【結論】IT担当者がいない町工場が「まず試すべきAI」は決まった
「AI、AIって毎日ニュースで見るけど、ウチみたいな町工場で本当に使えるのか?」
「ChatGPTとGemini、名前は聞くけど、結局どっちがウチの仕事に向いてるんだ?」
「そもそも、パソコンに詳しいIT担当者なんていないし、難しそうだ…」
まさに今、こんな風に悩んでいるリーダーは多いと思います。
ご安心ください。今回はそんなあなたのためにこの記事を書きました。
私は15年以上、製造現場のコンサルティングを行ってきた専門家です。なので、できるだけ現場視点に立って「現場の具体的な5つの業務」—例えば「作業手順書づくり」や「不良品の写真管理」といった、あなたが毎日向き合っている仕事—で、ChatGPTとGeminiを実際に使い比べ、どっちが本当に「使える道具」なのかを、忖度なしでレポートします。
さっそく5つの業務比較!…と行きたいところですが、その前に、とても大切な話をさせてください。
この2つのAIは、実は「何を売ろうとしているか」という根本的な思想(戦略)がまったく違います。ここを理解するのが、あなたの会社にピッタリなAIを選ぶ一番の近道になります。まずはその「中身の違い」から見ていきましょう。
では今回も読み終えるまでのお時間、しばらくお付き合いくださいませ。
比較の前に:ChatGPTとGemini、その「戦略」と「得意分野」
中小製造業のコンサルタントとして断言しますが、このChatGPTとGeminiは、そもそも「思想」が全く違います。AIを「道具」としてどう売るかが根本的に異なるのです。
ここを理解することが、あなたの会社にとって「本当に使えるAI」を見極める一番の近道になります。「どっちが高性能か?」ではなく、「どっちがウチの仕事を手伝ってくれるか?」という視点で見ていきましょう。
まずは、皆さんもよくご存知のChatGPTから、その中身を詳しく見ていきます。
1. ChatGPT (OpenAI) の詳細:「最高の脳(AIモデル)を売る」戦略
ChatGPTを作っているOpenAIという会社は、ものすごく簡単に言えば、「世界で一番賢いAIの脳みそ」を作って、その「脳みそを使う権利」を売って商売をしています。
ですから、料金プランも「どれだけ賢い脳みそを、どれくらいの頻度(回数)で使えるか」で決まってくるのが特徴です。まずは、そのプランと機能を表で見てみましょう。
ChatGPT プラン別 機能・制限 比較表
| 比較項目 | ChatGPT Free | ChatGPT Plus | ChatGPT Pro | 
|---|---|---|---|
| 価格 | $0 | $20/月 | $200/月 | 
| 主要アクセスモデル | GPT-4o | GPT-4o, GPT-5, o3 | o1, o1 pro mode | 
| GPT-4o / 5 利用上限 | 極めて厳しい (例: 10回/5h) | メータリング (例: 150回/3h) | 無制限 | 
| Deep Research 上限 | 5 ライトクエリ/月 | 25 クエリ/月 | 無制限 | 
| 画像生成 (DALL-E) 上限 | 厳しい制限 | メータリング (例: 50画像/3h) | 無制限 | 
| 音声機能 | Voice conversations | Voice conversations | Advanced Voice | 
取り扱える主なデータ形式
- テキスト、画像
 - Microsoft Word (.docx)
 - Microsoft PowerPoint (.pptx)
 - TXT, CSV など
 
この表を見ると、高いプランほど高性能なAI(o1 pro modeなど)を回数無制限で使える、という非常にシンプルな仕組みなのが分かりますね。
では、この「賢い脳みそ」は、私たち製造現場のどんな仕事が得意なのでしょうか? 強みと、逆に苦手なことを具体的に見ていきましょう。
ChatGPTの強み(製造現場の視点)
- AIの「生の知性」が強力:とにかくAI自体が賢いです。特に最上位プランは、難しい専門的な質問にも高い信頼性で答えてくれます。
 - Officeドキュメントの扱いに強い:現場にあるWordの「作業手順書」や、PowerPointの「改善提案書」をそのまま読み込ませて、「この文書を要約して」とか「もっと分かりやすく書き直して」といった日常業務が得意です。
 - 画像の「反復編集」が得意:AIで作った画像に対して、「この背景をもっと明るくして」とか「夕焼け空に変えて」といった、会話での修正が得意です。
 - 「対話パートナー」としての音声:音声機能は非常に自然で、まるで人間と壁打ち(相談)しているかのように、アイデア出しを手伝ってくれます。
 
ChatGPTの弱み(製造現場の視点)
- 厳格な「利用制限」:「脳みそを使う権利」を売っているため、無料プランや月20ドルのPlusプランでは、一番賢いモデルを使える回数に厳しい制限があります。ここぞという時に「上限です」と言われてしまうことも。
 - エコシステムを持たない:Googleのように、皆さんが普段使っているメールソフトやクラウドストレージと深く連携する「仕組み」は持っていません。あくまでAI単体での勝負です。
 - 検索が「反応型」:Web検索もできますが、あくまでこちらが「〇〇を教えて」と聞いたことに対して「答えを探してくる」という動き方です。
 
ChatGPTが「高性能な脳みそ」を単品で売っているのに対し、GoogleのGeminiはまったく違う売り方をしています。次はそのGeminiを見てみましょう。その違いに驚くはずです。
2. Gemini (Google) の詳細:「最強の執事(エコシステム)を売る」戦略
Googleの戦略は、AIを「最強の執事(しつじ)」として売るイメージです。
どういうことかと言うと、皆さんが普段お使いのGmail、Googleスプレッドシート、Google Drive(クラウド倉庫)といった道具一式を、Geminiという「ものすごく優秀な執事」が全部まとめて使いやすくしてくれる、という売り方なのです。
ですから、料金プランもAIの賢さだけでなく、「どれだけ大容量の倉庫(ストレージ)が使えるか」や「YouTubeの広告が消えるか」といった便利なサービスがセットになっています。
こちらも、まずはプランと機能の表を見てみましょう。
Gemini プラン別 機能・制限 比較表
| 比較項目 | Gemini Free | Gemini AI Pro | Gemini AI Ultra | 
|---|---|---|---|
| 価格 | $0 | $19.99/月 | $249.99/月 | 
| 主要モデル | 2.5 Flash / Pro (限定) | 2.5 Pro | 2.5 Pro / Deep Think | 
| ストレージ(Google One) | 15 GB | 2 TB | 30 TB | 
| 1M Context Window | 非対応 | 利用可能 | 利用可能 | 
| Deep Research | 利用可能 | Proモデル使用 | 最高制限 | 
| G-suite アプリ連携 | 非対応 | 利用可能 | 最高制限 | 
| 動画生成(AIクレジット/月) | 100 | 1,000 | 25,000 | 
| その他バンドル | なし | Google Home Premium | YouTube Premium | 
取り扱える主なデータ形式
- テキスト、画像、音声、コード
 - 動画(API経由)
 - 100万トークン(1,500ページ)の巨大データ
 
こちらの表で面白いのは、価格が上がると「ストレージ(倉庫)容量」が一気に増える点ですね。AI Proプラン($19.99)には、なんと2TB(2000GB)もの大容量ストレージが付いてきます。これはAIの料金というより、「倉庫代 + 執事代」という考え方です。
では、この「優秀な執事」は、製造現場のどんな仕事を手伝ってくれるのでしょうか? 強みと弱みを見ていきましょう。
Geminiの強み(製造現場の視点)
- 「Googleエコシステム」との完全統合:これが最大の強みです。Gmail、スプレッドシート、Docs(文書作成)の中でGeminiを直接呼び出して「このメールの返事書いといて」とか「この売上データをグラフにして」と指示できます。
 - 圧倒的なコストパフォーマンス(バンドル戦略):先ほどの通り、月約20ドルのAI Proプランで「2TBのクラウドストレージ(普通に借りると月10ドル相当)」が付いてきます。実質AI執事の費用は月10ドル程度と、非常に安価です。
 - 「Deep Research」機能が強力:これは「調べ物」の革命です。ChatGPTが質問に「答える」のに対し、Geminiは「指示」ができます。「〇〇の補助金について、競合のA社とB社の動向も合わせて、レポートを作っておいて」と頼むと、執事が自律的にWebを調べ上げ、レポートを作成してくれます。
 - 「既存の写真ライブラリ」と連携:Google Photos(写真倉庫)と連携し、「去年の夏に撮った、A部品のバリ不良の写真を探して」といった、過去の資産を活用する検索ができます。
 - 大規模データの扱いに強い:「1,500ページの分厚い技術マニュアル」や「長い研修動画」を丸ごと読み込ませて、「要点をまとめて」といった無茶ぶりが可能です。
 
Geminiの弱み(製造現場の視点)
- 「生のAI性能」より「利便性」重視:AIの「脳みそ」単体の賢さや信頼性だけを追求するなら、ChatGPTの最上位プランに軍配が上がるかもしれません。Geminiはあくまで「執事」として、会社全体の仕事をスムーズにすることに重点を置いています。
 
ここまでで、なんとなく両者の「性格」の違いが見えてきたのではないでしょうか。
ChatGPTは「ものすごく賢い相談相手」、Geminiは「会社の雑務を全部やってくれる優秀な執事」。
最後に、この2つのAIを現場目線でズバッと比較した一覧表をお見せします。
3. ChatGPTとGeminiの共通点と違い
ぱっと見は、どちらも「チャットで質問できる」「ネット検索ができる」「写真を見せられる」と同じように見えます。
しかし、現場コンサルの私から見ると、その「思想」はまったく違います。もう一度言いますが、OpenAI(ChatGPT)は「最高の脳(Brain)」を売っていて、Google(Gemini)は「最高のエコシステムを搭載した執事(Butler)」を売っているのです。
この違いが、現場の仕事でどう効いてくるのか。以下の比較表にまとめました。特に「Web検索」や「画像認識」の「考え方」の違いに注目してください。
機能別 比較一覧
| 比較項目 | ChatGPT (OpenAI) | Gemini (Google) | 
|---|---|---|
| Web検索(思想) | リアクティブ(情報検索) | プロアクティブ(リサーチ代行) | 
| Web検索(機能) | ChatGPT Search | Deep Research | 
| 画像認識(入力) | 画像アップロード(グラフ、図) | Google Photos統合 | 
| 動画生成 | 非対応(Soraは別製品) | Veo 3.1(プランにバンドル) | 
| 音声(思想) | 対話パートナー | 実用的アシスタント | 
| 音声(ユーティリティ) | 非対応 | Audio Overviews(レポート音声化) | 
| 対応ファイル(強み) | Office系 (Docx, PPTX) | 大規模 (1Mトークン) | 
どうでしょうか。ChatGPTはWordやPDFといった「ファイル単体」の処理が得意で、GeminiはGoogleフォトやスプレッドシートといった「仕組み全体」と連携するのが得意なのが分かりますね。
さて、お待たせしました。
この「思想」の違いを踏まえた上で、いよいよ本題の「現場の具体的な5つの業務」で、どちらが本当に使える道具なのかを徹底的に比較していきましょう。
【業務別】中小製造業の「よくある悩み」、AIでこう変わる
さて、お待たせしました。
ChatGPTが「単品で売られている、世界一賢い脳みそ」、Geminiが「あなたの会社の道具箱(Google)と一体化する、優秀な執事」という戦略の違い、なんとなく掴んでいただけたでしょうか。
ここからが本番です。
「そんな思想の違いなんて、ウチの仕事にどう関係あるんだ?」
その疑問に答えるため、私がコンサルティング先で本当によく聞く「現場の具体的な5つの悩み」を取り上げ、両方のAIに同じ仕事をさせてみました。
どちらがあなたの会社の「使える道具」になるか、一緒に見ていきましょう。
比較①【技能承継】ベテランの技を「マニュアル化」したい
まず最初の悩みは、社長が一番頭を抱えているであろう「技能承継」です。
「来年、ベテランのAさんが定年退職する。あの人の段取りや、機械の微妙な調整、全部『カン』だ。このままじゃ、あの技術は会社から消えてしまう…」
この切実な悩み、AIはどう手伝ってくれるでしょうか?
ChatGPTの場合
あなたの会社の書庫に、10年前に作られたWordやPDFの「古い作業手順書」はありませんか? ChatGPTは、こうした既存のOffice系ファイルを読み込ませ、その「中身」を深く理解し、編集することが得意分野です。
その古い手順書をアップロードして、このように依頼できます。
「このマニュアル、専門用語が多すぎて新人に伝わらない。もっとシンプルな言葉で、5つのステップに書き直して」
「このPDFに書かれている内容に、最新の安全ルールを追加した更新版のたたき台を作って」
このように、「1つの既存文書」をじっくりと読み込ませ、高性能なAIモデルの「文章作成能力」を使って「より良い文章」に磨き上げる作業で力を発揮します。
Geminiの場合
もちろん、GeminiもGoogle Driveに保存したWordやPDFを読み込んで要約することは可能です。ですが、Geminiの真価が発揮されるのは、むしろその圧倒的な「スケール(規模)」が求められる場面です。
Geminiの強みは、100万トークンという「膨大な情報量」を一度に処理できることです。これは、なんと1,500ページの分厚い技術マニュアルに相当します。
たとえば、Aさんの作業をスマホで1時間撮影した「研修動画」があるとします。
その動画ファイルや、あるいは取引先から送られてきた「1,000ページを超えるPDFの仕様書」をGeminiに丸ごと渡して、こう指示できます。
「この1時間の動画を見て、Aさんがやっている作業のポイントを全て抜き出し、新人向けの手順書を作って」
膨大な資料を読み込ませて、そこから新しい文書を作成するという「作業」そのものを任せられます。
【コンサルの視点】
これは「得意な深さ」や「得意な量」が異なります。
「1つの既存マニュアル(WordやPDF)」をじっくりと読み込ませ、言葉を磨き上げて「より高品質な文章」に編集し直すなら、その高性能なAIモデルの「文章力」を強みとするChatGPTが向いています。
「1時間の動画」や「1,000ページを超える仕様書」といった「膨大な資料」から、新しく手順書をゼロから作成させるなら、「大規模データ」の処理を強みとするGeminiが圧倒的に有利です。
比較②【品質管理】「不良品の写真」を管理・分析したい
次の悩みは、現場の「品質管理」、特に「記録」の問題です。
「また不良品が出た。現場のBさんがスマホで写真を撮ってくれたけど、その写真、結局Bさんのスマホの中か、共有フォルダの奥深くに眠ったまま。後で見返して『傾向分析』するなんて、とてもじゃないが…」
この「撮りっぱなし問題」、AIはどう解決するでしょう。
ChatGPTの場合
ChatGPTは、あなたが「今、AIに提供したデータ」に対して、その高性能な分析能力を発揮するように設計されています。
たとえば、Bさんのスマホからその「1枚の不良品写真」を見つけ出し、ChatGPTにアップロードしたとします。
そして、「この写真に写っている傷の原因として考えられることは?」と質問します。
AIは、その画像データを詳細に分析し、「これは鋳造時の巣(す)の可能性があります」や「切削速度が速すぎる場合に発生するむしれ(Tearing)の兆候が見られます」といった、非常に高度な「単体分析」を行ってくれます。
これは非常に賢く、役立ちます。しかし、これはあくまで「点」の分析です。「先週の不良品と比べてどう違うか?」を知りたければ、あなたが「先週の写真」も一緒に探し出して、再度アップロードし直す必要があります。AIはあなたの会社の「過去のデータ倉庫」までは知らないのです。
Geminiの場合
GoogleのAIは、Googleが提供する他のサービス(道具箱)と「はじめから連携して動く」ように設計されています。この設計思想の違いが、品質管理の業務で決定的な差を生みます。
もしあなたの会社が、現場の写真を「Google Photos(無料の写真ストレージ)」に自動でバックアップする、というルールだけを決めていたとします。
すると、Geminiはあなたの会社の「写真倉庫(Google Photos)」に直接アクセスできます。
社長や管理者が、写真を「アップロード」する必要はありません。Geminiにこう「指示」するだけです。
「ウチのGoogle Photosライブラリから、『A部品』とタグ付けされた写真のうち、『バリ不良』が写っているものだけを、先月分すべて探し出して」
Geminiは、BさんやCさん、皆のスマホから集まった数千枚の写真ライブラリを横断的に検索し、該当する写真だけを瞬時に並べます。
さらに、こう続けることができます。
「これらの不良品の共通点を分析して、傾向をレポートして」
【コンサルの視点】
この「品質管理データの蓄積・分析」という業務においては、Geminiの圧勝です。
ChatGPTは、提供された「1枚の写真」を深く分析する「点」のサポートは得意です。
しかし、Geminiは、あなたの会社が過去に蓄積した「すべての写真資産」を「線」でつなぎ、データベースとして検索・分析します。
現場の品質管理で本当に重要なのは、「1個の不良品」を分析すること以上に、「過去の不良品と比べてどうか」「どのような傾向で発生しているか」という傾向管理です。
Geminiの「既存の道具と連携する」という設計思想が、この現場のニーズに完璧に合致しているのです。
比較③【情報収集】「競合の動向」や「最新の補助金」を調べたい
3つ目の悩みは、社長や営業担当の「情報収集」です。
「毎晩、寝る前にGoogleで検索。『ウチの技術で使える補助金、新しく出てないか?』『競合のA社、最近どんな設備入れたんだ?』。このリサーチ業務だけで時間が溶けていく…」
この作業、AIに任せられないでしょうか。
ご提供いただいた資料の通り、この「Deep Research」機能は、ChatGPTとGeminiの両方に搭載されています。しかし、Webでの評判を調査すると、その「使い方」と「得意分野」が全く異なることが分かりました。
ChatGPTの場合
ChatGPTの「Deep Research」機能は、「AIによる最高品質の分析レポート」を作成することに重点を置いているようです。
Web上のレビューによれば、処理に10分から30分と時間がかかる場合がありますが、その代わりに数万文字にも及ぶ、非常に詳細で「深い考察」を含むレポートが生成されると高く評価されています。
「質問に答える」というレベルではなく、まさに「リサーチ(研究・調査)」という名の通り、指定したテーマについてAIが自律的に思考し、重厚な分析結果を返してきます。
「とにかく質の高い、深い分析レポートが欲しい」という場合に、その力を発揮します。
Geminiの場合
一方でGeminiの「Deep Research」機能は、「AIとの共同作業(コラボレーション)」に重点を置いているようです。
最大の特徴は、ユーザーが「〇〇を調べて」と指示すると、AIがまず「こういう順番と内容で調べようと思います」という「リサーチ計画」を提示してくれる点です。
ユーザーは、その計画を見て「その観点も追加して」とか「それは不要」と計画を編集できます。
AIの独走を許さず、人間がプロセスに介入しながら、欲しいレポートの形に誘導していくことができます。
【コンサルの視点】
どちらも「Webリサーチ」は可能ですので、これは「優劣」ではなく「目的」で選びます。
「AIと対話し、調査の『計画』を一緒に修正しながら、目的に沿ったレポートを共同で作りたい」というニーズであれば、Geminiの「リサーチ計画」機能が非常に適しています。
「時間はかかってもいいから、AIが出せる最高品質の『分析レポート』が欲しい」「自分では思いつかない深い考察や、数万文字レベルの網羅的な資料が欲しい」というニーズであれば、Webでの評判が高いChatGPTの「Deep Research」機能が向いています。
比較④【事務作業】「日報」や「見積書」の処理を効率化したい
4つ目の悩みは、バックオフィスの「事務作業」です。
「現場からはExcelの日報が、取引先からはPDFの見積依頼書が、毎日メールで送られてくる。これを集計したり、内容を読み取ってシステムに入力したり…。IT担当者もいないのに、もう限界だ」
こうした事務処理、AIはどうでしょう。
正直に申し上げると、どちらのAIも実務で「完璧」に自動化できるレベルにはまだ至っておらず、一長一短であり、現在も急速に進化中です。
しかし、「自動化への一歩」という観点で見ると、決定的な違いがあります。
ChatGPTの場合
ChatGPTは、Microsoft Office系のファイル処理、特に「データ分析」において強力な能力を発揮します。
「Advanced Data Analysis」機能により、Excel(.xlsx)やCSVファイルを直接アップロードし、高度な集計やグラフ作成を指示できます。
また、「Excelのマクロ(VBA)のコードを教えて」と頼めば、コード自体を生成してくれます。
しかし、AIが整理した情報をそのまま自動で「Excelファイルに組み込んで出力させる」ことまではできません。結局、指示のうえで生成させたコードを社長や担当者がコピーし、ExcelのVBA(専門的な開発画面)に貼り付けて実行する、という「ITスキル」が求められます。
この領域(Office製品との深い自動連携)は、正直なところ、Microsoft自身が提供する「Copilot」の方が一枚上手なのが現状です。
Geminiの場合
Geminiの強みは、G-suite(Gmail, スプレッドシート, Docs)と「はじめから連携している」点にあります。
「Gmailに来たメールをスプレッドシートに転記して」といった「ツール間の連携」を指示できるだけでも強力です。
しかし、さらに決定的な強みが、「Google Apps Script (GAS)」の出力ができる、という強烈な機能です。
GASは、G-suiteの様々なツールを自動化するためのプログラム言語です。
Geminiにこう指示できます。
「これまで整理してきた情報を、 A4:1枚で収まるようレイアウトしたDocsを作成するスクリプト(GAS)を作って」
「この分布がわかる3分ほどで回答できるアンケート内容をGoogleフォームで自動作成するためのスクリプト(GAS)をお願いします」
などとお願いし、このGASを稼働させると、あら不思議。想定していた初期案が自動で生成できたりします。
もちろん、AIが生成するコードの精度はまだ完璧ではなく、修正が必要な場合がほとんどですが、初期案をいただいて、あとは修正すればよいだけなら、時間短縮は相当なものがありますよね。
しかし、IT担当者がいない中小企業でも、「自動化の初期案(ドラフト)」をAIに作らせることができるのです。
【コンサルの視点】
どちらもまだ進化中であり、定期的な機能アップのチェックが欠かせない、というのが大前提です。
単純な「ファイル分析」ならChatGPTも優秀です。
しかし、「IT担当者ゼロの会社が、自力で『業務の自動化』に踏み出す」という観点で見ると、話は別です。
「自動化スクリプトのドラフト」までAIに作らせることができるGeminiの方が、現時点では一歩リードしている(優勢である)と私は判定します。
比較⑤【コスト】月$20(約3,000円)の価値はどっちがある?
最後の比較は、リーダーが一番気にするであろう、現実的な「お金」の話です。
どちらのAIも、本格的に使うなら月額20ドル(約3,000円)の有料プランが基本になります。中小企業はまだよいですが、小規模事業者の場合、この「月3,000円」は決して安くありませんよね。この同じ金額で、あなたは「何を買う」ことになるのでしょうか?
ChatGPTの場合
あなたがChatGPT Plus ($20) を契約して手に入れるもの。それは、ご提供いただいた資料によれば、高性能なAIモデル(GPT-4oやGPT-5)への「優先的なアクセス権」です。
つまり、無料ユーザーよりも優先的に、より高性能なAIを、より多く使える「権利」に対して、あなたは月額料金を支払います。AIの「処理能力」そのものに価値が設定されている、非常に分かりやすい料金体系です。
Geminiの場合
一方で、あなたがGemini AI Pro ($19.99) を契約して手に入れるものは、AIへのアクセス権だけではありません。
ご提供いただいた資料が示す通り、これは「サービス・バンドル(抱き合わせ)」になっています。
もちろん、AIモデル(2.5 Pro)へのアクセス権や、「比較④」で触れたG-suite(Googleの業務ツール)との連携機能も含まれます。
しかし、本当に注目すべきは、「2TB(テラバイト)のGoogle Oneクラウドストレージ」がセットで付いてくることです。
この「2TBのクラウド倉庫」、もしあなたがAIとは関係なく、普通にGoogleから単体で借りると、月額$9.99(約1,500円)かかります。
もうお分かりですね。あなたが支払う月額$19.99(約3,000円)のうち、約半分は「倉庫代」なのです。つまり、実質的な「AI機能」の費用は、月額$10(約1,500円)程度ということになります。
【コンサルの視点】
コストパフォーマンス(お得感)という点では、Gemini AI Proの圧勝です。
理由は明確で、Googleは「ストレージ(倉庫)」という別の大儲けしている事業を持っているため、その利益でAIのコストを補助し、戦略的に「異常な安さ」を実現しているからです。
IT担当者ゼロの中小製造業にとって、「AIの導入」と「全社共有のファイルサーバー問題」は、同時に解決したい経営課題です。
Gemini AI Proは、「月3,000円」で「AI機能」と「全社で使える2TBの大容量ファイルサーバー」の両方を手に入れられることを意味します。これは、ChatGPT Plusの「AI利用権」と比べた場合、圧倒的な価格競争力を持っていると判定します。
現場コンサルの結論:中小製造業は「Gemini」を選ぶべき
AIの処理性能だけを追求するChatGPT Pro($200)のような最上位プランは、AI研究者や一部の専門家には必要かもしれませんが、IT担当者ゼロの中小製造業が使いこなすのは困難。
だとすると、Google社が展開している「機能統合戦略」~ つまり、AIを既存のツール(Gmailやストレージ)と連携させて動かすという方針 ~ の方が、いまのところ将来に向けて、現場の業務改善には圧倒的に有利だと私は判定します。
これまでの5つの具体的な業務比較で見てきた通り、IT担当者がいない中小製造業がChatGPTよりもGeminiを選ぶべき理由は、次の3つに集約されます。
Geminiを推奨する3つの理由
理由1:圧倒的なコストパフォーマンス(費用対効果)
まず最大の理由は、その「お得感」です。比較⑤で見た通り、月額約3,000円で「AI機能」と「2TBの全社共有ストレージ」の両方が手に入ります。ChatGPTが純粋な「AI利用権」であるのに対し、Geminiは「AIの導入」と「会社のファイルサーバー問題の解決」を同時に、かつ安価に実現できるパッケージになっています。これはIT予算が限られる中小企業にとって、非常に現実的で大きなメリットです。
理由2:「今ある道具」がそのまま賢くなること
次に、AI導入の「ハードルの低さ」です。比較②(品質管理)や比較④(事務作業)で見たように、Geminiはあなたの会社のGoogle Photos(写真倉庫)やGmail、スプレッドシートと「連携」して動きます。AIを導入するために全く新しいソフトの使い方をゼロから覚えるのではなく、「いつものメール」や「いつもの表計算」がAIの力で自動化されていく。この「機能統合戦略」こそが、IT担当者ゼロの会社にとって、Geminiを推奨する最大の理由です。
理由3:AIが「作業(タスク)」そのものを代行してくれること
最後の理由は、AIが「質問に答える」だけでなく、「面倒な作業」を丸ごと引き受けてくれる点です。比較③(情報収集)で見たように、AIが自律的にWebを調査し、レポートを作成します。比較④(事務作業)では、自動化のためのプログラム(GAS)の初期案まで作ってくれました。比較①(技能承継)でも、1時間の研修動画を分析させられました。これはAIを「賢い相談相手」として使うだけでなく、「もう一人の事務員」として、あなたの会社の「作業」を代行させる感覚に近いのです。
まとめ:IT担当者がいない中小製造業は「AIの単体性能」より「業務との統合」で選ぶ
ここまで、ChatGPTとGemini、二つのAIを5つの具体的な現場業務で比較してきました。
どちらも素晴らしいAIであることは間違いありません。しかし、その「思想」が全く違いましたね。
ChatGPTは「最高の脳みそ」を単品で提供し、Geminiはあなたの会社の道具箱(Googleのツール)と連携する「最強の執事」として働く、という根本的な違いがありました。
そして、IT担当者がいない中小製造業が「まず選ぶべきパートナーはどちらか?」と聞かれれば、私の答えは明確です。
それは、これまでに挙げた3つの明確な理由(①圧倒的なコストパフォーマンス、②今ある道具との連携力、③自動化への第一歩)から、Geminiです。
もちろん、AIの世界は日進月歩です。今日ここで書いた機能も、来月にはまた変わっているかもしれません。大切なのは、遠くから「難しそうだ」と眺めていることではなく、まず「無料で触ってみる」ことです。
この記事を読み終えたら、まずはあなたのスマホやPCでGeminiの無料プランを開いてみてください。
そして、比較③で紹介した「Deep Research」を試してみましょう。「〇〇業界の競合他社の動向と、業界の市場動向もあわせてレポートして」と、あなたの「仕事」を丸ごと投げてみるのです。
驚くことに、これまで専門家に依頼して最短でも数週間×数万円かかった調査を、たかだか15分程度で出力してくれるんです。
そしてもし、そのGeminiの働きぶりが気に入ったら、その時こそ、比較⑤で見た「月額3,000円でAIと2TBの全社ファイルサーバーが手に入る」AI Proプランの導入を、本格的に検討してみてください。
あなたの会社の業務改善は、IT担当者を待たなくても、今日からでも始められます。



