IoT導入の実態⑤中小製造業の課題分析とIoT による解決
IoT導入の実態⑤中小製造業の課題分析とIoT による解決

これまで②で製造業の現状を把握
③では中小製造業の生産性向上の
あるべき姿について検討

そして④では製造業や支援機関に
対するアンケート結果等を分析して
製造業のIoT導入における課題を
調査してきました

その結果、
そもそもIoTの知識が少ないうえ
導入による効果が図りきれないため
着手を二の次にしているという
そんな状況が明らかになりました

そこで今回は
中小製造業のIoT活用による
生産性向上を支援するために
導入しやすいIoTツールや
実証実験の結果について説明します

今回も読み終えるまでの時間
よろしくお付き合いください

 

Fit&Gap 分析

④で実施したアンケート結果のうち
生産性向上への課題やニーズに対し
展示会等の外部環境調査結果から
対応するIoT ツールの例を示して
Fit(適合)するのはどのケースか
Gap(乖離)はどうすべきか
について分析を進めてみました

 

課題/ニーズ IoTツール Fit&Gap分析
現場作業改善 作業者動線分析ツール 部品や治工具の運搬が多い、作業者が離席することが多い職場の運搬や歩行のムダ取りに適す。作業者が少ない、あまり動き回ることが少ない職場には適さない。
工程管理 設備稼働状況見える化ツール 作業者が複数設備を操作する職場、自社で対応できない注文を外注委託している場合などに適す。設備が少ない、たまにしか稼働しない設備の場合には適さない。
品質確保 計測器無線化ツール ノギスを使った寸法測定など、検査にかかる工数が加工や組み立て
と同等かそれ以上の場合に適す。無線化に対応する測定機器がない
場合には適さない。
技能継承/脱属人化 動画編集ソフト 熟練作業者の作業をビデオ撮影し、説明文を付加することで作業要領書として活用する。動画で説明できる場合に適す。あまり繰り返しの作業がない、動画でも説明が困難な場合(面粗度など)は適さない。
事務作業効率化 クラウド情報共有ツール 紙資料が多い、転記が多い、職場に居ないことが多い場合に適す。インターネット環境がない場合には適さない。

いずれの場合もまずは職場や業務の
2S(整理・整頓)を行ったうえで
IoT活用以前のムダ取りを行うこと

さらにはIoT導入により
問題を見える化した後の
改善の進め方を明確化することが
重要になってきます

やはり効果を最大化するためには
やるべきことをきちっとやること

それが大前提なのは当然ですよね

 

対応するIoT ツール

③の生産性向上のあるべき姿では
IE手法によるムダ取りにより
改善活動に必要な時間と人を創出し
創出した時間と人をを使って
売上拡大やコスト低減などの
生産性向上の施策に割り当てる

その結果として付加価値向上
つまりは生産性を向上させることが
可能であると説明したかと思います

そこでここでは、ムダ取りにより
時間を創出するのに有効な
IoTツールについて説明しましょう

 

(1) IoT 利活用により生産性向上を実現するための条件

生産性を向上する目的にたてば
ただ作業時間を短縮するだけでなく
その活動後の次なる生産性向上
つまり売上増、コスト低減などの
目的を明確化することが大切です

そのため既に顧客からの引き合いや
市場開拓の余地はあるものの
生産能力不足により対応できていない

あるいは同じく生産能力不足により
外注先に仕事を委託している

そんな状況である場合は
IoT 利活用により創出した余力で
未受注分を対応したり
外注委託分を自社に取り込んだりと
経営改善に繋がりやすいはずです

また生産能力が十分な場合でも
創出した余力を新規顧客開拓や
既存顧客への販売増、または
VE活動やQC活動など他の改善へ
余力時間を割り振ることで
さらなる生産性向上を目指せます

さらにはあらゆる改善活動の基礎
3S活動などにも取り組むべきです

なぜなら基本的な改善体質がないと
仮にIoT活用により生産性向上しても
結果的に仕掛りが増えるだけといった
悲しい状況になりかねないからです

そりゃそうですよね!

基本がなってなければ
どこかに無理が偏って出てしまいます

さて、それではこの後からは
展示会等で情報収集した
生産性向上を実現するための
IoTツールについて紹介しましょう

ここでは、⼯場内の様々なデータを
効率的に収集・解析する仕組みにより
改善活動を加速するためのツールを
中心に紹介してまいります

 

(2) 設備稼働状況取得

まずは設備稼働状況を取得する
IoT ツールの事例として
因幡電機産業(株)が開発した
「シグナルウォッチャー」です

IoT導入の実態⑤中小製造業の課題分析とIoT による解決

因幡電機産業(株)「シグナルウォッチャー」

本ツールは設備を改造することなく
設備に付属する稼働状態を表示する
シグナルタワーに後付けすることで
稼働状態を無線で取得することが
可能となるすぐれものツールです

同様のものはいくつかありますが
本製品の特徴は、前述の通り、
〇設備改造の必要なし(後付可能)
〇電源工事が不要
〇価格が比較的安価
など
まずはIoTで設備稼働を定量的に
把握したい場合にとても有効です

 

導入するイメージとしては
設備稼働率が低い設備を選定し
本ツールを設置してみる

そして、非稼働状況に着目し
なぜ稼働しなかったのかを
現場で確認していきます

例えば、朝礼などの機会を活用し
前日の稼働状況を発表して共有し
非稼働だった理由について
報告してもらうなどを定例化します

つまり止まった事実とその理由を
明らかにすることができるわけです

そしてその非稼働要因を取り除いて
設備稼働率を向上させ、前述の通り
今まで能力不足要因の失注を受けたり
同様の理由で外注委託していた仕事を
自社に取り込んだりが可能になり
生産性を向上させることができます

いやー、すぐにでも装着したいですね

 

(3) 作業者位置情報取得

さて次に紹介するIoTツールは
作業者位置情報を取得する機能です

スマホやウェアラブルデバイスなど
高価なツールも多いのですが
安価なIoT端末でも実現可能です

ここではビーコン活用事例として
「動線分析による歩行のムダ抽出」
について説明を進めていきましょう

 

IoT導入の実態⑤中小製造業の課題分析とIoT による解決

動線分析による歩行・運搬のムダ抽出

ビーコンにもいくつか種類があるが
今回は一般的なBluetooth信号を
発信する機器について説明します

Bluetooth信号を発信する機器には
固有のIDがあり、電波強度により
おおよその距離を推定できます

つまり、設備や倉庫の保管棚など
人が近づくと思われる場所に設置し
ビーコンIDの電波強度を記録すれば
その近辺に居ると推定できるのです

BLE(Bluetooth Low Energy)との
技術の一つであるiBeaconが
iOSで採用されたこともあり
身近になったものです

やはり技術の進歩はスマホからです

試行するイメージとしては
設備稼働率が低い場合に
非稼働要因の分析に応用できます

例えば、複数設備を掛け持っていて
設備の操作以外に部品などの運搬や
歩行などが存在する場合

どこからどこへの移動が多いのか
どの場所での作業時間が長いのか

を作業者のムダ取りの観点で分析します

なお、今回の調査研究では実は
本ツールで実証実験を行なったので
その詳細を解説していきましょう

 

実証実験

④のIoT導入における課題の
中小製造業へのアンケート結果から
IoTの導入が進まない理由として
低価格で導入するための方法や
具体的なイメージや効果を知らない
といった回答を得ました

そこで今回の調査研究事業では
低価格なIoTツールにより
実際の中小製造業の現場改善を行い
効果を出すことができるか
実証実験を行ないました

ここではその内容について
詳しく説明を進めますね

 

(1) 実証実験対象

中小製造業においては、なにより
人の生産性が一番重要となります

また生産性向上の実現の条件として
IoT利活用により創出した余力で
未受注分に対応する、あるいは
外注委託分を自社に取り込んだりと
経営改善につなげることが前提です

そこで今回は実証実験テーマとして
「作業者効率向上による生産性向上」
を選定しました

一方では
「設備稼働率向上による生産性向上」
も手段の一つではあるものの
・保有設備が少ない規模でも参考になる
・様々な業態へ応用が効きやすい

などの観点から今回はテーマ選定した

そのため今回の実証実験で選定した
事業者の概要は以下のとおり

 

項目 内容
業種 金属加工業
製品 精密板金部品
主要設備 レーザー加工機、タレットパンチプレス、プレスブレーキ
工場建屋 1 階:製造現場 約15m×15m
2 階:事務所+部品倉庫
従業員 14名(対象作業者は4名)
測定期間 改善前:2019 年11 月、改善後:2020 年1 月16 日
それぞれ5 日間、始業から終業まで(約8 時間)

対象企業は、受注状況は好調であり
今後も増加が見込まれています

そのためこの職場を改善することで
工場全体の生産性が向上することは
予め見込まれているというわけです

どうですか?実証実験の舞台として
申し分ない好条件かと思います

 

(2) 実証実験の進め方

まず対象職場の作業の流れを
大まかに把握するために
前述の工程分析を実施しました

対象職場では全員参加の5S活動や
合理化活動などの改善活動を
研修形式で行なっていました

そこで、彼らに対し
簡単なIE手法に関する座学を行い
実際に改善活動の推進メンバーに
流れ線図で分析してもらいました

 

IoT導入の実態⑤中小製造業の課題分析とIoT による解決

対象職場の流れ線図

 

流れ線図による工程分析によって
作業者の大体の移動パターンを把握し
歩行や運搬のムダが多いのではないか
という仮説を得ることができました

少量多品種で工程も製品ごとに
都度変化する職場であるため
実際に動線分析や稼働分析を行い
仮説が正しいか検証するためには
一定期間分析する必要あります

そこで今回のIoTツールの活用で
分析を効率化できました!

 

(3) 使用したIoT ツール

作業者の導線分析を行うツールとして
ビーコンを活用することとにしました

理由はGPS衛星を使ったシステムでは
建屋内は電波が届きにくく
届いたとしても誤差が大きい問題が

また、ビデオカメラなどで人を認識し
位置を把握する方法では、
大型設備などで死角の多い現場では
多数設置する必要があるためです

一方、ビーコンを活用した方法では
建屋内でもほぼ問題はなく
また数mの誤差があるものの
実際の製造現場で試してみたところ
十分許容できる範囲でありました

価格もビーコン発信器や受信器は
それぞれ1台数千円と安価なんです
(価格は2019 年10 月時点)

 

IoT導入の実態⑤中小製造業の課題分析とIoT による解決

使用したIoT ツール

ビーコン電波方式にはいくつかあり
今回使用したのはBluetooth信号を
発信する方式のものです

今回使用したGimbal ビーコンは
BLE(Bluetooth Low Energy)で
最も一般的で安価であるため採用

ビーコン受信機としては
Arduino 互換のM5Stackという
IoT端末を使用しました

M5Stackはバッテリーを内蔵し
iBeaconを含むBLEを送受信可能
microSD カードへの
データ書込もできるほど高機能

最近の小型コンピュータは恐るべしです

 

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実証実験に使用したビーコン端末

 

(2) 実証実験の結果

それではある現実の職場で
IoTツールを活用して実証実験した
内容を紹介していきましょう

 

① 改善前(現状分析)

まず最初にメンバーにお願いして
あらかじめ作成していた流れ線図で
ビーコン設置個所を決めました

 

IoT導入の実態⑤中小製造業の課題分析とIoT による解決

ビーコン設置場所(数字はビーコンのID)

2019 年11 月11 日〜15 日の期間
4 名の作業者に始業から終業まで
ビーコン受信機を持ってもらい
改善前の1 日あたり平均歩数を
ビーコン間の移動経路(from/to)別に
記録データを加工してみました

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改善前1人1日当り平均歩数

歩数が上位20%は白抜き文字
上位21〜50%は背景をハッチング

ビーコン受信機は30 秒に1 回
最も電波強度が強い発信機のIDを
microSD カードに記録させます

終業後にmicroSDカードを回収し
ビーコン間の歩行回数を集計し
それに予め計測した各ビーコン間の
歩数データを乗じることで
ビーコン間の歩数データとしました

各作業者は主要設備である
レーザー加工機(3-7)
タレットパンチプレス(3-6)
プレスブレーキ(3-1、3-2、3-3)

を担当していますので
その設備周辺で作業することが多い
※ カッコ内はビーコンID

そのため、経路のfrom/to ともに
歩数は多くなります

しかし意外と3-5も多いことが
わかってきたのです

ビーコン3-5付近は
バリ取りなどの仕上げ作業場であり
集塵機が設置されている場所です

② 改善シミュレーション

最初の改善前の分析結果を基に
バリ取りをプレスブレーキ周辺で行えば
歩行や運搬のムダを削減可能では?
という仮説を立てたわけです

改善前のデータを基に、
タッパー・ボール盤(3-4)と
集塵機(3-5)を入れ替えることで
どれくらい歩数が減るのか
シミュレーションしてみました

シミュレーションは
受信機の取得データはそのままで
各ビーコン間の歩数データの
3-4と3-5を入れ替えて行ないました

 

IoT導入の実態⑤中小製造業の課題分析とIoT による解決

シミュレーション結果

シミュレーションの結果では
平均歩数が
3,656 → 3,381 歩/日・人
275 歩(▲7.5%)
削減可能な見込みに

対象職場では改善効果の算出を
1 歩=1 秒=1 円で計算しており
1ヶ月当りの改善効果を22,000 円と
見込めることが明らかになりました

 

十分な効果が得られそうであるため
改めて具体的にレイアウト変更を検討

シミュレーション時に案としてでたが
現状の集塵機は大型で移動させることが
困難であることがわかったのです

ですが遊休設備で
移動可能な小型集塵機の活用を検討

セットプレスとタッパー・ボール盤の
レイアウトを入れ替えを行い
新タッパー・ボール盤周辺に
小型集塵機を設置することとしました

これによりバリ取り作業エリアの
近接化が可能なことがわかりました

 

セットプレスの移動費用が約7万円

改善効果22,000 円/月なので
十分回収できると判断し
実際にレイアウト変更を行なったわけです

 

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レイアウト変更

 

③ 改善後(効果確認)

レイアウト変更後
2020 年1 月7 日〜11 日の期間
再度改善前と同じ条件で
歩数データを取得してみました

 

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改善後1人1日当り平均歩数

 

結果、平均歩数が
改善前3,656 → 改善後2,924 歩
731 歩削減(▲20.0%)

 

シミュレーション時と同様に
1 歩=1 秒=1 円で計算すると
1 ヶ月当りの改善効果は58,480 円

IoT ツールの費用 約4 万円
レイアウト変更費用 約7 万円
合計約11 万円を約2 ヶ月で
回収可能
となったわけです

 

協力いただいた作業者の方々に
感想をお聴きしたところ
歩行が減った実感は確かにあるが
以前よりも手狭になったことから
特に工程間仕掛りが増えてしまい
一旦仕掛りをかわすなどの
ムダが増えたように感じるとの
ご意見がきけました

今後は工程管理強化や5S活動により
更なる改善に取り組む予定であると
頼もしい声もいただきました

 

まとめ

中小製造業のIoT 導入における
「IoT の知識が少ない」
「導入による効果が図りきれない」

という課題に対して

今回は実際の中小製造業企業にて
安価なIoTツールを導入して改善し
生産性向上に寄与することを
実証できたと思います

結局、IoT導入が進まない理由は
「体験してみなければわからない」
いう点に尽きると思います

でも体験するにも費用がかかり
効果がわからなければ費用は出せない
そのためのIoTを体験できない

このようなIoT導入における
負のスパイラルを断つためにも
今回の実証実験の内容を
大いに役立てて欲しいと思います

 

もし先に内容が知りたい方は
ぜひ公開している以下のページから
資料をダウンロードしていただければ
全容が確認できますのでご参考下さい

(一社)兵庫県中小企業診断士協会HP

それでは今日はここまでです

今後とも宜しくお付き合い下さい☆

長文乱文を最後まで読んでくださり

いつもありがとうございます♪

すべては御社の発展のために
すべてはあなたの笑顔のために

 

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