ってくれる仕組み。
    • 現場のメリット: 今まで私たちが手を止めて正の字を書いていた「生産数カウント」や、毎時巡回して記録していた「温度チェック」を、文句ひとつ言わずに24時間365日代行してくれます。私たちは「記録」という単純作業から解放され、「考えること」に集中できます。
  • SCADA(スカーダ/見える化システム)=「現場のライブ中継モニター」
    • 定義: 工場全体の動きをリアルタイムで画面に映す仕組み。
    • 現場のメリット: 広い工場の端っこでトラブルが起きても、瞬時に全員が「あ、あそこで詰まってる」と気づけます。ホワイトボードに書きに行くタイムラグがなくなり、チーム全体の連携スピードが爆上がりします。
  • AI(人工知能)=「物知りの新人くん」
    • 定義: 膨大なデータから傾向を見つけるプログラム。
    • 現場のメリット: 過去のトラブルデータなどを読み込ませておけば、「この振動の出方は、3年前の故障の前触れに似てますよ!」と教えてくれます。ベテランの勘を裏付けるデータを、瞬時に引っ張り出してくれる頼もしい助手です。

デジタルツールは、魔法の杖ではありません。

STEP 3までで鍛え上げた私たちの「現場力」を、高回転で回し続けるためのターボエンジンです。

人間が収集していたデータをIoTが集め、それを見える化し、対策案をAIと一緒に探す。

「面倒なことは機械に任せて、人間はもっと創造的な改善を楽しむ」。これこそが、私たちが目指すべき「楽で、速くて、カッコいい現場=スマートプロダクト」の完成形です。

独自視点:なぜ「個人の改善」ではなく「チーム(組織)による改善」でなければならないのか?

ここまで、4つのステップで「組織としての改善」を進める方法をお話ししてきました。

中には「俺ひとりで工夫した方が早いよ」「周りを巻き込むのは面倒だ」と感じる方もいるかもしれません。確かに、腕に覚えのある職人さんほど、個人の力で解決してしまいがちです。

しかし、あえて言わせてください。これからの時代、「個人の改善」だけでは、現場を守り抜くことはできません。

「スーパーマン」がいないと回らない組織からの脱却

どこの現場にも、一人か二人は「あの人に聞けば全部わかる」「あの人がいないと機械が直せない」というスーパーマン(超人)がいるものです。

その存在は頼もしいですが、組織としては非常に「危うい」状態でもあります。

  • もし、そのスーパーマンが風邪で休んだら?
  • 定年で引退してしまったら?

その瞬間、現場の機能はストップしてしまいます。また、特定の個人にだけ負担が集中し、その人がいつまで経っても楽にならないという悪循環も生まれます。

私たちが目指すのは、「全員がプチ・スーパーマンになること」です。

対話を通じて、ベテランの頭の中にある「判断基準(なぜそうするのか?)」を全員で共有する。そうすれば、誰がトラブルに直面しても、チームとして正しい判断ができるようになります。

「誰か一人のカリスマ」に頼るのではなく、「チーム全員の知恵」で回す。これが、強くて休みやすい現場の条件です。

チームの考え方の進化がすべてを進めはじめる

最新の工作機械や、便利なソフトウェアは、お金さえ出せばライバル会社でも買えます。つまり、「道具」だけでは差がつかない時代なんです。

しかし、ここまでお話ししてきた「現場のチームワーク」や「改善に向き合う考え方」だけは、どこにも売っていませんし、一朝一夕で真似することもできません。

  • 5Sで培った「規律」
  • QCで合わせた「品質への目線」
  • IEで磨いた「効率的な動き」
  • デジタルで加速させた「改善スピード」

この4つのステップで鍛え上げられた「組織の考え方の深さ(チーム力)」こそが、私たち中小製造業が厳しい競争の中で勝ち残り、自分たちの職場を守るための本当の武器になります。

道具は古くても、使うチームが一流なら、最高の結果は出せます。

逆に、道具だけ一流でも、チームがバラバラなら宝の持ち腐れです。

だからこそ、私たちは「モノ」ではなく「ヒト(組織)」の進化から始める必要があるのです。

まとめ:組織の考え方を劇的に進化させる4つのステップ

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

今回は、生産性向上というテーマを、「組織の考え方を進化させる」という視点から4つのステップでお話ししました。

「手っ取り早く楽になる方法はないのか」と思うかもしれませんが、急がば回れです。

どんなに高価な道具も、それを使う「チームの基礎体力」がなければ役に立ちません。

  1. 5S活動: まずは自分たちの働きやすさを守る「規律」を作る。
  2. QC活動: 顧客視点で「品質」を語り合い、データで会話する。
  3. IE手法: 職人の暗黙知を科学的に分析し、チームの「標準」にする。
  4. デジタル活用: 完成されたチームワークを加速させる「相棒」として迎え入れる。

この階段を一段ずつ、現場のみんなで登っていくこと。

それこそが、理不尽な忙しさから解放され、自分たちの現場を「誇れる職場」に変えるための最短ルートです。

今日からできる最初の一歩

いきなり会議を開く必要はありません。まずは明日、現場で隣にいる仲間に、こう声をかけることから始めてみませんか?

「ねぇ、今の作業の中で、一番『ムダだな』って感じるところ、どこだと思う?」

そのたった一言の雑談が、あなたの現場を「最強のチーム」へと進化させる最初の一歩になるはずです。

現場を支える皆さんの毎日が、もっとスマートで、カッコいいものになることを応援しています。

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この記事を書いた人

 大手総合電機メーカーで20年間経験を積んで平成22年に独立。10年間で600社を超える中小企業支援、そして自らも小売業を立ち上げて業績を安定させた実績を持つ超現場主義者。小さなチームで短期的な経営課題を解決しながら、中長期的な人材育成を進める「プロジェクト型課題解決(小集団活動)」の推進支援が支持を集めている。

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